感想・漫画編。

Q.E.D. …証明終了 4巻

著者:加藤元浩

出版元:月刊マガジンコミックス


ミステリマンガ第4巻。収録2話ともに、殺人事件が一切無いという、シリーズを通して見てもワリと異色の内容であります。

さてハテそんなワケで、「ヒトを殺した殺された。さてトリックは何だ犯人は誰だ?」という、普通一般のミステリ作とは大きく異なり、そういった殺人事件ではない、純粋な(ある意味では異例的か?)ミステリの作劇・構成で内容が仕立てられているこの4巻。これこそがQEDというマンガ作品の本骨頂です。殺人事件の上で形作られるロジックや謎解きは、確かにミステリの基本要素といえましょう。だがしかし、何もヒトゴロシが起きなくても、ロジックや謎解きの面白さ、ミステリに乗っ取ったエンターテイメントの作劇はできる、いやむしろ、殺人事件にばかり傾向するのがミステリってワケではないハズ。この4巻ではそんな、ある意味での本当のミステリの面白さを、存分に読ませてくれます。やはりこのマンガ、最初は4巻までを読むのが正しい接し方。私自身、本作を布教するさいには、必ず1〜4巻をまとめて買って渡すことに決めてますからね(笑) むしろ、本作の面白さを本気で伝えるためには、4巻まで一気に読ませるのが義務とさえ思ってますから。イヤまぁそりゃ計1640円の出費は軽かぁねーケドよ。

さて、各話の感想。まず「1st,April,1999」。エイプリルフールが舞台の、騙しあいコンゲームを題材にしたお話ですね。この回、「事件があって、ソレを解決」という流れではまったく無く、純粋に「誰がウソで相手の上を取れるか?」に注力した内容なワケですが。確かにコレ、ミステリらしく無いといえばそうなんだけど、コンゲームについて『知的パズル』とゆー側面から見ると、ある意味ではミステリらしさがあるともいえるワケで。モノポールなんて小道具を持ち出してくるのもまた、理系要素あふれる本作の”らしさ”が出てますな。「モノポールなんてあるのか?」、「ソレ以前にエイプリルフールクラブ自体が存在するのか?」、という嘘と謎とが折り重なって、最初からオチまでなかなか目が離せません。うん、面白い。

続いて「ヤコブの階段」。人工生命の引き起こした不可解なパニックを、得た情報から理論立てて謎を解決していく、という実にミステリらしい過程で進んでいくお話。まーぶっちゃけ、事件発端となるMITのコンピュータへのハッキング行為や、そもそものシステムダウン事件の原因などで、ムリがあるとしか思えねー部分も多々見受けられちゃいますが。とりあえずツッコミどころに目をつぶれば、限定的な舞台設定の上でのSFっぽいストーリーとして、全体通して面白い内容ですな。ま、SFなんてハッタリ利かせてナンボだもんなー、タカが人工生命のセルプログラムが東京の交通システム食い荒らすなんてぇのも、これはコレでアリよの。ともかくも、面白いから良し。



▽自薦名場面 ― 133〜134ページ

 「ロキだけじゃないよ! 私達もいるんだから!
  3人で力合わせたらさ! きっとなんとかなるよ!」

 「楽観的だね〜」

 「いいんじゃないですか」

3人それぞれの掛け合い。ロキの呆れはもっともなれど、この明るさとソレに繋がる行動力こそが、可奈の”らしさ”だやね。無根拠だとしても、そういうポジティブさってのはとても良いコトだ。ま、このマンガは肝心の主人公がそーゆーのの対極にあるからな。ある意味バランス取れてるよキミら(笑)



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2005/06/10