感想・漫画編。

TWIN SIGNALツイン シグナル 16巻

著者:大清水さち

出版元:ガンガンコミックス


ロボットマンガの16巻。本編が遂に100話突破ってコトで作品全体のクライマックスが徐々に迫ってきているのがこの巻。そーか、この頃からカラー画にCGを採用するよーになったのか、大清水さん。にしても本気でどーでもイイ話なんだけど、この巻はミョーに変な顔してるコマが多い気がするなー。代表格では108ページのシグナルとか。どんな驚き方してんねん、主人公(笑)

さて、この巻の大きなイベントは分けてふたつ。まずは一方、ココに来てよーやく明かされたちびシグナルの正体ですな。これまでは単なる製作上のバグかと思われていたシグナルの特殊能力であるちび変化(笑)が、じつは不具合などでは全くなく、MIRAミラという特殊金属とSIRIUSシリウスという結晶体動力源とが結合されたことで”誕生”した存在だったと。ココんとこ、科学考証の上では(ってゆーか主に公式ムックに載ってる解説なんだけど)、ふたつの物質によって自発的あるいは超自然的に発生した知性体ってコトで、「ちびシグナル」というのは新たな知的生命体としての定義に当てはまるのではないか、とゆー解釈にまで発展できてしまうという、コレまでのコメディ担当キャラとしての色合いから一気に超SF的な驚異の”存在”にまで一気に階段すっ飛ばしてしまった衝撃の正体発覚シーンなんですけど。まぁ、オドロキの真実が明らかになったトコロで、やっぱりちびはあくまでもチョコ大好きなチビッコでしかないワケで(笑) いや、ホントにこれらの設定、MIRAをボディ構成体 件 記憶装置として、SIRIUSを動力源 件 演算装置として位置づけられる、メチャクチャ面白い科学考証のもとに考案されたモノなんですけれどねー。でもやはりとゆーかなんとゆーか、あくまでも本作はエンタメ漫画として、あまりディープな設定解説には発展させず、ちびのお気楽な説明ゼリフだけで済ませてしまうときたモンだ。つくづく本作の割り切りはスパッとしてるよなー。まぁ、そのフォローとしてムックで深い解説をやってるんでしょーケド。

そしてもう一方の重要イベントが、遂に語られるコトとなったDr.クエーサーそしてクオータらの目的ですか。あまりにも高い性能とあまりにも強い個性を持ち、従来の「ロボット」からはかけ離れすぎた驚異の存在であるアトランダムナンバーズ。それらはヒトの手によって造られながらヒトの手に遥か余るものでしかなく、在るだけで”恐怖”を人々に知らしめる脅威にしか成り得ないのではないか。そのような”もの”が世界に居ることは、果たして許される事なのだろうか?――だからドクターは判断を下した。アトランダムナンバーズは抹殺されねばならない、と。……う〜ん、ここに来てとうとう、ロボットものSFマンガに相応しい”ロボット”の存在意義を問いかける深いテーマを打ち出した本作ですが。このクオータから告げられたDr.クエーサーの真意、受け取りようによっては、これまでずっとロボット達を「単なる道具」として冷めた視点で(あるいは、一歩退いた所から)接し続けてきたドクターこそが、音井教授をはじめとした他のどんな工学者たちよりも強く”ロボットという存在”に向き合いその意義を考えていたのではないか、とも取れて、また少し言い方を変えると、ロボットに強いて関わろうとしていなかった(少なくともそう感じられた)Dr.クエーサー当人こそが、誰よりロボットに取り憑かれた人物だったのではないか、とも表現できるんじゃないかなー、と思ってしまうんですよねー。特に、この後の最終話までで描かれる内容と合わせて考えてみてもさ。ソレはある種の、人間の愚かしさなのか、それとも人間のエゴなのか、あるいは。

あぁ、ラストの付け足しみたいにしちゃうけど、シグナルとコードの師弟対決とその決着、そしてソコで語られたコードの真意。以前の番外編であったよーに、コードは誰よりも”強く”あるから、今まで電脳空間でボディも無く独り在り続けていた・いられたんですけれど。孤高ゆえに独りであることの虚しさを誰より知っていて、そんな彼にとってようやく現れた「細雪を越えた者」は、シグナルという存在は、本当に心から望んだ真の相棒パートナーだったんでしょう。元来サポートロボットとして造り出された彼は、どれほどおのれを律っせるだけの心力の強さを持っていたとしても、孤独であることから誰より逃れたかった。それはひとりきりが嫌だという事ではなく、横に並び立つ対等な存在がほしかっただけの事で。今までソレは細雪というプログラムだったけれど、物言わぬ”相棒”はやはり望む者では無く、そこで遂に現れたシグナルは、彼を長年の孤独から解放する救いでもあったんじゃないでしょうかねー。あのコードが浮かべたひとつの雫は、機械に宿った”魂”が救われたゆえの想いのカタチだったのだと、私は感慨深くも思わされるのです。



▽自薦名場面
 ― 107〜108ページ

 「率直に聞くけど、お前本当にぼくなんだな」

 「いやですねえシグナル君、まだ判らないですか」

 「え? だから、ぼくの一部…?」

 「ぶっぶぶー。違いますよ。

  ぼくは君のMIRAです

  A-Sエース<SIGNALシグナル>を造りあげてる特殊金属MIRAなのです。
  なので”一部分”などではありません。もっとです」

てなワケで、ちびシグナルが語る衝撃の告白!! イヤね、このシーンは単にちびの描かれ様が気に入ってる、とゆーか好きなだけだったりして。レビューの冒頭に書いたみたく108ページのシグナルの表情も好きなんだけど、それよりもっと107ページの4コマ目が、ものごっつい重大な発言をしていながらメッチャクチャちびがカワイイのなんのでさぁ。この屈託の無さがちびのちびたるゆえんだよな〜。



第17巻>

<第15巻


<<コミックレビュー



2007/08/26