感想・漫画編。

金色こんじきのガッシュ!! 9巻

著者:雷句誠

出版元:少年サンデーコミックス


魔物の子供達のバトルマンガ、いよいよ9巻目。ロップス&アポロ対ゼオン&デュフォーと、ガッシュ&清麿対バランシャ&ガルザの対決カード2つ、あとはチョットしたエピソードを挟んだ内容。生き残りの魔物の数もここで、半数を割る40名となりましたな。

てなワケで、今巻のメインはまずゼオンその人でしょうとも。イギリス編の5巻ラストで顔出しだけは済んでいた謎のキャラが、アポロ達の敗北とゆー衝撃的な出来事と共に、その実態が明らかになったワケですが。ゼオン当人とそのパートナーの名前、ガッシュと似てるのは顔だけでなく使う術まで同系統、そして想像通りの冷酷無比な人物像と、想像を遥かに上回る驚異的な強さetc…。以前には清麿たちとも引き分けたほどの実力を持つアポロでさえ、彼らの前では悪い冗談のようにまったく歯が立たず、最大呪文すらも初歩のザケル一発で打ち破られるという、あまりにも一方的な戦い。その凄まじいまでの強さは、2話足らずの描写のみでも充分以上に彼らの恐ろしさを知らしめ、同時にやがて来るだろう彼らとガッシュ&清麿との激烈なまでの決戦模様を早くも期待させてくれると言えます。ま、このあと彼らが再登場するのにはコミックス10巻分以上のブランクを必要とするワケですが(苦笑)、でもこの初出があるからこそ、長いブランクを経てでも彼らの恐ろしさだけは衰えることがないですからねー。つくづく、記憶に植え付けられる脅威の存在、といった感がゼオンたちには残りますな。

んで、9巻もう一方のポイントは清麿の描写ですかねー。いやホント変わりましたねーコイツ。以前から徐々にそーゆー傾向に変わりだしていたのはありましたが、バランシャ戦や巻末2話での様子は、まさに将来を期待する弟を見守り・鍛えていく兄貴分そのもの。特に169ページなんて、いつの間にこんなイイ微笑み方をするようになったのやら、と軽い驚きを感じるほどですな。ガッシュを「やさしい王様」へと導く傍ら、彼自身も我知らず「やさしい男」へとグングン成長していってるのが実に良く伝わる、そんな笑顔だと言えますねー。

しかしまぁ、それはソレとして合間に挟んだギャグ回のノリと来たら、つくづく雷句さんはギャグマンガ描くのがホントは好きなんだなー、と(笑) てゆーか、あんなヒーロー()とあんなマスコットキャラ()が流行るこの作品世界はやはり物理法則からして何か違っている気がしないでもないのですがどーでしょう。あとギャグシーンであげれば、176〜177ページがイチバン好きだったり。つーか石版をブリでぶっ叩いてそれこそ何がしたいんだ高嶺清麿。



▽自薦名場面 ― 59〜60ページ

 「ロップスの…ロップスの住む世界の王を、あんな奴にさせないでくれ!!」

 「ああ…必ず!」

清麿へ、たったひとつ願いを託すアポロ。彼が涙を流した理由は、ゼオンに完膚無きまで負けたのが悔しいんではなく、ロップスを王様にする約束を果たせなかったのが無念だったワケでもなく、ただ単に大切な友達ともう二度と会えないことが悲しくて仕方無かった、ただそれだけだったんだろーなぁ。会社を継ぐ前に楽しんでいたアポロの自由な旅は、彼にとってはかけがいの無い最後の自由を満喫するための時間…だったはずなのに、それを本が燃えたことで完全に手放してしまったワケだから。ロップスとの別れは、それだけ彼にとって強いショックだったんでしょう。さぁ清麿よ、キミが託された無念と願いは、”必ず”果たさねばならないほどに重たいぞ。



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2006/10/27