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感想・小説編。

フルメタル・パニック! 終わるデイ・バイ・デイ(下)

著者:賀東招二

出版元:富士見ファンタジア文庫


長編第4弾の下巻。”「彼ら」の問題が解決する”物語です。キャラクターは、テッサの双子の兄・レナードが初登場。つーかコイツ、「推定ラスボス」と捉えておいてイイよな?

さて。上巻は、宗介とかなめの”いつもの日常”があっけなく崩壊するまでを描いてましたが。続く下巻は、その崩壊したあらゆる物事が、他ならぬふたりの意志そのものによって収束していくまでを描いていきます。

まずはヒロインサイド。突然目の前から”彼”が消え失せたという現実に直面した時、彼女の心に宿ったのは「泣いて終わりになんかしない。断じてあたしは行動する」という強い意志。突飛なひらめきや無謀なまでのアクションを起こし、本当の命の危険が訪れても、それでも彼女は諦めずに足を動かし脳を働かせる。でもそこまでの、もう意地と言った方が近いほどの”強さ”を絞り出したにもかかわらず、レナードのたったひとつの”不意打ち”で全てが、それまでどうにか保っていた強固な心や、本当は気付いていた彼への”想い”の全てが揺らがされてしまった。耐えきれずに流した涙の向こうで今いちど思ったことは、「それでもまだ悪あがきしてやる」という決意。何度負けても戦えなくなっても、たとえ身も心も敗れ去っても、それでも彼女は、たったひとつの決意を胸に立ち上がる。それは誰からの強制でもない、自分自身が決めたことだから。

そして主人公サイド。組織には東京の平穏を捨てさせられ、戻ったその組織では亡き者の名誉すら護れず、肝心な任務では自分でも信じられないほどのミスを犯し。自身さえ含む周囲の全てに疎ましさを感じたさなか、再開した”仇敵”は彼に真の絶望を与え、そんな致命的な有様でも生き延びようとするという、自分の中の醜いまでの”習性”を知らしめた。あるかもしれない・得られるかもしれないと感じた”未来”、それは、結局はただの幻影に過ぎなかった。――でも、正真正銘すべてを失った、そんな彼の前に現れた”彼女”が、自分の本当の姿を、自分にしかできないことを教えてくれて、それでようやく彼は顔を上げる。どん底の闇の中で彼女が気付かせてくれたこと、それは”戦うこと”の本当の意味。そして、自分は自らの意志で何でもできる・何処へでも行けるのだということ。

底の底まで落とされていく絶望的な状況から、一気に光輝く希望の場所まで到達する様を描くという、そんな大きなアップダウンのドラマによって生ずる爽快感が、今作の魅力であることは確かでしょう。でも私はそれ以上に、自分自身の意志ひとつで全ては決めることができる、とゆー作者が込めたメッセージにこそ、強く惹かれるモノがあります。どんなに日々の有り様が辛く厳しいものだとしても、ソレを打開するのは自分自身の在り方次第。たとえどのような状況だとしても、置かれた環境はただの「要素」でしかなく、その「正否」を握るのは紛れもなく自分なのだという、いつもいつも忘れがちで、でもそれが当たり前の真実。こんな、至極当然でいて、ふとしたことで見失ってしまう、でも日々を生きていく上でとても大切な事を、エンターテイメントたっぷりのドラマで描いてくれる本作。ゆえに、私はこの上下巻がとても好きであり、ひとつの「小説」として価値ある物語のひとつだと思っているのです。やっぱね、アタシャあると思うのデスよ。たとえライトノベルであっても読む価値のある作品ってさ。

ただ、まー、なんだかんだ言ってもやっぱ宗介は情けないねー(苦笑) かなめは”自分の足”で立ち上がったけど、宗介は結局女の子ヒロインにケツ蹴っ飛ばされるまで再起できなかったんだからなー。つくづく、あとがきの作者コメントじゃーないけど、「女性は強い」と思いますな。男単独では、なかなか”こう”はできんもんなー。



▽自薦名場面 ― 236ページ

 カリーニンから短いメッセージが入った。

 『パース1カリーニンよりウルズ7へ。調子は戻ったか』

 「肯定だ、パース1」

 『では好きにやれ』

 「了解」

選び出したい場面はそれこそ大量にあるんですが、どーにかガンバって一カ所選ぶならココ! 何か問いただそうとするでもなく、言い訳を並べようとするでもなく、少佐はたった一言だけ確認し、宗介はそれにたった一言答える、ただソレだけ。きっとこのときのふたりには本当に、これ以上の会話なんて必要無かったんだろうなぁ。あまりにもシンプルで、それゆえに両者の強い信頼が伝わってくる、そんな親と子・・・の短い会話シーンを今回は選出!



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2005/10/06