感想・漫画編。

武装錬金ブソウレンキン 8巻

著者:和月伸宏

出版元:ジャンプコミックス


トンデモ兵器バトルマンガ、いよいよ8巻目。再殺編がクライマックス、全体的にバトル連発な展開ですな。新キャラは、ラストにちょこっと大戦士長・坂口照星サカグチ ショウセイさんが登場しました。にしてもこの巻のラスト、どー考えても打ち切り一直線の急展開だよなぁ…

てなワケで、LXE編ラストを思い起こすよーな、バトルバトルの展開を見せる8巻です。まずは前巻からの続き、パピヨンVS戦部イクサベ。無敵無敗の自信とソレを裏付けるだけの能力を持った強敵を、持ち前の優れた知能で逆転し、その後さらに敵の増援で形勢逆転してもなお、自らのプライドのままに勝負の意志を崩すことの無いパピヨン。コレはなかなかにカッコイイですねー。やっぱパピヨンは自分にとって、ギャグもシメも決められるダークヒーローですわい。次は斗貴子さんVS円山マルヤマの再戦カード。5分の1サイズに縮んでもまだ敵への闘志は消えることなく、でも弱者がいたならソレを守ることを忘れない。う〜ん、彼女もカッコイイ。まぁ、ゴゼン様を弱者と呼ぶのはビミョーに疑問が湧きますが(笑) さらに剛太VS根来ネゴロ。大切な人を狙う敵に怒りを静かに燃やし、だけど戦闘では冷静に知略を巡らせ、いかにも戦いにくい相手に勝利を収める。うん、剛太もカッコイイですねぇ。つーかコイツ、本作では微妙に報われないポジションではあるけど、場合に寄ったら主人公として不足の無いキャラだと思います。熱血タイプはやはり王道、だけど、アタマを使って活躍するのも充分にスマートな格好良さがあるしね。

そしてこの巻のメインイベントは、カズキVSキャプテンブラボー! 自らが選んだ悔いを残さない”信念”ゆえ、迷い無く真っ向ぶつかる両者。未来の脅威を回避するために、たとえ部下殺しの大罪を背負おうことになろうとも、自信の信念を曲げはしないブラボー。そして未来の平和を守る道を目指すために、たとえ逆境にあろうとも仲間を傷つける戦いはしないと、その信念を貫くカズキ。ふたりの”強い意志”が激しく交差し合う、コレぞまさに魂のガチンコ勝負! 最終的に、カズキが自分を越えたと認めて、今回の決着はつきましたが…個人的には、戦いに勝ったからってカズキがブラボーを越えたとは思わないんですよねー。多少のブラボーびいきがあるとしても(※このレビューはC.ブラボー大好き人間が書いております)、勝負を制した=相手を越えた、ってのは何か違うような気がするワケですよ。まぁ、より強い信念を持って打ち負かされたのだとして、ブラボー当人がカズキを認めること自体は、別に文句もないんですがね。

それはソレとして。その後に続く、戦士長・火渡登場からの展開は正直問題あったなー。よもやブラボー消滅か!?、とゆー部分を別にしても、火渡だって過失でこの事態を招いただけで、当人はブラボーとは敵対していたワケじゃないし、むしろ彼とはかつての同士として一種の絆を有していた、それが読者にも充分伝わるから、カズキがらしくもなく怨嗟の怒りをぶつけていても、主人公サイドにだけ感情移入するってのが難しいのですよ。敵対関係にある両方に情が向いちゃうよーな今回の展開は、やっぱり良い描写だとは言えないですねー。てか、ヒトによっては敵側(火渡)に同情するだろーしなぁ。7年前の回想なんて、特に。ドラマチックな物語だとは思うけれど、個人的にはココを評価する気にはなれませんねー。にしても、シルバースキンの活動からブラボーの生死を冷静に見抜いた剛太は、やっぱり切れ者だよなぁ。感心カンシン。

ラスト、おもむろに8巻へのツッコミ。垂直跳びだけで遠景を望むほどの高度を稼ぐブラボーこそがよっぽどバケモノだと思った。そーいやあの人、武装錬金でなく自身の身体能力だけで戦ってんだっけ。…もしヴィクター化したら、冗談抜きで手ぇつけられんのでわ。もひとつ、作者あとがきで「凶悪な一面あってこそ」とか言われてるヒロインってナンデスカ。どーゆー風に捉えてんだ、生みの親。そんなのが最大の魅力なのか、彼女わ。最後、156ページでモーターギア構えてる剛太くんへ。ソレ、投げた瞬間にガッシリ止められるから(※SSリバースは外部への攻撃をシャットダウンします)

 

▽自薦名場面 ― 128〜129ページ

 「戦士長…これでもカズキを、殺すと言うんですか…?
  一筋の光明を握り潰してなお始末すると言うんですか?
  答えて下さい戦士長!

 ――答えろキャプテンブラボー!!」

津村斗貴子、嘆きの叫び。個人的な解釈なんだけど、彼女ってブラボーのことが好きだったんだと思うんヨね。つっても、カズキに向けるモノとも少し違ってて、強くて頼もしい兄を慕うような、そんな感情で。実際、初期プロットでは実兄として予定されてたらしいし。ともかく、そういう好意を抱いていた相手、誰より信頼していたハズのブラボーが、どんな説得にも耳を貸さずに眼前に立ちふさがるばかり、というこの状況。内心では始めのカズキ以上に、ブラボーの冷淡な態度が信じられなかったし、なにより自分でも信じたくなかったんじゃないかなー、と。この場面には、そんな彼女の引き裂かれるような悲痛さが、描かれているように感じます。



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2006/07/04