感想・漫画編。

ONE PIECEワン ピース 11巻

著者:尾田栄一郎

出版元:ジャンプコミックス


海賊マンガ、第11巻。アーロンパーク編が終了、いよいよ東の海イーストブルー最後のイベント・ローグタウン編に突入。まぁローグタウン編っつっても、エピソードとしてはかなり短いんだけど。

さて、アーロンパーク編。前々から言ってる(書いてる?)通り、このエピソードの”主役”はナミだと、私は思って読んでるワケですけど。今回の結末は、まさしくナミが救われるまでを描いて終わったエピソードだと思います。

イヤね、この「救う・救われる」って様を物語で描くの、個人的には周囲が考える以上に難しいことだと思うのですよ。たとえばゲームのRPGなんかで良くある、「世界を救う」ってヤツ。観たままの上では確かに、その世界の危機を取り除いて平和をもたらしたりすることで、”ソレ”を描いてはいるんですが…実質的には、「救う」とゆーよりも「護る」と言った方が、ニュアンスとして正しいケースが多いんですよね。どこの文章だか忘れたけど、「人間なんて、一生費やして1人か2人救えるか・救えないか程度の存在。それは創作の世界でも似たようなもので、物語でも”誰かを救う”ストーリーを描くのは、非常に困難なものだ」、ってのがありまして。本当に、「救う」のを描くのは、難しいことだと思います。

でも今回のコレは、9巻で”全て”を失いかけて絶望に落ち込んでいたナミを、ルフィ達が代わりになって護りきり、同時に彼女が囚われていた数多の問題を取り除き、現在から未来までのあらゆる憂いから解放させてみせた、とゆー意味で、紛れもなくナミが救われた瞬間を描いて見せたと言えるのではなかろーか、と。101ページのセリフと笑顔なんて、彼女が正真正銘に救われなければ、出せないモノだと思いますもの。ナミを救い、その島の住民すべてを解放させ、今また”2人目”を海賊として・・・・・船に乗せ、メリー号は次なる島を目指す。さぁ、ゆくは「東」の最後の舞台、大海賊時代が幕を開けた場所!!

――てなワケでローグタウン編ですが。この回は、小説版やアニメ版の方が全体のまとまりやエピソードの描かれ方がシッカリしているため、実は原作マンガのがイチバン完成度は低いと思ってたり(苦笑) まー、原作は色々な”帳尻合わせ”があったから、どーにも致し方ない部分が強いんですけどねぇ。個人的にもっとも惜しいと思ってるのが、『子連れのダディ』が未登場で終わってしまったトコ。ウソップが”先”を目指すのを描くには、特に欠かせない話なんだけどなー。アニメ版も良いけれど、小説版の方が私には上かね。麦わら海賊団の5人全員が、いかなる心境でもって偉大なる航路グランドラインを目指すことになるのか、それがシッカリたっぷり描かれてます。番外な紹介だけど、実はかなりオススメ。



▽自薦名場面 ― 102ページ

 「あれ? ゲンさん風車どうしたの?」

 「フフ…もう必要あるまい」

旅立つナミを見送る”家族”のやりとり。本当は次ページの内容を含めて成り立つ場面なんですが、まぁココはふたりの会話だけでその”中身”を味わおう、と。どうしても笑ってくれない、その子を笑わせるための「道具」、それはもう必要ではなくなったから。そうですねゲンさん、あなたの”娘”はもう、ムリに笑わせなくても笑顔でいられるようになりましたよね。



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2006/01/13