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感想・小説編。

フルメタル・パニック! -サイドアームズ2- 極北からの声

著者:賀東招二

出版元:富士見ファンタジア文庫


フルメタシリーズのシリアスメインになる短編、サイドアームズの2巻目。デ・ダナンの将校、とゆーかオッサンふたりの過去エピソードとギャグ編の短編3作を収録。まぁそーゆう内容でありながら、表紙イラストが宗介&テッサのふたりのカットなのは政治的な理由でしょーかねやはり。さすがにオヤジをメインに出してちゃぁ、本の売れ行きも鈍りそうだしなぁ…(笑)

それでは短編集なので、まずは表題作ともなる『極北の声』から。カリーニン少佐と、幼少の頃の宗介、すなわちカシムとの出会いなどを描いた過去話ですな。言ってみれば、フルメタのエピソード・ゼロとでも称するべき物語ってことになるんでしょーかね。で、基本的には宗介は脇役で、少佐の半生が語られるワケですが…ひと言でまとめてしまうと、まさに導入にもある通り、運命に敗北した男の物語ですな。仮にでも救えたと思った少年が地獄に追いやられたその事実を目の当たりにし、信じた祖国には愛する妻を無惨にも殺され、あまりにも多くの物事を失い救いの様子もなく締めくくられるというシナリオ。続巻のシリーズ本編最終章では、彼は宗介達と袂を分かつことになるのですが、そうなるに至った経緯、まぁ主に少佐の内面に関する事柄なんですけれど、そういう先の展開と合わせて読み解いてもやはり、彼は敗北した男なのだろうなと思ってしまう次第です。それはとても悲しい事実なんですけどね、でもやっぱりそーゆうコトなんだよなぁ、自分の解釈からいくと。あと個人的にある種ショックだったのが、少佐が宗介に対して抱いている根底意識の真実ですか。『デイバイデイ・下巻』(レビューはコチラでの、ひとりの"息子"として成長を頼もしく思っている、ってのは決して間違いではなかったんでしょうけど、まさか根底にあるものが「母親を見殺しにしたことへの罪悪感」だったとは思ってもみなかった。いやー、正直言って重かったね、初読時は。この事実なんかも、続巻と合わせて考えると彼の真意の悲哀も推察されてくるんですが…ま、ソレはこの場では置くとしましょう。最後に少々、宗介側で感じたことを。陣高に入学した宗介がその後にボン太くんを気に入ってたのって、もしや幼少時の刷り込みのせいだろーか(笑) あと31ページの挿絵、彼の母親の面影がかなめにどこか似ているのは、たぶん意図してのことなんだろーな。でも作者と挿絵師、どっちの意図だろ。

続けて『<トゥアハー・デ・ダナン>号の誕生』。コチラはマデューカス中佐とテッサの過去話ってコトになるんですけど、でもテッサの出番がかなり少ないのもあって、全体としても中佐自身の物語という印象の方が強いですな。で、コッチのまとめはまぁ、再び戦場に立ち向かう男の物語って感じですかね。悲劇が描かれるにしても、基本的にはテスタロッサ家についてがメインであるため、中佐本人については陰鬱な感じはあまりありませんねー。本編との絡みからで印象に残るのは、『ベリメリクリ』(レビューはコチラで触れられた、中佐とテッサの父親とに交流があったというコトについての補足部分ですか。彼がテッサに対してクチやかましい父親役に付いている理由、それは異常なまでの天才性を持つ子供達へカールが抱いた苦悩、それを目の当たりにしたからこそ亡き実父に替わって彼女を導こうとしていた、というものだった。そしてその戦友との絆である、今もその胸に確かに鳴り響く海底から届くソナーの一音。リチャード・マデューカスという男の半生が、確かにココに描かれています。

ラスト、『大食いのコムラード』。まぁなんにつけても、今巻と前後するシリーズ本編の内容や、何より収録他2作が濃厚シリアス展開なコトも手伝って、このおバカな作劇が実にこ気味良いとゆーか(大笑) とりわけ194〜195ページの会話なんか、ネジのすっ飛び具合がスバラシイですな。「気の荒い生き物」て。んで、このエピソードで逆にショッキングだったのがまぁ、『オンマイオウン』(レビューはコチラの後半シーンで、マオの前にまるで何かの象徴のように神秘的な登場をしたトラがいたかと思ったら、その正体がコレかい、と(爆笑) コッチのミステリアスな印象ぶち壊しじゃ…!



▽自薦名場面 ― 165ページ

 そんなことを言われても、腹を立てる気にもならなかった。なにしろ彼女はまだ一二歳だった。そしてなによりも、彼女が元気で、しかも生意気な口を私にきいてきたのに心から救われる思いだったのだ。

 カール。

 君が命をかけて守った娘は、この通り私に憎まれ口を叩いているぞ。

 そう思った。

『デ・ダナン号の完成』よりラストシーン前、8年を過ぎてテッサと再会を果たした中佐の心境。このシーンは本当に、この描写にあるそのままの通り、心から救われる思いを感じたその喜びが実に伝わってくるんだよなぁ。カールの娘への愛情と、それゆえの苦悩を知り・受け取っていたからこそマデューカス中佐も感じた、無事に生きていたテッサへの感激。天国のカールへのメッセージにその深く強い喜びが込められている、地味ながら印象に残るそんな場面です。



長編9巻>

<長編8巻


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2008/03/14