×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。



感想・小説編。

カルシファード青嵐記1 風は吹きはじめた!

著者:友野詳

出版元:角川スニーカー文庫

カルシファードシリーズの、実質的な第1作目。まさに『始まり』的な内容ですかね。

正直なトコ言うと、この巻は強いて面白くもないかなぁ、と。なんてのか、作者自身もあとがきで述べてることですが、全体的におとなしめな感じなのですよ。シリーズの魅力である熱いドラマや激しい殺陣たてなんかも、まだまだチカラ入れて描かれていないよーな。キャラクターと世界設定の紹介ぐらいで、1冊・3話がおさまってる雰囲気なのです。でもなんかコレ、意図的にそうしてるようにも感じられるんですよねー。第1話のサブタイトルに『大序幕』などと銘打ってるあたりに、その意図が垣間見えます。フツーに読むぶんには何の問題もなく『第1話』なんだけど、それをあくまで「これから始まる大きな物語の前座」として据えることで、続くストーリーの壮大さをひっそりと伝えようとしてるのかなぁ、と。

というワケで紹介編的な感覚の強い第1巻。そういう点では良くハナシできてます。シリーズ主要キャラのほとんどがキッチリ登場するし、各キャラの性格やそれぞれの関係構図なんかもシッカリ見てとれるし。どういう世界設定の舞台なのかも、おおむねで伝わってくるから、やはりシリーズ第1作としては及第点なんでしょーて。ただやっぱ、単独として読むと、どうしても押さえてるがゆえに”魅力”が足りないんだよなぁ。そういう部分をかんがみると、やはりというか何というか、旋風録から入っていく方が惹かれやすいのかもしれませんね。

とまぁ、不満がやや多い1巻ですが。全体を読んでも二編挟まれてる幕間まくあい』がかなり好きだったりします。特にイイのが『その一』。まさに絵に描いたような敵キャラが、別に企みどころか何してるワケでもなく、親玉以下が揃ってしゃべってるってだけなのに…なんでしょうかねこの存在感。もう、誰が読んでもヤツらが敵であり悪であり強大な存在であるというのが一撃で伝わるもの。『その二』でのナギ親子の、穏やかながら強い”思い”が込められた会話と合わせて、本編でやや不足気味なカルシファードシリーズの魅力と友野さんの文章力が、これら『幕間』に凝縮してるような感じですねぇ。



▽自薦名場面 ― 210〜211ページ

 「立ちなサイ」

 ディエーナの声は、静かだった。だが、キクノの背を震わせるほど、怖かった。怒鳴られるより明確に、彼女の怒りが伝わってくる。

 「それとも、そのまま死にますカ? あきらめているなら、貫きたい思いがないのナラ、あんな化け物より、私が美しく死なせてあげマショウ」

 (中略)

 だが、ディエーナに正面から睨まれて。

 少年は、拳を握ってみせた。

 ディエーナが、優しく笑う。

 「肉体は精神に従う。どんなに小さな機会でも掴むのデス。あがきなサイ。切り開きなさい。生きのびねば、どんな思いも貫けない!」

『幕間』が好きと言いつつ、名場面は本編中から選んだりする(笑) 死を受け入れようとしていた少年に、叱咤の言葉を投げかけるディエーナ…もとい、ウェンディエン姫のセリフ。自らの境遇あってこそ語れる、「生き抜く意志」の言葉。誰よりも強い意志を持った、戦う姫女王・ウエ様ここにあり、といったシーンです。イヤしかし打ちにくいな、姫さんのセリフは。



第2巻>

<旋風録


<<ノベルレビュー



2005/01/20