感想・漫画編。

ONE PIECEワン ピース 40

著者:尾田栄一郎

出版元:ジャンプコミックス


海賊マンガ、ここで遂に40巻の大台に到着。刊行数では節目の数字だけど、物語はまだまだ途上、W7編・第2部エニエスロビーの戦い本格始動。そーいや「道力ドウリキ」って作品全体で結局このシリーズにしか使われてないなぁ。当初は、まぁいわゆる『ドラゴンボール』の戦闘力みたいなヤツで安直だなーと思ったけど、いま改めて読んでみて、こーゆう数値で実力差を明確化するのって単純に分かりやすいんだよね。本作はいままで懸賞額でソレを表現してたけど、今回の敵勢ってそーゆうの無いワケで、それで代用に道力ってのを唐突ながらも出してきたのかなぁと、レビュー用に再読して改めて感じた次第。

さてさて引き続き激動のエニエスロビーですが、この巻では個人的にキーとなるキャラが3人いる感じですかねー。先に挙げちゃうと、ルフィ、そげキング、そしてスパンダムのお三方。いやまぁ全体をちゃんと読むと他にも役割を持たされている登場人物はいますが、私の印象としては彼らが今巻での主軸を担っているよーな気がします。とゆーワケでそれぞれに着目してみましょーか。

まずスパンダム。まぁ敵キャラだしあんま好きでもないんで最初に片付けとこうかと(←正直すぎる) コイツはなんでしょ、フツーに小物悪役だなぁと。おのれの野心を満たすため、権力を手にしたいがためにロビンやフランキー、そしてCP9長官として部下であるルッチ達を利用する彼の描かれ方は、少年マンガとして実に真っ当に、ぶっ倒してくれと読者に思わせる典型的な悪役です。ただココで微妙にポイントになるのが、スパンダムの本心は別にして、彼が掲げるものはあくまで世界政府という後ろ盾を伴った"正義"であるという点でして。スパンダムは明らかに敵だし悪役だしやっつけるべき存在、なんだけど彼は作品世界の法の上ではあくまでも正義の側なんですよね。悪はルフィ達なワケです、実質上では。このへんの"在り方"は、今シリーズ、もっと言うと広義的には作品全体の主要点にもなってるんで注目しときましょ。

次、そげキングですか。いや、70ページで遂に判明してしまいましたね、まさか狙撃の王を名乗る彼がよもや元・麦わらの一味であるキャプテン・ウソップその人だったとは!!驚愕) 振り返るとサンジとか他の連中は凄いなぁ、どうしてそげキングがウソップの変装だと始めから見抜けたんだろう、やはりコレが断ち切ろうとも切れはしない仲間の絆というものなんでしょうか。……え、そーゆうのはもうイイって? あーあーハイハイ分かりましたよフツーにレビュー書きますよマジメにやりゃイイんだろ(←なんでヤサグレてんだ) 気を取り直して。そげキング改めウソップですが、彼の何気に凄いところがこの巻、オイモとカーシーの巨人2人組を説得して味方に付けてしまった場面にあると個人的に思っております。もとから私自身かなりウソップのことは"買って"いて、その理由がどのへんにあるのかってぇとソコにあるんですよね。ウソップって実は人を惹きつけるカリスマ性があるんですよ。違う表現をすると"器"とでも言いますか。このあたりの事は初登場した3〜5巻、特にキャプテン・クロとの対決でルフィが言ってましたが、彼はどこか人を惹きつける"モノ"を持ってるんですよね。ウソップは確かにウソつきだしヘナチョコだし戦闘も強くなくて決して格好いいキャラではありませんが、不思議と他人を魅了させる何かがあります。ソレがあるからこそ、実際ドリー&ブロギーを知っていたと言えど、基本的には敵であった彼の発言をオイモ達が聞き入れたんじゃないかと思うのですよ。赤の他人を説き伏せ味方に付ける・付けられる、それは器やカリスマ性を持つからこそ可能になるコトじゃーないかと。や、そーゆうカリスマ性で言えば一味の船長であるルフィこそが最高であるのは異論の無い所ですが、でもウソップのソレもまた決して劣るものじゃないと思います。だから私はウソップという人物を評価してるんですよねー。

そして最後、我らが本当の船長キャプテン・ルフィですか。なにぶん悩まない主人公である彼は、この大騒動でもあくまで、121ページのように「おれ達はロビンを奪い返しに来ただけだ!!!」と単純・純粋な理由でもって大暴れを繰り広げております。だがしかし、そんな彼もまったくの考え無しでいつも動いているワケではないというのが、ブルーノとの再戦の中で改めて描かれました。世界も政府も海軍も知ったことじゃない、けれどそういう連中が自分達を、仲間を苦しめるのなら船長の自分がみんなを守らなくちゃいけない。みんなを守れるチカラを自分が持たなくちゃいけない。青キジとの遭遇で一味の危機を味わったルフィが思い知ったのは、一船の長としておのれに必要な"もの"。それの答えがこの巻、本格的な自己強化技である「ギア」としてとうとう描かれるに至りました。主人公のパワーアップは少年マンガの王道。ソレを求め、手に入れ、披露する作劇もやはり王道。本作ではいわゆる修行シーンを完全にすっ飛ばして経緯と結果だけを見せているため、マンガとしては言ってしまえば片手落ちの作劇展開ではありますが…それでもやはり、どうしてそのチカラを欲したのか、その経緯を描き示す強い意志を見せたシーン、それだけでも充分だと思わせてしまうパワーがこの作品にはありますねぇ。



▽自薦名場面 ― 199〜201ページ

 「――ダメだ。………おれはこんなんじゃダメだ…
  ………"青キジ"に負けた時おれは思ったんだ………この先の海にまたこんな強ェ奴が現れるんなら、おれはもっと強くならなくちゃ仲間を守れねェ………!!
  …おれには強くなんかなくたって、一緒にいて欲しい仲間がいるから………!! おれが誰よりも強くならなきゃ、そいつらをみんな失っちまう!!!」

 「では…どうする」

 「力いっぱい戦う方法を考えた…誰も失わねェ様に………!!
  誰も遠くへ行かねェ様に…」

 (中略)

 「お前はもう…おれについて来れねェぞ…         「何!?」
  おれの技はみんな…一段階進化する。ギア・セカンド

てなワケで今巻の名場面はココ、麦わら海賊団・船長の新たなる決意と奥の手!! 青キジに敗北して一味を窮地に立たせ、その不甲斐なさがウソップの退団やロビンの離反までもを招いたのなら、それを二度と味わわないようにするために必要なのは自分自身の強さ。大切な仲間を守るために、その仲間を奪おうとする敵を退けるために、そのために何より無くてはならないモノは、一味を預かる船長としての確かなチカラだと知ったモンキー・D・ルフィ。闇雲なだけではどうにもならない苦難を思い知り、麦わらの一味の長は今こそ船長として強い思いと共に再び立ち上がる!



第41巻>

<第39巻


<<コミックレビュー



2010/04/12