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感想・小説編。

小説ツインシグナルVol.4 遥かなる都市の歌・上
The songs of distant city

原作:大清水さち 著者:北条風奈

出版元:エニックス


TSシリーズ番外ノベライズ、第4巻。原作10巻・62話の、完全に直後に挟まるエピソードで、初の上下巻刊行。そーいや、今回の英題はほとんど直訳だなー。

さて、私が本シリーズを気に入りまくってるのは、今更ここで言うまでもないことですが。今巻はまた、上下巻構成ってことで実に読み応えのある内容になってます。今回の(とゆーか上巻の)舞台は大きな林檎ビック アップル・ニューヨークってことで、かの大都市の栄華の姿と、その裏側にある醜い欲望の顔、その両面をついて描いた描写はひそかにリアル。ストーリーの中身も、「遥かなる都市」ことリュケイオンを、原作で起きた顛末も踏まえて存分に書き上げていますし、小説シリーズだけで培ってきた展開も踏まえた、まるでこれまでの集大成とでも言うべき様相。キャラクターも、信彦を筆頭とした子供組から、若先生たち大人組、さらにはオリジナルキャラまで含めて、各員がそれぞれの場所で、存分に活躍する様が描かれてます。今回は、既刊で強かったSF色がかなり押さえられているのが、多少残念だったりもしますが、それでもそれ以外の面がシッカリと描かれているので、不満ってのは特になかったり。

にしても今巻、表紙を見ればすぐさま分かるとーり、A-K・カルマと若先生・音井正信まさのぶらの「兄弟」が、ストーリー上の主役に据えられてるんでしょーが。内容をじっくり読んでみると、実は彼らと同時に、シグナルと信彦の「兄弟」の姿・絆も描いてるよーに読めるんですよね。特に上巻だけだと、むしろ後者のが比率多いし。あまり明確に推しだしてる様子でもないから、自分でも分からない部分は多いんですが、彼ら「いまや大人になった兄弟」と「いまはまだ子供の兄弟」との在り方を並べて描くことで、このTSにおける兄弟というモノを語ろうとしているのが、この上下巻のテーマなのかなー、などと漠然と感じてみたり。ともあれ、ストーリーはまだ半分。続く物語は、自由の女神が見つめる先の大地へ。とても続きが待ち遠しくなるヒキをもって、下巻へストーリーは引き継がれます。実際、買って読んだ当時は、続巻がスゲー待ち遠しかったもんなー(笑)

ところで、巻末オマケの『コードの日記』。あるイミじゃ、3巻の裏ネタばらしの短編なんだけど、ひそかにコレが傑作だったり。「オラトリオは知るまいが、アレは実は――」じゃねーだろ師匠(笑) やっぱ知ってたんじゃねーかアンタ。でもまぁ、ほぼ初対面のオラトリオを見抜いてるのは、さすがって感じではあるなー。



▽自薦名場面 ― 96ページ

 「俺、ずいぶん危ないことをいっぱい見たけど、分かったことが一つある。
  何か恐ろしいことが起こっても、本当に皆を大事だと思うなら、逃げちゃ駄目だってこと。シグナルもパルスも、皆が危ない時も俺を守ってくれたよ。
  母さんだって逃げないじゃないか!
  本当に火が怖かったら、あんなこと忘れちゃえばいいんだ! でも母さんは忘れない。俺、どうしてか、分かったよ」

 正信だけでなく教授も目を見張った。

 この小さな瞳がじっと自分たちを見ている。それがこんなに恐ろしい。そして、こんなに素晴らしい。

 無垢な生命の前では、誰もが嘘をつけなくなる。

 「俺は、だからシグナルと行く。自分のことは自分で決めるよ」

 背筋がぞっとするほど毅然きぜんとして、信彦は宣言した。

タダのワガママなどでなく、シグナルと行くと言いはなった信彦の姿。いやぁ、このセリフは本当に、信彦だからこそ言える言葉、信彦以外には決して言えない言葉だわ。大切なものとは何なのか。逃げずに立ち向かうとはどういう事なのか。大なり小なり、今まで巡ってきた事件を経たからこそ理解できた、言うことができた、11歳の少年が放つ誇り高くすらあるこのセリフ。う〜ん、やっぱ信彦はこの、歳不相応な強さあってこそ、だなー。彼の在り方が最高なまでに描かれたこのシーンを、今回は選出。



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2006/05/28