感想・小説編。

カルシファード青嵐記2 風雲の王城で

著者:友野詳

出版元:角川スニーカー文庫


カルシファードの第一シリーズ2巻目。のちの宿敵フォルトーン・ティーグをはじめとして、サブキャラがにわかに充実しはじめる回、ですな。

やはりカルシファードシリーズ、本編の”面白さ”は間違いなくこの巻から、でありしょう。大きな時代の流れを前に揺れ始めるカルシファード候国、その上で活躍あるいは暗躍し、徐々に台頭していく各登場人物。そしてそんな激しいうねりの中で、それぞれの過去もしくは目指す”道”と向き合う様子が描かれる白狼党の面々。これらストーリーの流れがまず面白い。作中の文章描写でも本シリーズの魅力が満載。ひたすら真っ直ぐな主人公サイドと、まるきり逆で真っ暗ドロドロな敵サイドとの心理描写の対比が、ストーリーの流れと合わさりながらドラマチックに描かれていくワケでして。動き出した時代の中で、各々の人物が千差万別に、カルシファードという国を見つめぶつかっていく、このストーリー性、このドラマ性よ。やっぱマジ面白ぇってこのシリーズ。つくづく思わされますなぁ、オレがカルシファード大好きだってコトを(笑)

まぁベタ褒めしつつも、本作の魅力の一端である激しい殺陣描写だけは、まだもうチョイとパワー不足なのが否めません。でも、ソレを除けば早くもこの2巻から内容大充実してくれちゃってるのが本作。それに「ブレード戦闘」(※本作の言葉に合わせてね)という面では物足りなくても、各場面での”戦い”そのもののボリュームはなかなかに高いから、食い足り無さはそれほど感じませんし。舞台世界上の展開でも、異貌いぼうなる銀の月がもたらす秘宝とその謎が描かれる第三幕と、動乱さなか時代へ挑もうとする人々の生き様が描かれる第四幕との、カルシファード候国の二面の”表情”をバッチリと読ませてくれて魅力たっぷり。あーホント面白ぇ。なーんかさっきからバカみたいに褒めっぱなしですな、今回のレビュー。でもやっぱ好きなモン読んでんだから仕方ないよね。仕方ないよね。(←同意を求めるように2回)



▽自薦名場面 ― 225〜226ページ

 じりりと、ロング・バトル・ファンが閉じられてゆく。右半分だけが畳まれて、キクノの顔が半分だけのぞいた。

 「臆病者。あたしたちはいたぶれるけど、強い人にはこそこそ騙し討ちしかできないんでしょ」

 キクノの瞳が、苛烈な光を宿して、天井の男を射ぬいた。稲妻の閃きのように、それは鋭い。

 「天の怒りを」

 彼女がそっと呟くと、ばちばちっと、キクノのバトル・ファンから火花が散った。

いくつか候補あって迷ったけど、今回選んだのはここ。いちどは恐怖に飲み込まれかけながらも、静かな怒りで敵に真っ向立ちむかうキクノ。普段は引っ込み思案なのに、いざ鉄火場ともなれば凄まじく強い”芯”を垣間見せる彼女が、とにかくやたらカッコいい。文の段落としてが途中でブツ切りにしちゃってますが、場面として決まり良く抜き出したかったので。にしてもオレってホント、「戦う乙女」とかって好きだなぁ(笑)



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2005/03/20