感想・漫画編。

 スパイラル 推理の絆 6

原作:城平京 作画:水野英多

出版元:ガンガンコミックス


推理のマンガ、6巻。既出・新出含め、ブレードチルドレンが月臣つきおみ学園に続々と集まってきたのを皮切りに、事態が静かに(良くない方向で)進展してきます。そーいや、(改造エアガンとはいえ)本作でまともに銃が出てきたのって、カノンが取り出してからが初めてだったり。仮にもミステリマンガとしては、かなりめずらしいね。

さて6巻。この巻の見所、とゆーか注目キャラは、やはりカノン・ヒルベルトを置いて他にはいないでしょう。前巻のあとがきで、「コイツは色々やらかしますよ」みたいなことを原作者自ら記していましたが、確かにそのとーりの大活躍(?)。登場して早々ラザフォードを刺すわ、歩とさえ初めて会った直後には改造エアガンで脅迫、終いには速攻で理緒まで始末しにかかるザマ。見た目や口調はむしろ優しげなタイプの少年、なのに作中で動いて見せてることときたら、どれもコレも状況を悪化させることばかり。コレはまぁ、なんとゆーか本当に強烈なキャラですねー。言動や行動は決してエキセントリックだったりするワケではなく、ただただ静かに行動を起こす、だけどソレは予想を上回る(裏切る?)勢いで文字通りの血しぶきをまき散らしていくという。カノン・ヒルベルトとはそんなキャラ。

んで、ソレと同時に彼が強烈なのは、彼が今までの登場人物以上に頭もキレるヤツだとゆーことでしょう。28話・30話は、本作の「推理の対決」が全開で回ってる話でもありますが、これら回の面白さを跳ね上げているのはカノンいてこそだってのも、間違いないコトでしょうねー。イーブンだったハズの状況を、最後逆転の一手で引き分け以上に持って行くカノンの手際は、まさに見事という他ありません。ま、歩との対決は、やや唐突気味な幕の引き方でしたが。ともあれ、強力に頭のキレる、いわば名探偵に対する名犯人とでも言うべきキャラとしては、理緒とゆー良い先例がいた反面、彼女にはコイツほどの、頭もキレるが行動もキレる、それゆえに感じられる掛け値無しのヤバさって部分はさほどありませんでしたからねー。その点からもまさしく、カノンは今までいなかった強烈なキャラだと言えるでしょう。全くもって、登場早々から存在感をアピールしまくってますなー(笑)

でも、最後にひとつ不満を。彼がラザフォードを刺したこと、ソレ自体はとりあえず今はイイとして。それがあまりにもアッサリと、かつ突然のコトだったせいで、それがどれほどキャラ的に凄まじい意味を持つ行動だったのかが、あまり伝わってこないんですよねー。他の連中がどんだけ「信じられない」みたいなこと言ってても、読み手のコチラとしては「え、そーなん?」としか感じないとゆーか。5巻でいちおう両者の過去の絆とかは描いてたけど、それだけじゃー説得力には足りてないよなー。まぁ、イキナリぶっ刺したりしたから、カノンというキャラのインパクトは十二分に伝わったってのもあるんですが。

…さて、私はこのレビューで何回「刺す」って書いたんでしょーね? よーく振り返ると不穏なこと極まりませんね?! まぁ、ミステリマンガだったら「殺す」とかの動詞は日常茶飯事ですけどね! や、ソレもどーなんだろーね?!



▽自薦名場面 ― 176ページ

 「なんですか! せっかく人が加勢してあげてるのに!」

 「いいから黙れ。 無関係といや、あんたが一番無関係なんだから」

 「今までさんざん私を利用しといて無関係とはなんですか!! いらなくなったらポイですか! 女の子を使い捨てですか!?」

 「うわ…最低の男だね」 「あれでかなりの女を泣かせてるらしいぞ…」

 「こらそこ!! 人聞きの悪いこと言ってんな!」

んで結局、選んでるのはギャグシーンだったりする。や、単にココの掛け合いが好きなのであり。まぁ歩の発言も、その裏にはひよのへの気遣いがあるワケだから、この場はどちらの主張も正論ではあるんだけど。とは言え、セリフだけ見てたら確かに最低呼ばわりされても仕方ねーわな(笑) 少なくとも、今まで利用してたのは間違いないしなー。



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2006/05/31