感想・漫画編。

TWIN SIGNALツイン シグナル 9巻

著者:大清水さち

出版元:ガンガンコミックス


ロボットマンガの9巻。ORACLEオラクル編の終了と、それの後始末みたいなお話が少し。ときに、この巻はオマケマンガが多いのな。ラストの外伝は、オマケとは少し違うけど。

基本的なナカミは、ざっと言っちまうとオラトリオチームの完敗(とゆーよりはクオータの勝ち逃げ?)でORACLEオラクル編が終幕するんですけど。この巻での各キャラの行動・思考、実はものすごくロボットらしいロジックに基づいた描写なんですよねー。

まずはORACLEの管理人であるオラクル。彼は、「データを渡さなければネットもろとも自爆する」というクオータの脅し(?)に対し、結局は言われるままにデータを譲り渡してしまいます。犯罪者にデータを盗られることは最悪の事態のハズ、なのにどーしてこうも簡単に明け渡してしまうのか? その理由はズバリ、ネットORACLEの所有する情報の保全こそがオラクルの存在理由だから。たとえ一部のデータを奪われるとしても、他の数多くのデータを消滅させるようなことだけは、絶対に阻止しなければならない。そうすることが彼の存在理由であり、そうあるように彼の潜在意識は構築プログラミングされている。だからオラクルは、簡単にクオータに屈してしまったワケです。

続いてオラトリオ。敵の強大さを察知した彼は、いとも簡単に最終手段である『ORACLEの全権移行』を決行しました。その結果自分の、ロボットとして生きる時間が二度と戻ってこないかもしれないと理解しながら。自身が消滅する危険を分かりながらも、アッサリとそちらを選択してしまうのは何故か? 理由は、犯罪者の手からORACLEのすべてを護ることこそがオラトリオの存在理由だから。ロボットとして破滅しようとも、自分の全てをかけて、ORACLEを犯罪者から守護する。それが彼の存在理由であり、彼の潜在意識は最初からそう造られプログラムされている。だからオラトリオは、簡単に自殺行為を選んだのです。

最後にクオータもまた、データを奪えないなら自爆するという、普通だったら有り得ない選択をなんの疑いもなく受け入れ、オラクル達に提示します。それは、Dr.クエーサーの命令を聴き・適えることこそがクオータの存在理由だから。

彼ら3人は、ハタから(人間から)見ると理解しがたい行動を、簡単に選んで動いてます。その根底の理由は、彼らがプログラムされた機械マシンだからです。見た目には理性や感情を持って行動しているようで、その実は、意識の奥底に書き込まれた『命令プログラム』にこそ従って生きている。それが『機械』である彼らの行動理念。そーゆー風にして読むと、この9巻の各キャラの動き方はとても面白い。つってもだ、こーんな考察並び立てた感想を書いてるのも、私がTSの関連書籍を腐るほど読みあさってるからなんですけどね!(大笑) 普通の読者はそこまでディープに読み取れないだろーし、そもそもそんなこと気にしねぇっつーの。つくづくアタシゃシグナルおたくですな(笑) もっとも、そういったことを一切気にしなくても単純に面白くて、紐解いていけばそーゆう世界構築の奥深さも堪能できるからこそ、私は本作がつくづく好きなんですけど、ねー。



▽自薦名場面 ― 71〜72ページ

 「く…
  あんな犯罪者に私の空間を荒らされるのを、手をこまねいて見ているだけとは…」

 「奇遇だなオラクル、俺も手をこまねいているつもりねーんだ。
  電脳空間の無敵の守護者ガーディアン! A-O〈ORATORIOオラトリオ〉をなめてもらっちゃこまるぜ!!」

無敵の守護者、最後の一撃! 自分の意地とプライド、そして存在意義の、すべてをかけてクオータに一泡吹かせる、このオラトリオの啖呵が単純にカッコイイのですよ。やっぱり私は、数ある”キャラクター”のなかでもオラトリオが最上級に好きなのよねー。……はて、今回のレビューは主人公についてひとっことも語っとらんな。この巻でもシグナルくん、かなり活躍してるのに。



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2005/11/08