感想・漫画編。

TWIN SIGNALツイン シグナル 15巻

著者:大清水さち

出版元:ガンガンコミックス


ロボットマンガ第15巻。シリーズ最終章のプロローグがここから始まる、そんな展開で描かれる巻。物語のラストに登場する”ファクター”も、ここでその実体の片鱗を垣間見せます。とまぁ、そんなシリアスまっしぐらの本編なんだけど、一方でカバー裏おまけ4コマでのちびシグナルのコワレっぷりはなんなんだろう… ( ̄▽ ̄;)

そんなこんなで、シグナルの動力源・シリウスがクオンタム側に奪われロボットとしての死に瀕したり、オラトリオ達はDr.クエーサーのメインネットであろう事かクオータ自身が「ドクター」と呼び・かしずく”存在”と遭遇したり、シリウス強奪のあおりを受けてシグナルが数度目のバージョンチェンジ(いや、今回の場合はマイナーチェンジか? 性能向上とは逆なんだし)をしたりと、停滞気味だった本編展開が怒濤の変動を見せる流れとなっておりますけれど。そんな急展開のなかで何はともあれオラトリオの電脳空間戦闘にばかり目が行くオレはどんだけあの伊達男が好きなのか、と。(大爆笑) もーホント、ノベライズサイドでは毎巻のよーに存分に描かれてるサイバースペースでのバトル描写(?)ですけど、原作本編ではORACLE編でやってほぼそのままですからねー。そもそもソレにしたって内容が奪還作戦みたいな展開だったから、どーしても強いてハデな戦闘ってのは無かったですし。そこ行くと今回は、ファンタジーものの魔法戦を思わせるアタックプログラムの応酬や、それに伴う現実離れした(実際、”現実じゃあない”んだけど)状況描写の様などなど、ORACLE編ではイマイチ食い足りなかったハデさがもう十二分にたっぷりと。しかも我が半生のベストフェイバリットコミックキャラクターであるオラトリオさんがこれでもかってほどメイン張って活躍してんですから、そりゃココを注目しないで何を注目すればイイのかってなモンでして! …イヤもうつくづく本気でオレはどんだけ以下略。でも実際、小説版では何度か出ているオラトリオの必殺技・『八つの声ヴァイタル・ヴォイス』を、こーして57〜59ページで漫画ビジュアルとして見られたのは、いちファンとして嬉しくも楽しいトコですな。コレって小説オリジナルじゃなく、ほぼ間違いなく原作で設定として用意されてた事柄のハズだしなー。よーやく原作で日の目を見たっつーか。

しかしまぁ彼の活躍を置いといても、サイバースペースで戦うために造り出されたオラトリオをして”気配”にまったく気付かず、電脳の申し子とすら言えるオラクルが「この私が解析できない、それは機械言語プログラムじゃない」と言って恐れる『ドクター』などは、実にSFギミックにあふれていて強く興味を惹く要素ですからねー。事実として面白い展開なのですよ、この一連の場面は。えぇ。敵の正体もシリーズ最終話近くで判明するワケですけれど、ソコから逆に辿れば確かに彼は電脳空間この世のものじゃない」存在だったワケで、ここら辺の科学考証がまた楽しい部分でもあったりしますね。

なんかすっかりオラトリオの活躍ばっか注目しちゃいましたが。ソコ以外にも、長年封印され続けていた=経験が足りないゆえに誤った決断をしたアトランダムと、ソレを即座に見抜いたコードという両者の人生経験の差異。自分には何もできないなどと思わず、出来る何かを自ら見つけ出そうとする信彦の成長した模様。そんな”弟ども”を、”姉”のひと言で一発従えてみせるラヴェンダーのやたらなめったらな威厳(笑) 〈クオンタム〉としてドクターに従うだけで、他には何もできないと語るクワイエットの抱えた苦しみなど、各キャラそれぞれに見逃せないシーンが用意されてます。

最後の重要ファクターがわずかに姿を見せたことで、長く続いてきたこの作品もいよいよ結末へと歩みを進めていこうとしだしました。この15巻は、まさしくその”始まり”を示している巻です。まー言ってもまだこっからコミックス4冊続くんだけどな。



▽自薦名場面
 ― 109〜112ページ

 「――知ってますか? あなたが何故、『意思』を持つロボットとして作られたか」

 「――手前てめえらみたいな犯罪者がいるからだよ。…時間かせぎは無駄だぜ」

 「敵は人間。通り一ぺんの防御プログラムではすぐ破られる、又それを防ぐ…いたちごっこです」

 「何が言いたい!!」

 「―――君の強さは
  どんな人間が来ても対処できる事にある

  なら、その上を行くためには?

  ――――そう

  そうして造り出されたのは 私です。
  そうですよねえ、ドクター?」

原型オリジナルロボットのA-O:オラトリオと、その複製コピーロボットであるA-Q:クオンタム・クオータの対決。ココはなんつーのかな、両者の会話だったり舌戦と同時に行おうとされている実戦闘の様子が気に入ってるとゆーか。冷静に自身と相手を語るクオンタムと、その言葉を聞きつつも敵意全開でアタックを放つオラトリオ、だがその攻撃はことごとくを避けてみせ、最後に衝撃のひと言を述べてすら涼やかな微笑は絶やさない。静と動、冷と熱を思わせる両者の対立が、妙に印象的なシーンです。



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2007/06/12