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感想・小説編。

猫の地球儀 焔の章

著者:秋山瑞人

出版元:電撃文庫

展望台は、トルク中心柱のてっぺんにある大きな球状の部屋だ。かびの森に囲まれ、無数の漂流物が舞い漂うその場所で、黒い子猫が「ひろってください」と書かれたダンボール箱をじっと見上げていた。

その背景を為す半球状の窓を埋め尽くして、青い地球は、白い乱雲とともにあった。

『約束する。必ず、あそこにたどり着いてみせる』

32ページ クリスマスを発見したかすかのシーンより


まず、いつも通りとゆーか恒例とゆーか。掲示板で本作を紹介してくれた各位に、改めて感謝の意を。面白い…というか、実に良い物語でした。ありがとうゴザイマス。ってなワケで、猫の地球儀・上下巻、順番にレビュー行きましょー。

最初に、「本作をまったく未読である」とゆー方々に、説明とゆーか、軽く言わせてもらいましょうか。本屋で本作を見かけたら、とりあえず外面のタイトルをご覧下さい。そしてパラパラッと、表紙を含めた挿絵なんぞをご覧下さい。そして、そのまま本文を読まないままに、テキトーに本作の物語の内容を想像してみてください。――さて、言っておきましょう。アナタの想像は99%外れています。イヤね、別にオレ、本作のナカミについて想像っつーか詮索っつーか、そーゆーことをやったワケでもやろうと思ったワケでもないのですよ。チョイとした理由で、挿絵についてだけは事前に知ってたんですが、それ以上のこと、本編の内容は一切知らなかったし、勝手にイメージ創ろうってこともしなかったんですよ。そんな状態で本作を読んだワケですよ。まさかこういう物語だとは思ってもみんかった。いやマジで、こんだけ挿絵と本編のイメージが、(悪いイミではなく)繋がらない小説は、そうそうお目にかかったことが無ぇ。驚いたほどでも無いけど、さすがに変わった方向で感心させられたねー。

そんじゃ、本作はどーゆー物語なのかというと…私から言わせると、歴としたSF作品ですね、コレ。それも、至極真っ当なぐらいのSF小説。SFなんてーのは、個人的に言わせてもらえばハッタリを利かせてナンボの作品ジャンルであり、とりわけSF小説ともなれば、それっぽい科学考証やら舞台設定やらを用意した上で、どれだけロマンチックな物語を描き出せるかどうかにこそ存在意義があると、(究極的な部分では)考えてるタチでして。そーいった側面から本作をかんがみると、実に真っ当、大判の合格ハンコを押してやってもOKってぐらいに、正しく”SF”している作品ですな。

地球儀の周辺宇宙を回るトルクや、スパイラルダイブの最強者・多爾袞ドルゴン、生きて地球儀に行くと語る異端者・スカイウォーカーなどなど…なんちゅーか、これでもかってぐらいにSFエスエフした設定世界。これでアンタ、登場人物が猫で無くて人間だったらなら、完全カンペキに異論の挟む余地無くSF小説ですよ。てーかコレ、むしろ何故そうしなかったのか、が不思議なほど。あえて登場人物を猫にすえることで、ライトノベルらしさを出したってコトなのかねぇ? だったら、私に言わせりゃ余計だったかもなぁ。これだけ真っ当なSF世界を作り出せるぐらいなら、割り切って完全なSF作品として描いてしまってくれた方が、良かったようにさえ思いますよ。こーゆー指摘が的外れであり、それこそ余計な世話であることは重々分かってますが、でもそう思わずにはいられない。いやホント、ケチ付けたくて言ってるワケじゃないんだよなー。我ながら、そういう感想持つなんてめずらしいや。

ともかくも、パッと見の印象だけではそのナカミが一切想像外であろうとゆー本作。てーか、作品内容の「本質的な部分」については、あとがきであらかた解説してくれてるんで、もし読書前に作品イメージをちゃんと持っておきたいなら、あとがきを先に読んでしまうってぇのも、本作についてならアリかも。

一匹の多爾袞ドルゴンほむらと一匹のスカイウォーカー・幽が出会ったそのとき、トルクを巡る彼らの物語は始まった。2匹の”天才”の出会いは、果たしてどのような結末を迎えるのか? 続きは下巻の『幽の章』にて。べんべん。



▽自薦名場面 ― 223ページ

 自分を遥かに上回る力を持っている奴がいる。

 なのに、そいつの目は、自分には理解できないほど遠くを見ている。

焔の物思い。ずっと以前から自分が追い求めていたその”高み”に、認めざるを得ないほど確かに立っている『そいつ』。だけどそいつは、それよりももっと別の所にある”何か”だけしか見ていなかった。自分の欲しい物を持っているにも関わらず、ヤツはさらにもっと手に届かない物を求めてる。これほどまでに、おのれの無力を思い知らされる事が、果たして他にあるだろうか? 本作上巻からは、ひたすら気に入ってるこの場面を。



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2005/06/27