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感想・小説編。

人類は衰退しました2

著者:田中ロミオ

出版元:ガガガ文庫

すっかり衰退した旧人類の「わたし」と、新しい地球人類たる妖精さんとの、なんでもありなお話シリーズ第2巻。お話の進展はオムニバス的だけど、時間進行はいちおうフツーに流れてんだよなこの小説。てなワケで今巻は5月にあった出来事2編を収録。

さて2巻、前巻に引き続き「わたし」が摩訶不思議な妖精さん時空に関わったり巻きこまれたり首突っこんだりしながら、まったりユルめなファンタジーが描かれるとゆー点では変わらぬ面白さ。なんですが、今巻はその辺のテイストは変わらず残りつつも、そこにひとつSFというか一種の思考実験というか、そーいった要素がかなり強く盛り込まれているのが、さらに新しい魅力を追加させているような感じでしょうか。多分、田中さん自身としてもこーいった作劇こそが"本分"とも言うべき部分じゃないかと思われますので、ソコ行くとこの巻からが本領発揮といったトコロなのかもしれませんねー。

そーゆうワケで順に取り上げてきますか。まずは『人間さんの、じゃくにくきょうしょく』。唐突に無関係なハナシ振るけど、この回のトビラ挿絵はなんかスゴく好き(笑) 閑話休題、基本的な展開は、「わたし」が妖精さん時空(←何気に便利な言葉だなコレ)に巻きこまれて小動物世界でエラい目に遭うとゆー内容ですが。その中で今回描かれてる理学的要素は、普通の大人レベルからフイに知性・知能が減退したとき自己の認識はどのように変化するのか、とゆー、チョット要約して書き出してみたらやたらと哲学的な雰囲気漂うお話でゴザイマス。まぁ今回の場合、知能低下に伴ってカラダの方もミニマムサイズにシフトチェンジしちゃってたりしてますが。ソコはとりあえず、ある種の整合性とお話を余計面白くするためってコトで、ココについても「小動物の体感時間は人間のソレと比べてずっと早い」といった実際の実験事実を取り上げてるんですけどね。ハナシを戻して。知能が低下するとソレまで認識していた・できていた事柄が判別できなくなる、身体サイズ的な問題とも別に遠い景色や高い上空にある物事を識別できなくなる、という解釈で物語が進むワケですが、コレなかなか面白いなぁ、と。子供の頃と大人になってからでは同じ風景も違って感じる・見えるってのがありますけど、本作を踏まえて、自身の経験や知能の増加によって判別できる情報が増えるから違いを感じる、とゆーコトだとすれば実に納得がいきますわな。そして、知能が物事の解釈を決定づけるならば、低い知能では感情そのものさえ動くことが無くなる、と。コレらの事柄、もっと考察を突き詰めていけばかなり凄い(重い)物語を作れそうな気もするんですが、まぁそこはソレ、本作はあくまで妖精さん時空のお話ですからねー。オチはあくまでお気楽に(笑)

続いて『妖精さんの、じかんかつようじゅつ』。お話の展開はいわゆるタイムループものですが、コチラでもまたメインテーマ的に取り上げている思考実験要素はまず、「一切の言語体系を持ち合わせない扱えない、けれど高度な知能は有している人物が欲求する事柄とは何か?」というモノ。ソコはとりあえず「個性を欲する」とゆーコトでハナシが進むんですが、なら「純白に近いくらい個性を保有できていない存在が自己を決定づけるためには何が必要か?」というテーマへと持ちこまれていくワケで。"言語"が無いために考察とゆー思考行動が取れない、でも知能そのものは高いから思想は重ねる。言葉が無いままに考えるって、一体どんな"様相"なんでしょうか。いやー……ホント、コレこそ考えが及びません。だって、こうやって考えること自体が"ことば"を用いてこそ行う"思惑"ですからね。「"くう"を描く」みたいな、まさに禅問答の領域ですよ。分かるワケ無ぇ。そしてそんな存在である「助手さん」が求めたのは自分と言うものの在り方・カタチ、つまり「個性」であり、でも自分を自分で定義できない(※そもそも定義させるための言葉が無い)彼がどうやってソレを成すのか、成そうとしたのか。ま、ソコは妖精さんテクノロジーのチカラを借りることでどーにかなれちゃうワケですが(笑)、ともあれその結論は「自分の"ウワサ"を集める」だったと。自分のことが自分で分からないなら、他の人に考えてもらってソコから"自分"を定めればイイ。希薄な自我を補うために、他者を介して概念を積み重ねることで欲しかったものが見つかった、コレはそんなお話だったワケですな。まぁ、こー書くとホント哲学的なムズカシイ感じでイッパイですが、あくまで妖精さん絡みのゆるめ〜な調子で描かれるのが良いバランスを作っております。

にしても、なぜゆえタイムスリップのアイテムがバナナ? スリップ=すべる=転ぶ=バナナの皮を踏む、みたいな連想ゲームのたまものでしょーか。変なトコでまたしょーもない…



▽自薦名場面 ― 319ページ

 《たいむばなな ちゅうい、たべるところぶよ》

本編のイチバン最後の行から選出。スゴく単純で簡単な注意書きなんだけど、この簡潔な言葉から助手さんの優しさみたいなものがちゃんと伝わってくるのが良いんだよねー。なんとも和やかな気分になれますな。



第3巻>

<第1巻


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2008/10/15