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感想・小説編。

小説ツインシグナルVol.9 遡上する時
THE TIME OF WONDER

原作:大清水さち 著者:北条風奈

出版元:エニックス


TSノベライズも9巻目。位置づけとしては…原作コミックスの本編が終了したその後に挿入されるエピソード、ってトコになるのかね。冒頭のシーンがトッカリタウンの音井ロボット研究所、ってゆーのも、色々と久しい感じを与えるよなー。

さてこの9巻、いちおう続く第10巻にてこの小説シリーズは完結するんですが、でも描かれたストーリーの上から鑑みて、この巻がノベライズ版の実質的な最終巻とでも言うべき内容だったりしてます。なにせ、次の巻は何かと変化球の作品になってるからなー。ま、ソチラの感想はあくまで次のレビューに預けておくとして。そんなこんなで9巻ですが、コレまで続けてきた各巻・各エピソードの中にあってその終わりを飾るに相応しい、どこか大きなスケールをも感じさせるよーな物語になっていて、ソコがとても読み応えある面白い内容なんですよねー。まぁこのへんの感想は、近くも遠い雄大なる”大陸”・中国を今回の作劇舞台に用いてるのが、強く影響を与えてるのかもしれませんな。長い長い時間を重ねて此処に在る大いなる大地、其処に住まう人々の幾重もの世代の積み重ねを感じさせる姿、大陸の水脈であり悠久の時をたゆたい流れる守護龍たる河川・黄河etcetc… そーいった大国のスケールを存分に感じさせる”在り方”を、既刊中とはややおもむきを変えて作者あとがきにあるとーり「少年マンガとして」描いて読ませているトコロに、この巻の魅力があると思います。1冊完結の内容なんだけど、まるっきり物足りなさとか感じないんだよなー。

そしてそれ以上に、私が本作を強く気に入っている理由。レビュー用に改めて本作を読み返して感じたソレは、「生命のロマン」を示し描いた物語である所に最大の要因があります。シグナルというヒトの手によって作られた生命ロボットが、かつて中国大陸で生きて今は化石となって眠りにつく恐竜せいめいに触れようとする、この一種の不可思議さ。ダム決壊による濁流に呑まれて生と死のはざまに立とうとしてしまった信彦たち、そしてその行く末にそれぞれの祈り・願いを抱くコードや音井教授たち、ソコで描かれていくドラマ。そうした事件が終わって、大きな”世界”の中にちっぽけに自身が存在することを、「生きているということ」が一体なんなのかを、改めて感じ取っていくラストシーン……

――ごく私的な事なんですが、このレビューを書く10日ほど前、友人と「学問というもの」についてアレコレしゃべくりあうとゆー機会がありましてね。…や、いちおう言うとそんな高尚なモンじゃないよ?(笑) まぁソレはさておき、その話題の中で、私個人が抱く科学など学問全般への”想念”とは、すべからく「せいめい」を基盤に置いているというコトに気付かされた、とゆーような出来事があったんですよね。今回また振り返ってみて、この辺の構想の根源はどうやら、このTSノベライズシリーズ、とりわけ9巻に大きく影響を受けているらしい事を思い知らされました。まぁその後さらに自分の記憶を掘り下げてみて、他にもうひとつ強く影響を受けていたシロモノがあることを思い出したんですけど。(ちなみに某テレビ番組。好きだったんだよなー、アレ)

ともかく、「生きる」という事。「生きている」という事。生まれていくこと、死んでいくこと。生命という存在へのロマンス。わたしが/だれかが、そこに/ここにいるフシギ。我々は何者か、何処から来て何処へ行くのか… 科学サイエンスが遥か求めるひとつの命題へ、創作フィクションの物語によって近づこうとしてみせた、マンガ作品・ツインシグナルのノベライズとして描かれたこのSF小説。自身への奥深い影響を与えた物語であるからこそ、私はこのシリーズが好きで、ひとつのメモリアルとして永らく忘れられない作品なのかもしれないと、今になって思い知らされています。



▽自薦名場面 ― 252ページ

 障害も幸運も、二つながら一つのもの。

 あるいは俺様があるべき場所よりはずれたことも。それが運命の采配なら受け止めるよりいく場所がない。

 死するであれ、生きるであれ。


 せいあらば まさ相見あいみるべし
 ぼうすれば 黄泉こうせんにて会わん


 ……あの世で会う者が増えていくな。

 コードは暗闇の中で微笑んだ。

大地の裂け目の奥で、今また触れるのかもしれない生と死を想うコード。ロボットとして生を受けて30余年、その時の流れの中で幾つも幾つも見送ってきた誕生と死去。ヒトの手によって造り出されたデジタルの意識プログラムが、その最期に果たして黄泉路へと至るのか。それは誰にも分からないけれど…この物思いは確かに、最も長く稼働して=生きてきた彼だからこその独白で、そしてその静かな雰囲気がとても気に入ってるのだよねー。



第10巻>

<第8巻


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2007/06/25