感想・漫画編。

鋼の錬金術師 7巻

著者:荒川弘

出版元:ガンガンコミックス


錬金術マンガの7巻目。ダブリスはデビルズネストにて、エルリック兄弟を中心に、師匠夫妻・酒場の連中・軍部の編成隊などが集い、小さくも大きな背景を持つ騒動が巻き起こります。

そんな次第で7巻、大規模なストーリー展開こそさほどありませんが、物語の謎が幾つか明かされ、巻全体で見ても怒濤のような描写が連発する、何気にかなり読み応えのある内容になっています。まず前巻ラストに出てきたウロボロスの印を持つ男・グリードの正体が、人工的に造り出されたヒトならざる存在、人造人間ホムンクルスだとゆーコトが明かされて、ソコを基軸として7巻全体のストーリーも進展していってます。そんでまたこのグリードの描かれ方が、ドタマをぶち壊されても肉体を再生してアッサリと蘇り、肉体を鋼鉄のように硬化させる「最強の盾」なる特殊能力まで持つとゆー、トンデモっぷりで。特に砕かれた頭部を再生させる64〜67ページの描写なんかは、「これで一回死亡だ」なんてゆーありえないセリフと相まって、彼=人造人間ホムンクルスなる存在の特異さをワンシーンだけで存分に語ってみせる、実に効果的なシーンと言えます。まぁいちおう、同じホムンクルスであるラストなんかも以前に、腹をぶち抜かれても生きてたりなどしてましたけど、やはり今回のこの、グリードの再生シーンのインパクトにはスッカリ霞んでしまいますねー。彼の強欲/グリードな性格は、まぁそれなりに魅力を持たせた描かれ方とも思いますが、やはりそれだけだとタダの酔狂野郎にしかなりかねませんからねぇ、ソコにこのインパクトあるシーンが、より一層の面白味を与えております。

また他にも、今巻は後半のバトルシーンがなかなかの見物でして。錬金術を駆使するエドと「最強の盾」を駆使するグリードとのトリッキーな格闘戦、豪腕の錬金術師・アームストロング少佐と猛牛の合成獣キメラ人間・ロアとの重量感あふれるパワーバトルに、あらゆる敵を超絶的な剣技で完全圧倒するブラッドレイ大総統の高速戦闘描写と、いずれも見所たっぷりのバトルばかり。中でエドの対決は、敵の硬化能力の”タネ”を人体に含まれる炭素成分と見破って逆転する展開などは、しばらくぶりに本作の、錬金術を構成しているオカルト要素と科学要素が発揮されていて面白いです。またさらにブラッドレイ大総統の戦闘シーンでは、あれだけエドが苦戦したグリードをまるっきり完封してみせるという、その強さとその超絶的な殺陣描写。そんな、まさに鬼神とでも言うべきほどの圧倒感と、ラストページで明かされる大総統の正体、そしてその「最強」の由縁、と。なんかもう、ラスト1話のこのオッサンの活躍だけでこの巻の見所を全部かっさらうかのような存在感は、チョット凄まじいまでのレベルですなー(笑) オイシイとこ持っていきながら、なおかつ次へのヒキまで兼ねてますしねぇ。もーホント、凄まじいのひと言に尽きるわー。



▽自薦名場面 ― 177〜178ページ

 「私はね、君のような最強の盾を持っている訳でも、全てを貫く最強の矛を持っている訳でもない。そんな私がどうやって弾丸飛び交う戦場を生き抜き、功績をたて、今の地位にいるか……わかるかね?

 君に最強の盾があるように、私には最強の眼があるのだよ。

 ――さてグリード君。君は、何回殺せば死ぬのかね?

そんなワケで7巻の本編ラストシーンより。いま遂に明らかにされたキング・ブラッドレイの正体、彼の持つ最強=あらゆる物・状況を見抜く「王の眼」の姿。これまでの展開からは予想だにしなかった大総統の正体も衝撃的ではあるケド、それを明かしたこの場面の異様なほどの、そしてセリフの最後「何回殺せば死ぬ?」というセリフの不可思議な中にある凄まじいまでの迫力が、より一層に全体の印象を強めてるんだよねー。こんなシーンで終わるんだもんな、ホントに予断を許さぬラストだわー。



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2007/05/22