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感想・漫画編。

ONE PIECEワン ピース 35

著者:尾田栄一郎

出版元:ジャンプコミックス


海賊マンガの35巻。W7編、開始2冊目から早々に、エピソード中でも最重要の部類に入るイベントが勃発。キャラクターでは解体屋でサイボーグのフランキーが初登場。よもやこんな登場の仕方をしたヤツが、ホント、紆余曲折を経て麦わらの一味に加わることになるとは。

宣告されたメリー号の復旧不可能という事実、フランキーとの初遭遇とぶつかり合い、そしてアイスバーグ氏殺人未遂事件と、立て続けに事件が巻き起こるこの巻ですが、上記のとーりその中で最も重大な事件と言えばやはり、ウソップの一味脱退宣言でしょうね。メリー号への強すぎる想いゆえに、ルフィ、すなわち船長キャプテンが決めた船の乗り換えに反抗し、それらの結末として一味からの離脱までを決めてしまった麦わらの一味・狙撃手。このやり取りが描かれた331話「大喧嘩」は、まさにそう名付ける他に無いサブタイトルだと思います。言うなれば、本作では主にそうして描かれてきた戦闘としてのカタチではない、信念同士のぶつかりあいが繰り広げられた展開と言いますか。

双方の立場から読み解いていきましょーか。まずルフィ。彼自身も、船への強い想いがあったからこそ当初はガレーラカンパニーの査定に反抗を示しながら、それでも最後には一船の船長としてメリー号との別れを決意しました。どれだけこの船との旅を願っていようとも、船舶のプロ、それも誰あろう超一流の船大工がメリー号の死期を見定めたというのなら、一船・一味を責任持って預かり導く者として苦渋の決断をした、それがルフィの行いです。「お前は船大工じゃねェだろう」 そう、人間を診察できる船医チョッパーはいても、船の診断ができる人間はいないから、だからプロにソレを委ねた。そしてそのプロが船は直せないと判断したのなら、その言葉に対する決断を示さなければならない。それが船長。「これはおれがきめた事だ」 船の行き先を決める権利を持つ者、一味の動向を定める権限を持つ者、船の中で起こること全てに決断する義務を持つ者、それが船長。海賊団・麦わらの一味船長キャプテンがルフィである以上、その決定に部下であるウソップが反論する権利は無いのです。「新しい船を手に入れて…この先の海へおれ達は進む」 仲間との不本意な別れ――それはウソップであり、またメリー号とでもある――がどれほど辛いものだとしても、逆に別れを決意したからこそ、ルフィはまだ先へと突き進まなければならない。何故ならソレが果たさなければならない"けじめ"だから。こんなところで挫けようものなら、それこそ「お前は海賊王になる男だもんな」と言ってまで袂を分かった彼への侮辱に他ならないのだから。どんな艱難辛苦がその道に立ちふさがろうとも、その全てと向き合い、決定・決断の全てを果たす義務を負う者、それが船長キャプテンという肩書きなのです。

では、その船長キャプテンに歯向かい、果てには一味との離別まで宣言した・してしまったウソップは間違っているのか。私は、一概に彼のみに非があるとは思っていません。「職人の立場をいい事に所詮は他人の船をあっさり見限るような…」 ウソップは船大工ではありません、だから彼が船の審議を図るのは誤っています。でもその一方で328話、ガレーラの職人たちが示したメリー号への冷淡な見切りの態度、それは確かに一方的に過ぎると感じてしまう面も、無くはないところでした。プロだからこその冷静な観察眼、でもそれはひるがえせば、他人の船に対する勝手な言い草とも言えます。「誰でもおめェみたいに前ばっかり向いて…」 決して引け目を感じているワケではなく、ある種の事実としてルフィの決断に反発を覚えたゆえの発言。ルフィだって軽々しくこの決断をしたワケではないけれど、でも途中経過がすっぽ抜けるカタチになってしまったウソップには、どうしても一方的な判断に見えてしまったのでしょう。「お前は海賊王になる男だもんな」 ウソップの信念をなかば空恐ろしく感じてさえしまうのがこのセリフで、どれほどこの船長キャプテンに反感を覚えようとも、いち海賊としてやがてルフィがその"頂点"へ至ることに対してみじんも疑っていないという。どれだけ意見が食い違ってもたとえ見損なっても、それでもルフィという存在を"信じて"いられるという…どうあれば其処までに在れるんだろうか? ウソップの示した態度は、船への思い入れが強すぎるゆえの面が確かに強く、それゆえ正しいとは言えない判断をしている部分は多々あります。でも、そうある中に確かで強固な信念を持ってルフィとやりあう姿には、一概に間違っていると断言できない。彼なりの正義があるのなら、ソレを非難することは私にはできかねます。

船長という立場、一味の部下という立場。お互いそれぞれの正義で判断したこと、それがぶつかり合い食い違い、その結果が別離となってしまった、それがこの巻の展開です。船長キャプテンの責任として決断を示したルフィは正しいと思います、でもソレに反抗したウソップにだって彼なりの信念があったのだから、それが間違っているとは言い難い。ただ信念がすれ違い、それがあの結果を生んでしまった、それがこの「大喧嘩」だったのではないか、と。にしてもなー、これだけの衝突を目前にしながら、ルフィ・ウソップそれぞれの言い分に何ひとつとしてクチを挟まず、黙って全てを見届けたゾロの態度、どれだけ心力を強く持てば其処までできるんでしょーかね?! チョット凄まじいってぐらいのレベルだよ、マジで。124ページのセリフとか、芯が強いなんて言葉じゃ片づかないもんなー。

ウソップの離脱、いまだ戻らないロビンの行方、アイスバーグ襲撃の緊急事態、そして麦わら・フランキー・ガレーラ職人の三つ巴… 激動が重なるW7編、コレでまだまだプロローグの最中です。

▽自薦名場面 ― 123ページ

 重い…!!!!

ウソップの決闘を受け、彼を確かに打ち負かし、そして別れを告げたその後にもれ出た言葉、それがこのひと言。きっとこの時ルフィは、今までがむしゃらに無邪気に追い続けてきた海賊王という"道"に対して、初めて本物の苦難を思い知ったんじゃないかなぁ。海賊王への道、それは疑いようも無く覇道。それを極めようというのなら、こうして切り捨てなければならない物事なんて幾つもある。それはいつか"鷹の目"が残した、「ただならぬ険しき道ぞ」という言葉のごとくに。だがソレでも、彼はこの重みに負けてはならない。そんな事があれば、何のためにウソップの決闘を受けたのか。何のためにウソップを下したというのか。それゆえに、この決断は、この道は、この別れは、そう呟く他に無いほどの辛さを秘めているのでしょう。



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2008/05/16