感想・漫画編。
武装錬金 5巻
著者:和月伸宏
出版元:ジャンプコミックス
トンデモ兵器バトルマンガ、第5巻。LXE編・決戦の前〜中盤戦で、本作のラスボス(?)・ヴィクターが登場。てゆーかそうか、この人出てきたのってワリと早めだったのだな。 ストーリーも決戦展開っつーことで、5巻はアタマっから巻末までバトル盛りだくさん。カズキが突撃槍を手に校庭を駆け、斗貴子さんはバケモノ相手にぶちまけまくり、ブラボーも超絶パワーで拳が唸る! そしてパピヨンは羽を広げて華麗に舞う、と。…オチをつけたみたいでアレですが、ともあれ、各キャラがそれぞれに”何か”のために戦う様が、思う存分に描かれておりますな。まずカズキは、大切な存在である妹や友達、そして学校を守り抜くため、他者の目にどう映ろうとも死力を賭して戦い抜く。斗貴子さんも、根底の原動力は「バケモノを葬るため」でこそあれ、皆を守るために少しでも早く元凶を討とうと奮闘。ブラボーだって、まだ未熟でこそあれ頼もしくあるふたりを信じ、何より失った部下と同じ目に遭わせないために、ムーンフェイスとの死闘を展開。パピヨンだけ自分のための戦いではあるモノの、傷つけられたプライドゆえに、そしてひとりの越えるべき相手を越えるために、新たな武装錬金をもってバタフライへ挑む。さらには彼らのみならず、日常の象徴だった3バカや3人娘たちだって、『みんなの味方』であるカズキたちのために『彼らの味方』となって”闘う”意志を見せてくれる、と。超人たちの戦いと普通の人たちの闘い、それぞれの、バトルだけではない”たたかう姿”が全編通して描かれる、決戦に相応しい盛り上がりが、この巻にはありますねー。 そしてストーリー展開の方もまた、ノンストップで突っ走ってたりするワケで。まずは前半の、戦士としての素性がバレたあたりですか。流れだけ見てると「え、ソコまでやっちゃうの!?」とゆー不安感も湧いたりしますが…まぁ、この当時は本誌連載が崖際ギリギリだった頃だしなー……(虚笑) でもそうなったからこそ、(作者の予定魅せ場でもあった)56〜57ページの見開きが一層に盛り上がった、ってのはありますしねー。あとココの流れの、素性がバレても一切気にせず先へ向かうカズキと、素性を知っても一切動揺せず笑顔で送り出すまひろのやりとりは、コレが武藤兄妹の絆なんだなーと感じさせられて、ひそかに良い場面です。あともうひとつ、巻末の流れ。いや、早い。早過ぎ。連載当時もあまりの展開スピードにヒヤヒヤしてた(しまくってた)もんですが、いま改めて読んでみてもやっぱ早いわ。なんもソコまで盛り込まへんでもえぇやろ、とつい関西弁で心配してしまうほどの怒濤の展開でゴザイマス。まぁ……当時はホント、後先考えてる場合じゃ無かったからなー。主に政治的に。仕方の無い進行…とはいえ、それでもこの展開は、なんか、色々と。 最後にちょっと感じたこと。続巻を読み進めれば、ヴィクターの怒り=錬金術への憎悪の正体が知れるものの。そうすると逆に、バタフライとの協力関係が理解できなくなるんですよねー。何故忌むべき存在である錬金術師に、知識を分け与えるよーなマネをしたのやら。復活の手助けをさせて、今度こそ錬金術を滅するため? そのために、自身に心酔したバタフライを利用しただけの事? でも、両者のたったひと言のやりとりだけでも、彼らの間にはなんらかの絆が、どこか分かり合っていたのだろう感情が、見え隠れするんですよねー。最終巻まで結局描かれなかった部分だから、個人的になんかみょ〜に気になる点です。まぁ、作者に直談判しても返答に困られそうな要素ではありますが(苦笑)
「…そうやって貴様は身の程を知ったワケか。 ――決めたぞ。 御先祖様、貴様と俺は似ているが違う。貴様はまばゆい光に惹かれてうろつくだけ。一人では高くも遠くへも飛べない、醜い蛾だ!」 蝶人パピヨン、”次なる所”へと進むその宣言! ライバルであるカズキとはまったく正反対、あくまでも自己に固執し、自己のためにのみ道を切り開こうとするこの態度は、確実に『正義の味方』ではないけれど、『ダークヒーロー』の肩書きには間違いなくピッタリで、なおかつ痺れるほどの格好良さすら感じてしまうほどです。おのれが高みに到るため、「醜い蛾」を踏みつけて次へと行かんとする、その雄々しいまでの様。う〜ん、ナルホド確かに、彼はタダの変態さんじゃないですわ、和月さん(笑) |