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感想・小説編。

武装錬金ブソウレンキン スラッシュゼータ 夢見た楽園

著者:黒崎薫

出版元:ジャンプJブックス


原作コミック完結のアフターエピソードを描く、ノベライズシリーズ第2巻。にしても、こーゆう形式で続けようとするノベライズ作って珍しいよなぁ。別視点(別描写)で物語を描き直すってのでもないし。まぁそこら辺のコトもあって、「スラッシュゼータ」なんつー意味わかんねぇタイトル付けられてるワケですが(笑)

さて今作は、時系列ではそのまま前回・小説1巻から地続き(?)に、クリスマスからの数日間に起こったカズキたちのお話を描いております。前巻では過去の物語として照星部隊の面々がメインキャラとなっていたために番外編的な印象が強いトコロがありましたが、今回は主役2名を中心に学園の3バカ&3人娘らにスポットが当てられてるおかげか、より武装錬金・本編らしいストーリー展開で読ませてくれてます。友達とのにぎやかだけれど平穏な”日常”の中に、徐々に錬金術やホムンクルスという”非日常”が迫ってきて、カズキたちが事件の渦中に巻きこまれていくとゆー作劇も、そーですねぇ、原作で言えばLXE編の序〜中盤ぐらいの展開と近い印象がありますな。そんなあたりがまた、前巻同様にコミックスの更なる続きの物語、まさしく第12巻として捉えても構わない内容に、今巻もなっていると思います。

とまぁ、全体的な雑感は以前の感触とそう変わらないですが、中身に関してはより一層に楽しめるストーリー展開で印象はグッと向上しております。カズキや斗貴子さんの語りなどなど、一人称視点の主観を場面ごとで切り替えるコトにより物語を多角的に描き・読ませつつ、ソコにミステリ作で言う所の「叙述トリック」を仕込むことでクライマックスの衝撃度をより強めている点なんかは、本作の魅力の主点ですかねー。そしてとりわけ、今回のゲストキャラであり実質的な主役である人物・剣持真希士ケンモチ マキシ、彼を巡る作劇こそが本作の主題なワケですけれど。もともと原作コミックスで(連載の状況次第では)登場予定だったらしいコトもあり、大半の骨子はすでに出来上がっていた部分はあるのでしょーが、その上で真希士当人の人物描写や、原作とのリンクの組まれ方、そうして行き着くラストシーンの様などなど、今回限りのゲストにはもったいなくもあり、また逆に今回限りの活躍だからこそより深く印象に残る、シッカリした魅力を持つキャラとして描かれてます。特にクライマックスの場面、絶望の選択は選ばない・選びたくないゆえに救いの道を示そうとしたカズキと、絶望の中の”事実”を知ってしまったゆえにソレは救いじゃあないと違う道を選び取った・取ってしまった真希士という両者。諦めなければ希望は必ずある、夢の楽園にもきっと辿り着けるという”信念”を持ったカズキ。事はそんなに簡単じゃあない、夢の楽園は今のこの場所にしかないからこそという”信念”を抱いた真希士。その「信念の相違」によって訪れるラストシーンは、誰もを救ってみせたカズキの活躍を描いた原作コミックスの作劇とは異を成す結末かもしれませんが。でも、そんなカズキにも守りきれないモノは何処かにある、それはコレだったのだ、という、原作に無かった”重さ”や”シニカルさ”を含みながらそれゆえにある意味では何よりも武装錬金らしいエピソードなんじゃないかと、深く感じさせられました。光に導く・導いていけるだけではない、でもそれゆえにグッドとは違うけどベストエンドとすら言える心に残るラストが、ソコにはあったと思います。

あー、テキストの流れでなんか最後になっちゃったけど。今巻を読んでて別に強く感じたのが、アニメ版キャストから来るイメージによって各キャラの描写がされてるなー、ってトコだったりしまして。たとえばまひろのお気楽ハッピーな性格とか、ブラボーの”大人”な印象とか、パピヨンのやたらと尊大な感じだとか、これらのイメージは原作コミックスからってよりも、アニメで声優さんのそれぞれの声があったからこその人物描写として、黒崎さん自身書いてた・書けてたんじゃないかなぁ。例に挙げた他でも、脳内声当てをアニメのソレで取ると、キャラの”動き”がホントにそのまんまで湧き上がってくるっつーか。本作のアニメ版はつくづくの良作でしたが、その恩恵(?)はこんなトコにも出ているよーに私は思いますねー。



▽自薦名場面
 ― 220ページ

 RANKING  NAME
 No.1   ケンモチマキシ
              … 33sec.  30WINS

本編最後の挿絵より。なんつーかネタバレ全開だけど、最後くらいは許しておくれ、と。まぁこの前後の文章があるからこそのこの挿絵かもしれないけど、でもこの物語で何より強く心に残るのは、この挿絵と、ソコに記されたシンプルなランキングの表示なんだよねぇ。誰よりも強く、誰よりも優しく、だからこそ日常にいる全ての人達の、そして自分自身の『夢見た楽園』を守り抜こうとしたひとりの戦士。電光掲示板に記された記録レコードは、真希士が確かに此処に居たあかし。人懐こい野良犬のような笑顔を浮かべる彼が、みんなの『楽園』に共に居たという消えない記憶メモリー。たとえ彼がもう、此処には居なくても……



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2007/07/25