感想・漫画編。
鋼の錬金術師 2巻
著者:荒川弘
出版元:ガンガンコミックス
錬金術マンガ第2巻。東方・中央合わせた軍部サイドの面々やら、傷の男やら、サブレギュラーが一気に充実してきましたな。 とにかく2巻、端的に評するならさっそく見所が多い巻です。まずは真ん中の傷の男戦。これまでの数話中ではワリと強キャラとして描かれていたエルリック兄弟が、ここではほとんど完全敗北。エドに至ってはあわや死亡か?、という状況にまで陥った回です。まぁフツーの読者視点で考えたら、7話目で主役が死ぬわきゃ無いとゆーマンガ的な常識が働くから、こんな序盤で殺られやしねぇだろ、と冷静に読めるワケですが(笑) でもこの、まるで圧倒的な強さで迫ってきた傷の男とのバトルは、ワリとメリハリが利いてて面白い。次は8話の、ドクターマルコー&賢者の石・不完全品の回。シリーズ序盤だけ読むと、おおよそ「物語のゴール地点的な位置づけ」として賢者の石が扱われていますが、早々にしてソレ(に限りなく近いアイテム)が登場、さらにはそこに近づくチャンスまで手に入る、と。この展開の早さにはどこか緊張感が持続しているような面もあって、とても楽しく作品を読み進められます。そもそもが本作、月刊連載としても1話ごとのページ数が多めなんですよね。それゆえに描き出せる内容の濃さ、なのかなぁ。 そしてそして。収録上ではアタマに来るエピソードですが、第5話「錬金術師の苦悩」。シリーズ序盤ながら、シリーズ中でも屈指の"重い"エピソードがこれ。作品テーマのひとつでもある「人間が犯す過ち、あるいは業」を軸に、それに翻弄されていくエルリック兄弟の苦悩をたった1話で描いてくれちまうという、この濃密さときたらもう。序盤でもうこれだけの話を持ち出せるんだものなぁ、そりゃ幅広い年代から人気出ますわ、このマンガ。 ラストに、ひとつどーでもイイ話を。カバー裏の背表紙イラストですが、一連のコミックス中で唯一タッカーさんだけ地獄行きなんですよね。ま、地獄に堕ちて当然なだけのコトやったんだけど……ぶっちゃけ他にも地獄堕ちてしかるべき死亡キャラっている気がするのだがソコんトコどーか。実の娘を実験動物扱いしやがった罪は重いとか、そーゆう話ですかね。やっぱどーでもイイ話でしたね。そーですね。
「はは… ボロボロだな、オレ達。カッコ悪いったらありゃしねぇ」 「――でも、生きてる」 「うん。 生きてる」 傷の男との戦いが終わったあとでのエルリック兄弟の会話。つい先程の事でも、そして「旅の始まり」からでも、互いが生きていて心底良かったと思えるような出来事ばかりがあったからこそ、いま生きていることを静かに実感できる。そんな心情が、最後のコマの穏やかな表情から滲み出ているような感じで、地味に好きな場面です。 |
2005/03/19