感想・漫画編。

 スパイラル 推理の絆 4

原作:城平京 作画:水野英多

出版元:ガンガンコミックス


”推理”のマンガ、第4巻。VS理緒編の、中盤戦からクライマックス一歩手前まで。あー、この巻は原作者あとがきが無いんだなぁ。

前の3巻では「エンジンがかかってきた」と評しましたが、つづくこの4巻はもう完全に、「アクセル全開で進行中」ってな感じ。言ってみりゃ、スパイラルの本格的な面白さが目に見えてくるのがこの巻だと言っても過言ではありません。3巻ラストからの”引き”から続けて展開されていく、各キャラ同士の知略をこらした駆け引きの妙。そして同時に展開していく、「謎を解き明かす」という方面とは異なる向きで広げられる推理の応酬。殺人にせよなんにせよ、何かの事件解決のためとゆー原因・理由でもって推理を行うのが、いわゆる普通のミステリでしょうが。本作では、特にこの巻の展開では”そうではない方向”で推理を進めてゆき、高度な知略の駆け引きがそこに続くカタチでストーリーに面白みを加えていく。この部分がスパイラルとゆーマンガ作品における面白さの独自の要素なのですよ。ありとあらゆる想定をもとに歩が持ちかけた勝負を、向こうの裏の裏を読みつつ受けて立つ理緒、その水面下で繰り広げられる”知”の応酬。知恵をこらした駆け引きって部分では、ひよの自身もまた第15話など各話で、色々とそーいう向きのアクションを見せてくれます。スパイラルの基本要素とも言える「推理の物語」、この4巻はその面白さが存分に描かれています。

そしてそして、それと同じぐらい盛り込まれているのが、本作の主要テーマとも言える「信じる」という要素です。歩の力を”信じている”からこそ、再戦のチャンスを作ったひよの。自らの運命に対し、幸福を手に入れる事を”信じる”ことで立ち向かっていく理緒。本物かどうか分かりもしない、そんな救いの可能性を”信じず”にそれでも一人で立っていく浅月。何よりも自分自身を”信じられず”、それでも勝つために戦いへと挑む歩。何かを”信じている”からこそ目の前にある障害に立ち向かい、何かを”信じられなく”ても立ち塞がるモノへと戦っていかなければならない、そんな、人物の心の動きを「信じること」をテーマに据えて描いていく、ソレもまたスパイラルの基本要素なワケでして。その描写が、4巻では全体通して進んでいく。このキャラクター心理に重きを置いた作劇は、本作の、とゆーよりは原作者の作品造りの特徴だったりするんですが、とりあえずその描写がコレまた面白く描かれている。そんなこんなで第4巻のストーリー展開、スパイラルという作品の魅力が詰まった内容だと言って良いでしょうね。3巻までを読むことで魅力が伝わり、4巻まで読んで本当の面白さが見える。嗚呼、つくづく効率の悪いことで。つーかホント、オレ読んでるマンガってそんなんばっかしだ… ( ̄▽ ̄;)

それにしても後半からのひよの、めずらしくしおらしい感じだよなー。いつもだったら主人公を食う勢いで動き回るのに。普段と違って、自分が完全に事態の中心に立ってる所為だからかなー。横からクビ突っこむのとパターン違うからなー。



▽自薦名場面 ― 24ページ

 「落ちる時はいっそどん底まで落ちた方がいいんです。
  はい上がる距離が長いほど、男の子はずっと強く素敵になりますから」

めずらしく、巻の序盤のシーンから。う〜ん、こーゆうセリフはヒロインってのとかと無関係に女の子にしか言えないセリフだよな。正直、4巻は良いシーンがかなり多いんですけど、気に入ってるセリフとして今回ココをチョイス。



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2005/08/27