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感想・小説編。

小説ツインシグナルVol.2 仮想の未来
Flowers for SCIENCE

原作:大清水さち 著者:北条風奈

出版元:エニックス


ツインシグナルの番外編ノベル、第2巻。原作コミックスの時間軸で言えば、ちょうど9巻と10巻の間にあたるエピソード、といったトコロですか。そんなワケで、オラクルやエモーションなどの、”電脳空間組”が多数参加。

最初にザッとした感想。1巻はわりあい、原作にもある程度そった活劇的な内容でしたが、この巻は、どちらかと言えばよりSF色の強い内容になってますねー。私の個人的な見解として、SFとゆージャンルは(それらしい)科学的考察・描写と、それら設定に基づいて作劇を組み上げていくのが前提…ではありますが、それ以上に、そういった舞台の上でどれほどロマンチックな物語をやれるのか、ソコにこそ神髄があると思っていまして。今回のゲストキャラなんて、その設定からしてまさにソレだし、その他にも全体的に、そんなような描写を数多く盛り込んでるし。前巻でも、そーいった部分が少ないでもなかったですが、この巻はソコをもっと前面に押し出した物語になっているかなーと、そんな感じですか。

原作コミックスでは、そーゆうSFっぽさを(良い意味で)できる限り廃して、「マンガ」としての読みやすさを優先させているから、それゆえの面白さも出ているんですが。コチラ小説版では、原作も大切にしている一方で、「小説」としての読ませ方を強く考慮して、よりSF作品らしい内容にしている・していこうとしている向きが見て取れますね。「小説」だからこそ出来る作劇や表現方法をきちんと把握して活かしている、そして同時に、原作コミックスの番外作品として十二分に面白いと来た。やはり本作、私が単純に北条さんの文体が好きだってのも大きいんですが、それを差し置いても、原作付きのノベライズとしては安心感と期待感を兼ね備えた、良い小説作なんだよなー。各キャラクター同士の掛け合いや、各々の家族的な面での心のつながり、賑やかな日常から・一転して事件が起こり・状況が動いて・悲しい結末で締めくくられる、とゆー起承転結のシッカリした作劇などなど。物語の内容としては、典型的なSFだと言えなくもないですが、あくまでも、ソコにTSのキャラクターをちゃんと活かした物語として作られてるし。うん、やっぱ面白いわ。

……とまぁ誉めてはきましたが。一点だけ、この巻での信彦の”動かし方”についてだけは、不満が大きかったりして。シチュエーション的には、”あーなって”も仕方無いとも思うものの、やっぱしチョイと情けない感じになっちゃってたのが、なんとも。”出番”こそ多いけど、”見せ場”はほとんど無いんだよなぁ、今回。逆境でも容易にはへこたれない、歳不相応の芯の強さが、信彦の魅力のひとつだと思ってるので、やはりソコには物足りなさがありましたかねー。



▽自薦名場面 ― 238〜239ページ

 カルマが目を瞑って、ため息をもらした。

 「ああ。なんて」

 真っ白な左手と黒い手袋の右手を、カルマは祈りの形に組み合わせた。

 「パパは誰?」

 赤ん坊をあやすように優しいみのるの声は、小さかった。

 「パパ」

 画面の中にもだえていた白い光は少しずつ薄れていこうとしていた。

 「パパ……私、パパが探していた最高のロボットを、手に入れたわきっとぱぱもよろこぶは……ズヨ」

 合成音声の澄んだ声は、最期の最期まで明瞭だった。

 「ネエ、……ネエパパ」

 みのるの握りしめていた手が、力なく両脇にたれた。

 「ドウシテカエッテキテクレナイノ」

 唐突にディスプレイの電源が切れて、部屋の中に静寂が戻った。静まり返った豪華な部屋で、誰もが動けず立ちつくした。

本編のラストの場面。ぶっちゃけネタバレ全開&抜粋が長すぎだけど、まぁ好きなんだから仕方無ぇわな。その場にいる誰もが、ただ観ていることしかできない無力さにたたずんでいる中で、ひとりの「少女」はその命を失わせていく。彼女が望んだのはただひとつ、最愛の「パパ」ともういちど会う、たったそれだけの事。だけど、だからこそ、”現実”と”願い”の狭間で彼女は存在を揺らがせてしまって―― とても悲しいけれど、それゆえにとても美しい、この巻のSFらしさが最大に発揮されたラストシーンを今回は選出。



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2005/12/28