感想・漫画編。

D.Gray-manディー・グレイマン 7巻

著者:星野桂

出版元:ジャンプコミックス


エクソシストのバトルマンガ、7巻目。アレンサイドは黒の教団・アジア支部で、リナリーたちクロス部隊サイドは洋上にてレベル3・エシと戦闘、と2つの視点でストーリー進行。てな感じで、アジア支部の面々が初登場、ミランダさんがエクソシストとして再登場。てか、コレまではワリと○○編みたいにひと言で説明できる展開が多かったけど、この巻はそーゆーのがチョイとしにくいな。

ではまぁ、アレンサイドから。前巻ラストからのヒキで、なんつーか「やっぱりアレンは生きてた」ってのはまぁぶっちゃけ主人公補正ってコトで片づいちゃうんですけど(笑)、彼の場合そんなことよりも重大なのはそのあとの描写、殺されたと思ってもまだ生きていた自分はこれからどう”先”を行くのか、とゆー流れにあります。今回の場合は挫折とは違うんですけど、でもとりあえず、いちど挫折を経験した主人公がどのようにして再び立ちあがるのか、その様を描くのはどんな物語でも醍醐味となる展開です。そんな中で本作の主人公アレン・ウォーカーは、抗うことのできない本物の死を実感して、神がスーマンに科した無慈悲な咎を目の当たりにして、アクマと戦うすべである左腕を失って、それでもまだ自分が自信に誓ったその意志のまま戦いの道を歩み続けることを止めようとしなかった。

いやー…連載で読んだ当初から、この時のアレンの様は凄まじかったですな。ソレはなんつーのか、肯定的な意味でも否定的な意味でも。敗れ去った主人公がそれでもまだ諦めずに戦い続けようとするってのは、あるイミお決まりのパターンなんですけど、アレンの場合だと実はそーゆーのじゃなくて、戦いのみが自分の生きていける道なんだ、と叫んだワケで。もうね、近来まれに見る勢いですよ、こんだけ”間違って”る少年マンガの主人公は。生きるために戦うんじゃなく、戦うために生きようするだとか、こんだけマイナス方向に前向きなキャラしばらく見た覚えが無ぇ。前々から彼の中にある「危うい意志」はいくらか見えてはいましたが、今回はソレが一挙に浮き彫りになった感じですな。ただその上で、たとえ間違いであり肯定しかねるような考え方であっても、強い意志を持ってそれを貫こうとするアレンの姿そのものには、確かな魅力を私なんかは感じてしまうのですけどねー。

もう一方、クロス部隊の側は、まぁ次の巻でリナリーがメイン張るその前段階みたいな流れなので、アレンほどの見せ場はまだあんまし無いですな。てなワケで、代わりじゃーないけど端々で思ったことでも。復活登場したミランダさんの刻盤タイムレコード、能力が能力だからその辺の使われ方が全然されてないけど、コレもいちおう対アクマ武器なんだよねぇ。…どーいった攻撃機能なんだろ。見た目からだとチャクラムみたいに投げて使うのかといった感じですが。もひとつ、「アレンは千年伯爵を破壊する者ではないか」、とゆーブックマンの予見ですが、伯爵に対してアレ、「倒す」とか「殺す」とかではなく「破壊する」って認識なんだなぁ、と。コレ、なんか意味があっての表現なんだろか。個人的になんか気にかかってたりします。最後、アレンの見た夢の中で56ページに出てきた”誰か”、コイツって女なんだよな。今現在の本誌連載での展開からは少しずつヒントも出てきてますが、それでもやっぱ、「正体」はともかく「理由」が分からない。なんとなくストーリー上の重要ポイントかとも思うんですが、はてさて。


▽自薦名場面 ― 72〜74ページ

 「――神? そんな事 どうだっていい。

  僕は、僕の意志で誓いを立てた
  アクマを壊すことを自分に…っ!!
  共に戦うことを仲間に
  救うことをこの世界に
  死ぬまで歩き続けることを父に誓ったんだ!!


  ――開けよ… ちくしょお…っ
  僕が生きていられるのは この道だけなんだ

おのれの”意志”を、”誓い”を叫ぶアレン・ウォーカー。上記のレビュー本編と重複しちゃてるけど、やっぱこの巻からはここ以外選びようが無いね。ラストのあまりにも”間違って”いる発言、そして始めの、”白”い作画で発せられるある意味”黒”いセリフの、その言い様の無いギャップ。改めて彼は、白でも黒でもない灰色の少年グレイ・マンなんだと実感させられるんだよなー。



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2007/11/08