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感想・漫画編。

屍姫シカバネヒメ 3巻

著者:赤人義一

出版元:ガンガンコミックス


生者と屍者のホラーバトルマンガ。言うなれば、シリーズ全体の流れの中からひとつめのターニングポイントとなる展開を見せる巻。…って、ソレで思いついたんだけど、この作品って1巻から順に数えてちょうど起承転結としての小サイクルが形成されてんだなー、と。先の巻だけど、5巻でもまた新展開的に「起」が開始されるし。さすがに狙ってやってる作劇とも思えんケド、何気に上手い構成ではあるなぁ。

さて3巻。今巻で語られるべきポイントはやはり、何を置いても田神景世たがみ けいせいの死、この1点にこそありましょう。彼の最期はおそらく、第1話の扉絵やコレまでのストーリー展開から推察される限り、シリーズ全体の内でもかなり早い段階でそうすることを、赤人さんは決めていたものと思われますが…それにしても、そうと分かっていてもやはり、早かったなぁ、と嘆きを洩らしたくなってしまうのは否めないところと言いますか。ホント予定調和の、いわゆる"死亡フラグ"の流れのまま実際そうなったから、まだ受け入れられるショックではあるんだけど、その上でどーしても惜しさや悲しさを感じてしまうのはなんでしょうねー。まんまと作者の術中にハマってるとゆーか(微苦笑)

ただ本作の場合、その死別は単なる物語上の1シーンで終わるようなものではなく、その後の展開やなにより本作が描き示すテーマとしても大切な要素として強く描かれていることが最重要のポイントでして。日常を生きる"生者"がその日々のすぐ隣りに存在する「死」を想う、また非日常に身を置く"屍者"がすでに歩み終えた「生」を降り仰ぐ。そういう生と死への観念、メメント・モリこそが本作の重要テーマであるワケですが。一般的なマンガ作品では、今回描かれた景世の死は言ってみれば、メインキャラが死んだってコトで、ある意味それでハナシは済んでしまうかもしれません。ですが、本作にとってはソレだけで語られる事柄では無いのです。ひとりの"ひと"が亡くなった、そういう事なのです。

「死」というのは、言葉にすればたった一文字ですが、現実としては決して簡単に済まされる事柄ではありません。作中でも語られてますが、誰かが亡くなるというのはとても大きくて重たい出来事で、人の死には必ず何らかの理由・原因があり、そしてその死は他の人間に多かれ少なかれ影響を及ぼす――悲しみであったり時に怒りであったり――そういう感情を呼び起こすような事なのです。死はその人ひとりだけに訪れる事柄、いうなれば孤独な物事です。でも死が及ぼす影響は、その人のみで完結されるような事柄ではありません。誰かが死んでも、その後にもこの世はそのまま続くから、他の誰か・故人の身近な人間の生は続くから、だからこそ誰かの死は世界に遺る。死んだらその人はソコで終わり、それ以上の続きはありません。でもまわりの人にとってその死は終わりにはならず、むしろそこから何かが始まることさえある。「死と生」はそうやって人の世を繰り返し巡ってゆき、そうして世界は今日もまわっていく・・・・・・・・・・・・・・・・

景世の死によって、マキナとオーリの世界は大きく変わってしまいました。どんなに悲しくて辛くて、泣いて終わらせてしまいたいと思っていても、それでも彼らは"大切な人"のもういない世界をまた歩いていかなければならない。何故ならそれがこの世の真理だから。心から大切だったからこそ、ただ「死んだ」では決して割り切れるものではない、そういう死別を通して描かれる彼らの物語は、此処から改めて始まります。それがどのように紡がれるかについては続巻に譲りますが…生と死の循環によって成り立つ世のことわり、その世界の上に立つ生者と屍者・オーリとマキナ。登場人物の生き死にを「キャラのそれ」ではなく「人のそれ」として描き示すマンガ作品・屍姫。生きていくこと・死んでしまうこと、そんな重たいテーマ性を持ちながらそれでもエンターテイメントとしての魅力を損なわないゆえに、私はこのマンガが好きであり、実に面白い作品だと感じているのです。



▽自薦名場面 ― 198ページ

 「………ッ
  もういい、約束なんてもういいから、生きてよ景世……ッ!
  もう戦わなくてもいい………歩けなくなったらわたしが支える……

  だから 生きて

景世の死を前に、マキナの慟哭。……なんて言うんだろーなぁ、すでに死の側に居るマキナが、今まさに死に至ろうとしている景世に対して、「死なないで」と願う姿のなんと悲しくてやりきれないことか。屍姫としての自分が持つ存在理由を投げ捨ててまで彼に生きていてほしいと叫ぶ様に、本作の描く深さと重さ、誰かの死が身近な者に何をもたらすのかを思い知らせるような、そんな場面です。



第4巻>

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2008/02/26