感想・漫画編。

TWIN SIGNALツイン シグナル 12巻

著者:大清水さち

出版元:ガンガンコミックス


ロボットマンガも12巻目。ゆっくりと物語が進む中、あいも変わらずクオンタムチームに翻弄され続けております(苦笑) 新キャラには称好ニイハオと、その制作者・Dr.マリアが登場。当たり前ったら当たり前なんだけど、『ニイハオ』の「ニイ」の字って辞書に登録されてない漢字なのよねー。正確には「のぎへん」でなく「にんべん」ですのでご注意をば。

さて、正直なトコこの巻ってあまり展開らしい展開って別に無かったりするのですよねー。クオンタムの素性がシグナルたちに明らかにされたり(つーか実はいままで名前すら知らんかったんだっけな)、カルマが正式にアトランダムナンバーズの統括者としての地位に就くことになったりと、イベントはちょこちょこ起きてはいるんですが、あまり目立った進展ってのはコレと言って。まぁ、派手な展開が無いせいで地味目に映ってくるとゆーか。クオンタムチームとの対決(にもなってないけど)にしたって、どーにもイニシアティブ取られっぱなしのままですしねー。ORACLEオラクルハック事件の当事者と面を向かい合いながら、クオータたちはタダの自己紹介をするだけで場を流してしまうのも、事件の証拠はひとつも残していないからこの行動はハタから見ると何の問題もない動き方なワケで。カルマの主張をホーンが一刀両断に拒否してしまうのも、作中で彼が指摘したとーりのことで、コレもまた何の問題もない行動。なんつーかあの連中、つまり立ち回りがウマいんですね。要領が良いというか。115ページでパルスが「自分たちのデータは筒抜けなのに、敵側のことが何も知れないから不利だ」とグチってますが、実際にはソッチの理由のが強いんじゃないかなぁ。

そんなシグナル側の中で、いちばん立ち回りがウマいのが、音井ブランドの長姉ことラヴェンダーでしょうか。クオンタムとの抗争の展開を考慮して、事情を知らせないがために信彦を危険に巻きこむ前に、あえて先に教えておくことでそれを回避させようという判断は、さすが彼女といったトコロ。まぁどっちかっつったら姉貴の貫禄といった方がイイ感じではありますが(笑) 信彦自身も、きちんと事情を説明してもらえたからこそ、姉・兄の言い分に聞き分けよく対応できてるワケだし。このへん実は、3巻で彼が言った「大事なことは子供はいつも最後に聞くんだよね」というセリフとの対比になってるんだよなー。今回は、 「大事なこと」を先に教えてもらえた=仲間として認めてもらえた ってコトで、成長とも違うけど、子供の在り方を描いた少年マンガの描写として、何気にソレがシッカリ描かれた場面じゃないかと思います。



▽自薦名場面 ― 110〜111ページ

 「―― …すみませんアトランダム」

 「何をあやまることがある。 アトランダムわたしをさしおいて―――か?
  お前は以前リュケイオンの市長で、私はボディのない囚人だった。それが今ではお互い変わったものだな。
なあ、カルマ」

複雑な事情の上にある兄弟ロボットの会話。以前は互いに”何か”に囚われていたけれど、今はそのしがらみも越えて”新しい場所”に立っている。本当なら統括者に相応しいだろうアトランダムを差し置くことを申し訳なく思うのではなく、過去を悔いて後ろにばかり目を向けるのではなく、これからは今現在を、その先にある未来だけを見ていけば良いだろう。アトランダムは言外に、そんなことをカルマに言ってるんだろうな。…いやー、ホントに変わったなーこの人。こんなセリフを言えるだけで、本当に変わったわ。



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2006/08/27