感想・小説編。

ダブルクロス・リプレイ・アライブ 覚悟の扉

著者:矢野俊策

出版元:富士見ドラゴンブック


DX2ndのリプレイシリーズ第……何弾になるんだコレ。とりあえずアライブの第2巻。PCメンバーに千城寺薫せんじょうじ かおるが参戦、メインキャラサイドの体裁が整ってきた感じですな。

とまぁ「続きもの」として、キャラ追加がまず今巻の基本的なポイントと言えますが、その他のシナリオ構成などにも多々、連続ストーリーとして企画された本シリーズの長所みたいなモノが現れている感じですね。前シリーズのオリジンでは1巻目だけでひとまず終わって、そのあと改めて続巻刊行されたとゆー経緯もあってか、各巻毎の繋がり、シリーズ全体で大きく動くバックストーリーみたいなモノは特に組み込まれてなかったですが。本シリーズでは当初から続巻刊行を予定して組まれたリプレイであるため(※まぁ何巻予定だったのかは知らんけど)、1巻のシナリオ展開を踏まえつつ2巻を展開し、さらにまた今巻ラストでも続きを念頭に置いたカタチでの"引き"を入れるなどして、「続きもの」の特性(?)をキチンと活かした作劇・構成にしているとゆー印象が実に強いです。この巻で言えば、裏で活動しているアキューズの存在や、上でも言いましたけど第4話ラストの急転直下な作劇なんかが、続きものである・続きが用意されてる事を前提とした作りだと言えますねー。この辺がハッキリと、オリジンとは異なる構成だと分からせてくるポイントですな。

じゃあ各話毎に取り上げてきましょーか。では第3話。ハードボイルドなキャラクターである柳也りゅうやさんらしい、実にビターな物語と言いますか(笑) あとがき解説でもGM自身から述べられてますけど、8年も前に誘拐された妹が果たして現在も無事に生きているのか、そこから予想されうる事件の結末にキャラクターはもちろんPC自身にしてもどう対峙していくのか。そういった部分は事前にPCに相談した上でシナリオ開始しているとはいえ、TRPGのプレイに置ける必要条件のひとつとも言える要素、「GMとPCとのゲームプレイ上の協調姿勢」が感じられるよーな構成だと言えましょう。まぁこーゆうのって、ややもすれば単なる馴れ合いになってしまうトコロもあるんですけどねー。こうした部分のバランス取りが大事ではありますわな。

そして4話。シリーズ全体で描かれる謎である、「銀の目に変わる賢者の石」が登場するシナリオですけど、これまたあとがきで書いてあるとーり、3話で示されたUGNエージェントとしての柳也の決断に対する、イリーガルとは言えいちオーヴァードとしての決断を迫られる紫帆とゆー展開が、収録として前半・後半の対比的な構成を生んでおり、この巻自体のまとまりを作り出しつつ、賢者の石を巡る者達の物語としても上手く作用している、そんな構成力の高さを改めて感じさせるシナリオになっております。チョットしたとこでも言えば、シュヴァリエというコードネームの含意だとか。ホント良いイミで計算高いよなぁ、矢野さんって。その上にPCの見応えあるロールプレイが加わるから、このリプレイは面白いワケでして。



▽自薦名場面 ― 159ページ

 柳也:突き刺すような殺気を放ちながら言う。……おい。

 GM:では、危機を感じてスティングは振り向く。

 柳也:……お前は、黙れ。

4話のシーンと2択で迷って、結局選んだのがコッチ。九条くじょう柳也の怒りの呟き。なんつーのか、この短い言葉からは、眼前に立つ者への率直な敵意、囚われた妹の"魂"に対する哀れみ、こんな矮小な存在に妹がもてあそばされた事への怒り、それでもその敵は妹の顔をしているそのことに感じる悲しみ、そんなとてもとても複雑な"兄"の想いが伝わってくる、そんなシンプルながらに深くて重いセリフです。



第3巻>

<第1巻


<<ノベルレビュー



2008/09/14