感想・小説編。

フルメタル・パニック! はしるワン・ナイト・スタンド

著者:賀東招二

出版元:富士見ファンタジア文庫


フルメタ長編第2巻。一言でまとめちゃうと、テッサが明確にレギュラー参加する話の回、って感じでしょーか。

読んでる最中はそんなに気になる…とゆーか目立って気付かないんですけど、この2巻、サブタイトルにあるとおり「ワン ナイト スタンドたったひとばんのできごと」であるワケでして。ソコの点から着目すると、なんつーのかスゲー濃い一日だな、と。1章アタマの5ページ分は除くとして、プロローグからエピローグまでで見ても、おおよそ48時間と経ってないからな。なんとなく、たった『ひと晩』という時間範囲でよく300ページの物語なんて作れるよなぁ、なんて感想を抱いてしまったりなんだったり。まぁプロットの組み方・物語の構成なんて、物書きさんのやり方次第ですけどねぇ。あと、今回レビューのために改めて読み返してて、なぜか「抑えた回だなぁ」という読後感を抱いた次第。なんでやろか。別に派手さの足りないシナリオでもないだろうに。我ながらフシギだ。

話の中核はやはり、宗介・かなめ・テッサの三角関係ですか(笑) カリーニン少佐とセイナのやりとり(?)もいちおう流れのメインだとは思うけど、どう考えても明らかに比重が違うものな。クルツ・マオらチームウルズの活躍部分なんて、ほとんどオマケ状態だし。とにかくアレですよ、率直に言って、間に挟まれた宗介は哀れ以外の何者でもないデスよ。そりゃ気遣いなんかでいたらない部分こそあれ、当の本人はいつもいたって真剣なんだものなぁ、両サイドから突っかかられてりゃストレス溜まって仕方ないデスよ。だからなのかなんなのか、見ようによっちゃあ戦闘シーンに入ってから生き生きしてるようにも感じられるからね、彼。余計なこと考えんでも済むとラクだよね、とかってハナシですかね。違いますかね。違いますね。

ところで最後にチョットした疑問。「気に病むのは来週にしよう」っていうテッサのセリフ(とは違うけど)って、何か出典でもあるんでしょうかね。続巻でも出てくる言葉だけれど、口癖ってぇのとも違う感じだし、なんかの決まり文句みたいな印象があるワケでして。誰か解説してくれるヒトいるかしらん。



▽自薦名場面 ― 273〜274ページ

 「しかし、大佐殿――」

 「やるんです」

 きっぱりと、沈着な指揮官の声でテッサが言った。

 「〈ミスリル〉はそのために給料を支払っているんです。わたしの安全は考えなくてけっこう。あなたの腕に賭けましょう」

 そう言われただけで、宗介はなにか不思議な気分になった。信頼を受けた者だけが得られる自信、そして挑戦心。そこまで言うなら、やってみせようじゃないか――そういう気分になる。

クライマックス少し前の、テッサと宗介のやりとり。個人的にはこのふたりって、「誰より賢い女神のごとき指揮官」 と 「優秀な上官に従う歴戦の戦士」っつー構図の方が、ラブコメやってるときよりずっと似合うと思うワケでして。ソレもあるとして、やっぱテッサは『かっこいいモード』の方が好きだぁね。他の場面の、少佐とかとのやりとり見てても。



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2005/02/03