感想・漫画編。

ARIAアリア 9巻

著者:天野こずえ

出版元:ブレイドコミックス


火星のマンガ、とうとう第9巻。秋のエピソードと、追加の番外編はARIAカンパニー創設のお話を収録。カバー裏ではウッディーをピックアップしてるけど、収録本編では43話にしか出番がないのだが(微苦笑)

それでは順に、41話。制服の模様をアレンジした新しい彩色パリーナは、なかなか上手いデザインですな。やるなぁモミ子のクセに(←何様。 後半でアリシアさんが語る「いつかは今も終わって、色々なものも変わり、自分の見知らぬ時間が流れる」との一連のセリフは、シリーズが完結した今になって読み返すと、既にこの頃から本作の最終回を意識した作劇を入れてたんだなーと思わされます。天野さんが最終的に描こうとしたテーマは、この頃から決めていたのかもなぁ。

続いて42話。後輩ちゃんことアリスのお話ですか。つーか子供の頃やったよね、地面の影以外は全部マグマっての(笑) あるいは横断歩道の白線以外は以下同文、とか。少なくともオレはやってましたヨ(大笑) まぁ今回のコレに限らず、漫画家や小説家でたまに感心させられるのがこの、小さい頃に考えていたこと・やってたことを忘れずにいて後々自分の作品でソレを活かすってトコなんですよね。こーゆう"ある種のしつこさ"が創作者には重要な要素なのかもしれませんな。

43話。今回でも上と同様に、そのとき間違いなく自分は光の速度を超えるワケで(笑) いやホント、ガキの頃は凄まじいパワーを持ってたよなー、神になるのも楽勝だったし… それにしても、推定で12〜3年も前のことなのに容姿が一切変わらないアルって一体。まーガキの頃からビミョーにジジくさいのも同じみたいですがっ。

44話。水先案内人ウンディーネの通り名、お三方のはとりあえず良しとして、他の現役一人前プリマはどんな呼称なのかチョット気になったり。あー、他で言うとグランマなんてどんな通称だったんですかね。あと個人的に、藍華の「古の幻獣ガチャペン」は凄まじく捨てがたいのですが。なかなかやるなぁモミ子も(←2度目) 茶化すのはこのへんにして、晃さんの抱くプロ意識は、いち就労者としてもひとりの女性の在り方としても実に格好良い姿です。こーゆうプライドこそが彼女を磨く最大の要素なんでしょうねー。これぞまさしく「尊敬されるに足る先輩」というヤツですな。

45話。既刊エピソードであんだけ日本の文化・風習が取り上げられてきながら、お月見や月見団子になじみがないってのもビミョーな違和感が。まぁアリスが冒頭で言ってるよーに、地球マンホームほど見目の綺麗な月じゃないのが原因ってコトでしょうかね。今回のメインは藍華とアルの恋バナなワケですが、どうして藍華は自分の恋心は実らないと思っているのか、どーしても分からないんですよねー。アルはアルで、ちゃんとその辺の気持ちを理解して正面から受け止めようとしてるのに、なんで彼女は想いの行方を恐れているのかがまったく分からん。う〜む、こーゆうケースの気持ちの機微は、女性にしか理解できないトコロなのかもしれませんな。

さいご、特別編『アクアマリン』。グランマ改め若かりし頃の秋乃あきのさんと、これまた若かりし頃のアリア社長改め猫さんとの出会いの物語。つーか、秋乃さんはまだイイとして、社長の容姿が一切変わってないのはナニゴトやら。いちおう20年前の出来事になるハズなんだが…火星猫ってみな長命なのか…? 今まではもちもちポンポンらぶりぃなアリア社長しか知らなかったから、昔の一時期にこんな、延々海だけを眺め続けていた孤独な頃があったのだと知らされると、どこかハッとさせられますね。猫にも歴史ありってトコでしょうか。何があったのかなぁ、昔の社長に。



▽自薦名場面 ― 163〜164ページ

 「ねえ猫さん。
  いつもここで何を見つめているの?

  ――大切な何かを待っているの?


 ――――――――。

色々と絵的に選びたい場面が多いんだけど、その中で今回はコチラ。秋乃さんと猫さんの会話。"間"を表現してみたんだが…上手くいってるのかどーか。そのころ彼は一体何を待っていたのか。そしてその後、待っていたものには巡り会えたのか。もしかしたら"今"でも時折こうして海の向こうを見つめているのかもしれない、そんなコトまで思い起こさせられるような、アリア社長の伺い知れない内面が垣間見える、最もハッとさせられたシーン。



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2008/09/25