感想・漫画編。

Q.E.D. …証明終了 16巻

著者:加藤元浩

出版元:月刊マガジンコミックス


理数系ミステリマンガ、第16巻。今回の収録2話はなんとなく、どちらとも”落ち着いた”感じのエピソードだな。

毎度の様に『サクラ サクラ』から。シリーズ全体としての位置づけでは、燈馬&水原コンビの関係って何なのか、ふたりは付き合っているのかどーなのか、という疑問への回答を示すエピソードですね。で、その答えってのが「まだ名前が付いてない」、だから説明はできないんだよというコトで落ち着いてる次第でして。まぁね、いまさらツッコム必要も無いくらいふたりの関係ってひと組のカップルそのものなんですけど、でも当人同士が「付き合ってるとか付き合ってないとか、そんてコトはどうだってイイだろ」、と思ってるんなら、ソレが本人達にとって何より正しい”答え”なんではないか、とも思わされるワケでして。ココで注目したいのが、59ページでの燈馬がしたという発言ですかね。コレ、受け取り方によっては、相手任せでどこか無責任な物言いにも見えますけど、ココで彼が言ってる・言おうとしている意味合いはそーじゃなくて、自分が彼女と付き合ってるのかどうかはお互いにとって重要なコトじゃなくて、普段いつも一緒に居るっていうたったソレだけのコト、でもソレを彼女が付き合ってると認識しているんならこの関係はそうなんでしょう、というコトなのではないかと。コレつまり、なんだかんだで燈馬も水原もまるで同じことを考えてるって、そーゆーコトなんですよね。ただ燈馬の側は、いちおうのカタチとして水原の考え=答えを尊重してそう発言した、その結果なんだと思います。そりゃハタから見てると確かにあいまいでハッキリしろよと言いたくなるトコもあるかもですが、でも互いへの意識の仕方としてはなかなか素敵な関係だとは感じてしまいますねー。つってもまぁ、もし「じゃあ水原の事が好きか?」と訊いたとしてテキトーな返答したらぶん殴ってやろうとは思う所存でゴザイマスが(笑)

次、『死者の涙』。このエピソードで燈馬が取った意外な行動について、作者の加藤さん自身はインタビューで「その状況が理屈と合ってないからそんな事をしただけで、別に彼が感情的になったワケでも以前と比べて成長したってワケでもない」と答えてるんですけどね。私も、燈馬が成長したとは別に思ってないんですが、ただシリーズ初期から比べて変化はしてきたと思うんですよ。今回みたいな衝動的な行動って、初期の彼だったらそういう感情にまかせて何かをするってコトは無かったんじゃないかなー、と。犯人特定のために自らアクションを起こすって事では、6巻より「青の密室」が前例としてありますが。あの時はあくまで計算の上での勝算ありきの賭けだったのに対し、今回のは行動した・してしまった後でつじつま合わせのために事を仕込んだという点で、似てるよーで結構違うんではないかと。昔はいつもロジックありきだった彼が、論理から外れて何かをしたという、コレは成長ではないけれど変化ではあると、私は思うワケです。



▽自薦名場面 ― 59ページ

 「水原さんの答える通りです」

上の本文でも取り上げてるんだし、本来そーゆートコからは外して選びたいんだけど、やっぱ今回はどうしてもコレを。この返答に含まれているニュアンス全てが、まさしく彼と彼女の”答え”なんだろーなぁ。



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2007/12/13