感想・漫画編。

D.Gray-manディー・グレイマン 8巻

著者:星野桂

出版元:ジャンプコミックス


エクソシストのバトルマンガ8巻。今巻は主人公の出番がほとんど無く(笑)、リナリーをメインにレベル3・エシとの激戦を描いた、まぁいわゆるバトル回。でもそのワリに、カバーイラストはバク支部長とフォーなんだよなぁ。まぁリナリーの"ピン"は3巻でもうやっちゃってるからねぇ。あと別で、この巻はオマケの談話室コーナーがチョット面白い。「喋る屍になるんだ」って、どんだけだアレン(笑)

そんなワケで、全体的にバトってるのが中心なもんですから、ソレほど強いて目を惹くトコロは無いなー、と。リナリーの決死の戦闘、ラビの仲間とに生じた小さな亀裂、戦いの果ての大きな代償などなど、物語としては相変わらずの厳しくも読みごたえあるストーリー展開を繰り広げてくれてますが、その一方で、さほど強く訴えかけるよーな部分はあまり見受けられないとゆーか。物語的にはいちおう、リナリーメインで重要ポイントを抑えてるんですけどね。イノセンスの「異例」だとか、あと髪燃えてベリーショートになっちゃったしな。…いやぁ、やっぱ彼女はロング(まぁツーテールが基本なんだが)の方が断然似合ってたよなー。166ページのオマケページでは、「あぁ、ショート化してもかわいいカットはまだ用意できるのか」と一安心(?)しましたが、でもやっぱロングだった頃の方が良かったよなぁ。アニタさんだって別れ際に惜しんだのも、そりゃ頷けるってモノですよ(←何か違う)

戯れ言はそろそろ止めときましょーかねー。ともあれ今巻のメインはリナリーです。世界の"人々"のためではなく、教団の中の身近な人々、仲間のため、ただソレだけを大事に想ってそのためにアクマと戦うと言うのが彼女の真実。自分にとっての"世界"とは、実際の大地に住まう大多数からなるソレではなく、手の届く範囲にいる顔を知っている仲間という囲い、ソレこそが大切な"セカイ"だという。あえて明言はされてませんが、彼女の本心の中ではきっと、今なおアクマの脅威にさらされる何処かの誰かがどうなろうと正直な所では構わなくて、以前のスーマンのようにすぐ側の仲間が死んでしまうことの方が、比べ物にならないほど苦しくて悲しい出来事なのでしょう。それはある意味で、彼女自身が感じているように「ひどい奴」なのかもしれないし、エクソシスト達に課せられた宿命を考えると間違いなのかもしれませんが、でも、ひとりの少女の(本来の意味での)世界観としてはあまりにも等身大な感情じゃないかとも思うワケですよ。顔も名前も知らない誰かのためには戦えない、身近な仲間だけが大切だから、そんな大切な人達を守るために戦うんだというリナリーの真意。なにか崇高な意思があって世界を救おうとしているワケじゃない、ほんのささいな事のために世界を救う戦いに身を投じている、そんな16才の少女のありのままの姿が、この激闘を通して描かれていきます。


▽自薦名場面 ― 81〜82ページ

 「壊れかけ…て…るの」

 「絶望してはいけない。
  藻掻いてるのを殺すがイイ

 「――無…理よ
  お前…は 先に、壊れる…もの」

リナリーVSレベル3・エシの中からワンシーン。「もがく」って字の表記だけど、なんか常用漢字じゃないらしくて、作中で使用してる文字は使えなかった。上の表記は当て字だそーな。ともあれ、今巻はいつも以上に、シーンのひと幕での表情の描かれ方に目を惹く場面がいくつもあるんだけど、その中で迷って選んだのがこの場面。なんというか、凄絶な覚悟を秘めたその中に美しさすら思わせる表情に、どこか引き込まれる感を覚えます。



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2008/02/14