感想・漫画編。

ONE PIECEワン ピース 9巻

著者:尾田栄一郎

出版元:ジャンプコミックス


海賊マンガ9巻。アーロンパーク編の、実質的なメインの内容ですな。あぁもう、いっそのこと最初に書いておきましょうかね。私はこの巻で泣きました。

当方、昔っから涙腺の閉まりが固いタチなため、物事に感動を覚えたとしてもまず泣いたりすることが無いとゆー人間でして。個人的にはこの性質、どっちかっつったら損してるよなー、とすら思っていたりするのですが。こんな私でさえ、ONE PIECE第9巻、このクライマックスのシーンでは目頭が熱くなりました。つーかなります。過去に何度となく読み返し続け、今回またレビューのためにと再読したときでさえ、目元に浮かぶモノがありました。滅多にどころか、まず泣くことの無いオレをして”こう”させる、今巻のストーリー。(もちろん”それだけ”じゃあないけど、)私はだからこそ本作が好きであり、数あるマンガの中でも一級品扱いとしておきたいほどの価値を見いだしているのです。本誌連載のときはそーでも無かったんですけどねー。コミックスで一気に読むと、ねー。

アーロンパーク編の”スポットキャラクター”は、言うまでも無くナミその人ですが。この9巻においては、紛れも無く彼女こそが”主役”。先行き見えない事態に翻弄される麦わら海賊団の面々、それでも愚直に「ナミは仲間だ」と叫ぶルフィ、全ての元凶であり『外道』という言葉ですら不足に思えてしまうほどのアーロンなどなど、多くのキャラがドラマを脹らませていますが、あくまでその中心にいるのはナミ。彼女の、過去・現在・未来を描いているのが、この巻の内容です。そんななかでも過去のエピソード、そこでの中心人物であるベルメールさんの生き様は、あらゆる意味で既刊中の最高峰。悲劇そのものの結末ではありますが、それでも彼女の娘達に対しての在り方や示していたモノはあまりにも貴く、気高くさえあったと思います。

といったワケで、残りの”語り”は自薦名場面へ。この巻についての感想、個人的にはココに集約してるのでねー。先に忠告しとくケド、今回はマジで長いから。



▽自薦名場面 ― 197〜201ページ

 「どきなさい!!! ナミ!!!!」

 「いくぞみんな!!!」 「勝てなくてもおれ達の意地を見せてやる!!!」

 「……  ――アーロン…!!!
  アーロン!!! アーロン!!! アーロン!!!!

  !  ルフィ…!!

  なによ…!! 何も知らないくせに…!!!」

 「うん。知らねェ」

 「あんたには関係ないから…!! 島から出てけって……!! 言ったでしょう!!?」

 「ああ。言われた」

 「……………!!!
  ルフィ……

  助けて…」

 「――――当たり前だ!!!!

ゲンさんの一喝をうけたその瞬間、ナミはそれまで、8年もの歳月をかけて守ったもの、守れると信じていたハズの何もかもを失った。正真正銘、自分にとっての”全て”を。この結末を導いたあの男があまりにも憎くて、それでももう何ひとつできやしない自分自身があまりにも悔しくて、彼女はただ、烙印のようなタトゥーを腕ごと傷つける。それを止めたのはルフィ。彼は一切を、唯一の”母親”が命と引き替えに願った娘達の幸福も、わずか10歳の少女が誓った”戦い”への決意も、何もかもを知らない。こいつは無関係だ。そんなことは分かっている。それでも彼女は、もう泣かないと決めたはずの涙を流してまで、彼に言った。「助けて」と。

それは…どれほどの思いで絞り出した言葉だったろう。ナミはきっとこの時、”そこから先”の期待は何も抱いていなかったんだと思う。だって、ルフィは完全に無関係なのだから。それでも、ただ言う他に無かったその一言は、どれほどの無力さと悔しさの上にあったことか。これは頼みや願いですらない。本当に、追いつめられたすえ言わずにいられなかった、そんな魂から絞り出したような『言葉』。

とまぁ、そんな崖っぷちから一気に解放させてくれるルフィの一言は、確かにカタルシスそのものなんですけどね。やっぱこの一連のシーンは、ナミのあの一言に全てが集約してますよ。ホントもう、あのとき彼女が抱えた悔しさを思うと、マジで目から何かこぼれそうになるもの! だから、最後のルフィのセリフはホントは切っちゃっても良かったけど、とりあえず場面のキリの良さを考慮して、な。さぁどん底はここまで、いざ逆襲の時は来たれり、ってな感じで次巻へ!!



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2005/10/29