感想・漫画編。

鋼の錬金術師 3巻

著者:荒川弘

出版元:ガンガンコミックス


錬金術マンガの3巻。ウィンリィとピナコばっちゃんが初登場。つーか、よくよく読むとこのふたり、この巻のなかでは9話にしか出てきてないんだな。立場的にはけっこう大切な立ち位置のキャラなのに。

3巻の中身は、なんと言いますか、どんどんドラマが進行していってる気分ですね。10話では賢者の石の真相に触れ、11話ではその真実を確かめるためにあえて危険を冒し、12話は戦いの先にこれまで影で暗躍していた”敵”と対面する、と。9話は大きなストーリーの進行とはやや外れたエピソードになってますけど、エルリック兄弟と彼らの”家族”とがふれあう様子を描いた回ってことで、大きな物語を描く上ではやはり欠かせないエピソードでしょう。久しぶりに戻った故郷の村・リゼンブールでは”家族”との平穏に触れ、賢者の石の秘密を暴こうと意気込んだものの残酷な真実に打ちのめされ、「真実の奥の更なる真実」を知るために改めて立ち上がり、魂のみの存在という不確かな在り方に兄弟がそれぞれの苦悩を抱く。各話毎でも全体を通してでも、立て続けに浮き沈みを繰り返して広げられるドラマは、やはり目を離せないままに進行していってますねー。

また他の観点でも、それぞれ9・10話だと、機械鎧オートメイルの仕組みにそれとなく触れてみたり、錬金術師が自分たちの研究書をどう管理しているかを見せたりと、ストーリーの流れに沿うようにして各種世界設定の解説を行っていたりで、なかなか巧みに読者へ向けて情報を流していってる感じがありますね。物語を進めながら端々で設定解説をやるのは、連載マンガならどんな作品でもやることなんですけど、鋼の場合は特に、ストーリー進行をほとんど阻害せずにすんなり盛り込んでるって印象が強いんだよなぁ。1巻のレビューでも同じこと言ってるけど、やっぱ本作はそーゆう作劇のまとめ方が上手いよなー。

それにしても…短編エピソードの外伝、コレはもう10巻まで重ねた現在ではやりようのないお話だねぇ。イヤもう色んなイミで。特に実況やった人とか。決闘の許可出したエラい人とか。



▽自薦名場面 ― 46〜48ページ

 「ボウズども、たまにはご飯食べに帰っておいでよ」

 (中略)

 「迎えてくれる家族… 帰るべき場所があるというのは、幸せな事だな」

 「へっ。オレたちゃ旅から旅への根無し草だよ」

 「エド! アル!
  いってらっさい」

 「――おう!」

兄弟の出発と、それを見送る人達。帰る場所、いつでも帰って良い場所があるから、また旅を続けていける。少佐のセリフじゃないけど、待っていてくれる存在があるってのは、ホントいつもは気付きにくいけれど、でもとても幸福なことなんだよねー。



第4巻>

<第2巻


<<コミックレビュー



2005/09/28