感想・小説編。

カルシファード旋風録

著者:友野詳

出版元:角川スニーカー文庫

「な、何者だ、お前達!?」

「人呼んでカノーの白狼、弾華者はじけもののヒビト・リョウヤだっ!」

「兄貴だけだって、そう呼んでんの」

111ページ 悪党、リョウヤ、シラハの会話シーンより


なんだってぇコレの番号振りを”00”なんぞにしてるのかというと、本作がシリーズ全体に対するプロローグ的な内容だからという理由だったりするワケでして。刊行順で行くといちおう5冊目に当たるんですが、物語の進行順を考慮するとやっぱりコッチを先に取り上げた方がイイかなぁ、と。あとがきでも友野さん自身「読者はこの巻から入ってくれたらいいなぁ」とか言ってるし。

といったワケでカルシファードシリーズの第ゼロ作(?)、カルシファード旋風録(以下、旋風録)であります。シリーズ自体はすでに完結済みなんですが、手持ちのライトノベルのなかで、シリーズものとしては一番コレが好きなんじゃなかろうか?ってぐらい好きだったりして。大学時代に友野詳作品ダイスキな先輩から色々とシリーズを借りまくってたんですが(※それこそトータルで20〜30冊は借りてたかと。てかどんだけヒマだったのよ大学時代のオレ(微汗)、この作品だけは自力で買いそろえたくなったほどに気に入りましたね。といっても実際買いそろえだしたのはシリーズ最終巻が出る少し前とかいう、遅いにもほどがあるような時期からだったのですが(微汗)

このカルシファードシリーズの何が面白いかって、世界設定の構築の巧みさが真っ先に上げられます。日本の幕末維新の時代風景をもとにして、作品内の土台世界となるルナルに則した物語を描き上げてしまうその構築の上手さ。何がスゴいって、単独の和風ファンタジー活劇として完成されているのはモチロン、ルナル世界のいち舞台としても違和感なく、さらに言えばルナル世界の時代背景から観てもまったくの破綻を見せずに作品を創り上げちゃってるのがもう。また殺陣シーンなどでは静と動、”間”と”速さ”をガンガン描き込んでくれちゃってるのがたまらない。この旋風録はまだ物語が動く前のお話ですが、コレだけでも面白いの何の。チャンバラ万歳、日本刀サイコー。ま、作品内じゃあ『カルシファードブレード』だけどねー。



▽自薦名場面 ― 266〜277ページ

 「最期の……頼み……だ (描写文 省略) ……こいつを……受け継いでくれ」

 さしだされたのは、骸骨戦士が使っていた古刀。

 「……そしてもう一つ……」

 腕が前に出るのと同時に、死者の肉体はついに土へと――。

 「……お前は、こうはなるな……」

 はっとリョウヤが手をさしのべた時には、彼は崩れ去っていた。(中略) たった一つ、リョウヤの手に遺された、古い刀をのぞいては。

 「……ならねぇよ」

亡霊と化した名も知らぬ剣豪と、主人公リョウヤの最期のやりとり。死力はおろか、魂までも注ぎ込んで互いの剣を交えた剣士達、その生き残った者への末期の願い。「お前はこうなるな」、その言葉に込められた深さははたして如何ほどのものだったのか。こーゆうシーンって好きだなぁオレ。にしても今回ちと長いっすねぇ。つーか中略が多いのはどーよ。



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2004/11/15