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感想・漫画編。

 スパイラル 推理の絆 14

原作:城平京 作画:水野英多

出版元:ガンガンコミックス


推理のマンガも完結目前、いよいよ第14巻目へ。鳴海歩の真相、ミズシロ火澄の目的、そして鳴海清隆の真の企みと、物語に横たわる"真実"の数々が一気に明るみにさらされます。とまぁ本編はシリアスもしリアス、クライマックスまでまっしぐらだけど、その反動かなんか知らんがカバー裏のネタがクリティカル(笑) 女子キャラ3人が誰よりカッコいいってのも、なんとも本作らしいなぁ… つーか騎士のひよのが素で似合いすぎるのもどーか。

そんなワケで遂に明かされた、知らされてしまった真実、鳴海歩が鳴海清隆の複製体クローンだったという設定の公開と、ソコからまた広げられていく展開がこの巻のメインとなります。とりあえずはこの設定、シリーズ序盤から「歩は清隆にソックリだ」というコトを、能力的なもの以外に容姿が瓜二つだという点に関しても何度か繰り返し描写していたので、伏線としてはキッチリ張られていたりするんですよね。まぁソレが"ココ"に行き着くとまではさすがに、想定の外の外でしたが。

にしてもクローン人間ですか。まぁコレは(他の作品レビューでも何度か語っている)私なりの解釈・感覚ですが…本作中でも述べているように、「人工的な存在」は必要とされるから今ソコに存在するものであり、本質的な意味で生まれてきた理由というモノを持たない「普通のヒト」とは、その点で存在理由が決定的に違うんですよね。「"ワタシ"は何のために生まれてきたのか」、それがある、あってしまうのが"彼ら"なのです。火澄の場合はミズシロ・ヤイバの同一血統を持つものとして、歩の場合は鳴海清隆の実験用人体テストボディとして。それぞれ共に一方的・独善的という言葉さえ生ぬるく思えるほど身勝手な理由で生み出されたのがこのふたり。これが彼らの持つ「何のために生まれてきたのか」。これだけでもうとっくに、充分すぎるほど残酷な事実でしょう。だけれども"造物主"はさらに彼らを、世界の異物として存続させないために、クローン体の不完全性による短命という運命を仕組んだ。生まれた理由があるだけでも異常なのに、さらに彼らは「何のために死ぬのか」すらも持つのです。それはシンプルな理由、生き残らせないために。誰かの身勝手な理由で生を受け、誰かの身勝手な思惑によって死ぬ時間が待ちかまえている、それが彼らが此処にいる理由。…究極的なことを言えば、人間誰だっていつかは必ず死ぬものです。引用もとをチョイと忘れましたが、何かのマンガであった言葉で、「生きてる以上は死亡率100%」なんです。ソレが何時来るか分からないってだけで。そういう点から語れば、ヒトは誰しも平等です。でもそれでも、彼らが押し付けられたこの運命の有様は、無惨にも程があるよなぁ……

ただ、それを思っても理解してもなお、涙ながらに火澄が語った「誰にも分かってもらえない暗闇と絶望」、コレは何か違うとも思ってしまうトコロがあるんですよね。イヤ、彼がこの現実に押し潰されてしまうことソレ自体は、どうしようもないと思いますよ。つーか、16そこらの歳の少年にココまでの悲惨を受け止めろだなんて、ソコまで非情なことはさすがに言えません。でも、自分だけにのしかかる残酷な現実なんてモノは、程度の差こそあれど万人にそれぞれあるものではないかと思ってしまうのも、私なりの実際のトコロなんですよね。彼らにかせられたモノは確かに常軌を逸していますけれど、何かそういう"モノ"がある、そのこと自体は特別だとは思わないんですよ、私は。…だから正直なハナシ、火澄が歩に救いを求めようとする姿は、仕方のない事だとは思っても、単純純粋に納得して許してしまえるモノとしては、自分には映らないんですよねぇ。それに耐えろとはとても言えない、言うつもりもない、けれど安易な理由からではないとしても救いを彼が求める有様を認めることはどうにもできません。う〜ん、これはオレが厳しすぎるのかなぁ、別に人間は誰もが結局は孤独だ、なーんてな暗いハナシを肯定するワケじゃないんですけど。でもチョイと真面目に(正式な意味での)自分の"世界観"から受け取ると、なんかこーゆう感想になりますねぇ、今巻の展開は。


隠されていた多くの物事が白日の下にさらされ、物語はとうとう最後の舞台へと移る。あらゆる希望を打ち壊すように、すべてを無駄なく美しい"無"へと還すように、どこまでも仕組まれたこの運命の輪、そこに立ち向かうのはその運命に組み込まれた少年自身。何もかもが悲劇たらんと創られたこの世界を前に、鳴海歩は何を見出して何処へと向かうのか。彼は言った、「望みは必ず繋いでみせる」と。他にもこう言った、「最後にはアニキの面をぶっ飛ばす」と。そして彼の傍らにいつもいた少女は、ひよのは以前言った、「神様気取りの誰かさんには腹を立てている」と。彼らの言葉は彼らの意思。例え何もかもが仕組まれたものだとしても、ただそれらだけは間違いのない不可侵の思い。残酷な運命へと立ち向かう彼らの決意は、果たして何処へと向かうのか、どんな結末を描くのか、最後に何を手に入れるのか。全ての答えは最終巻へ。



▽自薦名場面 ― 70〜72ページ

 「あの…  ぶっ

 ―― ………… ――

 「――なるほど、あんたもけっこうぬくいんだな」

 「は、はあ!? 何言ってるんですか!!」

 「特に意味はない。俺に必要なものをちょっと確かめてみただけだ」

「自分に必要なもの」を確かめたくて。…火澄との決着を前に、なにもかもを信じちゃいない自分に、何か、本当に意味はなくても"何か"がほしかったんだろうか。最初で最後の彼女を抱きしめた瞬間に、彼はどんな表情をしてたんだろうね。残酷な真相へと転がり落ちるその直前の、ほんのひとときだけ与えられた安らぎの瞬間。



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2008/04/29