感想・小説編。

ダブルクロス・リプレイ・オリジン 破滅の剣

著者:矢野俊策

出版元:富士見ドラゴンブック


DX2リプレイ・オリジンシリーズの3巻。追加ルールブック(みたいなモンだよな)の『コンストラストサイド』ってのを導入して、敵対組織・ファルスハーツの所属キャラもプレイヤーに加わった、「混成」とゆー雰囲気が強いのが今巻の特徴だぁね。

さてさて、これまでのオリジンシリーズは、物語性の高いシナリオもモチロンのこと、その中で巧みに凝らされたギミックがまた、TRPGリプレイとしての面白さを増していたのが特徴ですが。今回の前後編ではそのうち、ギミックの要素が若干弱めに取られて、代わりにドラマ要素をより一層に高く取ったとゆー感じの内容になってますな。ま、ダインスレイフのネタに、Dロイスとジャーム化との関連性を絡めてたりはしてますけど。前2巻と比べるとやっぱ、ギミック性は弱まってはいますねぇ。

つーワケで、今回バランス高めになってる物語性、コレのドラマ性がまたバツグンの内容・展開で、やはり読み物として面白いリプレイ作であるのがまた、シリーズ読者としては満足の行くところでもあるワケでして。1巻でちょろっと、プレイヤー自身から出てきたネタを元に展開されていく、隼人の秘められた過去と、それを巡って繰り広げられる戦い。とまぁ、本編をフツーに追うだけだと完全に隼人メインのストーリーですが、もうひとりのシリーズ主人公である椿も、同じチルドレンの仲間であり何より”友達”である伊織いおりとのやりとりを通して、彼女なりの魅せ場(?)を存分に作り出してるのが、読み応えのあるトコロです。なんつーのか、シリーズを通してみてると個人的に、隼人には「成長」って言葉が率直に似合うけど、椿はどっちかっつったら「変化」って方がしっくりくるなぁ。まぁ当然、変化も成長の一種ではあるんですが。そりゃーモチロン、プレイヤー側もそのへん自分で理解してロールプレイしてるってのは分かってますけど、あとがきにある「大人になる」とゆー本シリーズのテーマに対して、主役2名はそれぞれそーゆー感じで進んで行ってるように、私は感じますねー。幾度もの試練を乗り越え、より強い男へと「成長」していく隼人と、大切なものを増やして「変わって」いく椿。そーいったジュブナイル的な面白さも、本作の魅力なんですよねー。

しっかしまぁ今巻の結末、日本支部長・霧谷きりたにをゲーム的に本当に退場させちまうなんて、これこそ「オフィシャル」ならではの思い切った展開の取り方と言えますが。この状況、一般のプレイの中でも取り入れてみたらけっこう面白そーな気がするなぁ。ま、普通にシナリオ組むだけだったら日本支部長ってチョイ役以外の何者でもないから、あんま影響出そうとすんのも手間取りではあるんだけど。つーかよく考えたら、実行して活用させるってなると、そのセッション参加者が全員本作を読んでないとダメだよな。んー、やっぱ意味無い、ってか効果薄いかぁ。



▽自薦名場面 ― 278ページ

 隼人:俺は”日常”の大切さを知っている限り、こちら側にいる限り、誰かを守り続ける。救われた命の分まで! それが俺のDロイス、生還者を仲間から受け継いだ俺の生き方だ! 《インフィニティウェポン》を使用! あの写真を刀に変える!

「もうひとりの自分」・真神まがみとの決着を前に、いま改めて宣言する高崎たかさき隼人のおのれの生き方! シーン全体を見る分にはココの前後もイイんだけど、ココはあえてキモになる彼のセリフだけを選出。Dロイスの生還者を持ってる理由を、こーゆー風に語ってみせたのが、実にカッコイイ演出でありセリフだよなー、と。隼人のプレイヤーって、こーゆーロイスに絡めた演出が上手いんだよなぁ。



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2006/10/15