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感想・小説編。

小説スパイラル 〜推理の絆〜 幸福の終わり、終わりの幸福

著者:城平京

出版元:エニックス


「ということでお嬢さん、私達の関係もそろそろおしまいにしようか。君のじいさんもタイムアップを告げる頃だと思うが?」

「わかってる。次がラストかラス前だ」

117ページより


”推理”を主題にしたミステリの物語・スパイラルの番外編ノベル、この第4巻にてシリーズ終結。そんな最終巻は、WEB連載していた外伝シリーズ・小日向こひなたくるみの挑戦から2編と、そのラストエピソードを載せるとゆー、既刊と比べてずいぶん変則的な収録内容だったり。

とまぁ、そんな具合でコレまでと比較するとだいぶ違った感じ、てゆーか表題作の主役からしてすでに歩じゃーないからなぁ、そら違うわ、といった状況の本作です。まぁこの辺は、キャラ物の小説シリーズとして見たら相当の変化球ですけれど、一方で同時収録していた外伝をシッカリしたボリュームでもって完結してみせたって点で、続き物の小説シリーズとしては悪くない構成の取り方だと思いますね。それに一応、小学生時分の歩をメイン扱いで登場・活躍させていたり、ラストシーンでは鳴海清隆とブレードチルドレンとの関わりの一端を垣間見せたりと、コミックス本編との兼ね合いとゆーか作品間補完を取ってるのは、著者がコミックス本編と小説版筆者とを兼任しているからこその作品造りといった感があります。本編(※本作に置いてでは本誌連載)の進行に沿ったカタチで伏線の答え等を垣間見せるのは、本編とのブリッジを果たすと同時に読者への一種のサービスなんでしょーね。そーゆーギミック(?)の取り入れ方は、自分の個人的な嗜好もあるんですけど、作品全体の広がり・繋がりを感じられて面白いトコロです。

んで、収録内容ですけど。なんかこう、今回の表題作はものすごく真っ当でオーソドックスな謎解きミステリといった感じだなー。や、当方ミステリ小説の素養なんてゼロに等しいですケド。でもホント城平さんって、過去3巻までの内容からもそれなりに感じ取れてた事ですが、こーゆー地味〜なトリックをやっぱ地味〜に伏線張り巡らせてソレをきちんとした”文法”にのっとって解決させてみせるっつー作劇(ってか、ミステリ作の構成)が好きなんだなー。その上でまた、特異で奇妙で論理的でありながらも狂気じみてさえいる人間それぞれが持つ独自の心理を常に謎解きの中心に据えているトコロも、氏の作品造りの特色ですねぇ。本シリーズでは各巻表題作が全て、トリックがどーしたこーしたってよりもソレを実行した人物の心理、その人はなぜ・どうしてそんな事をやったのか、の部分こそに重きを置かれて描かれてるのが共通していて。特に今回の謎解きのポイント、「殺人の動機」が発生する前に生み出された「殺人の”理由”」を推理して犯人を特定するなんて、複雑怪奇な人間心理あって初めて描かれうる謎・ミステリだと思います。作中でくるみお嬢さんが叫んだとーり、これこそ「狂気」そのものであり、そしてその狂気は人間だからこそ持ちうるココロの形。小説作に限らずともミステリにはそれぞれ、奇抜なトリックをメインにしたり登場人物同士の関連を主体にしたりと色々なアプローチの仕方があるでしょうけど、城平さんの心理を主体とする作劇は、地味だからこそ光る堅実さがあって面白いんですよねー。

そんなこんなの小説版、スパイラル番外シリーズ。余所のそーいったシリーズ作とは違って、独立エピソードの集合的な印象が強い作品なもんですから、この計4巻全体でどーしたと言った点はぶっちゃけ無いんですけど(笑) まぁソコは置いといて、マンガ作品スパイラルのテイストをそのまま(イヤ、当たり前なんだがな)の形で小説として読ませ、またなによりミステリとして堅実な”ホネ”を持つこの一連の作品は、ミステリ小説シリーズとして確かな魅力を持つ面白い作品だと、私は思っています。……てか、せっかくアライブが再開したんだし、どっかのタイミングでまた新刊出さないのかね。あとがきでハッキリ閉幕っつっちゃってるし、やっぱ無いかなぁ。う〜ん。



▽自薦名場面 ― 292ページ

 あたしは一片の容赦なく、未来永劫揺るがない真理として断言した。

 「あんたは最低だ。誰かを幸せにすることなんて、一生できない」

エピローグの1シーンから。この酷いセリフがなんでまた名場面たりうるのか、それはまぁスパイラル全体のネタバレにも引っかかるんで解説は避けさせてもらうんだけど…ただそれでも、この言葉の真意と、彼女がソレをクチにして言ったこの状況とが、他のどのシーンよりも強く印象に残る一場面であるのは確かなトコロで。ちなみにひとつ感想を付け加えると、私自身は彼女の言い分に、初めて本作を読んだ頃から全面的に大賛成だったりしている。



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2007/07/12