感想・電子遊戯編。

ファイナルファンタジーXアドバンス

発売元:スクウェアエニックス

対応ハード:GBA

わざわざリメイクタイトルなんて買って遊ぶのは、まぁ大抵、オリジナルへの”思い入れ”が最大の動機なワケですが。本作についてはホント、思い入れの強い作品なんですよねー。ゲームそのものがそうだし、物語だってわりかし思い出深いし、中でも楽曲は特にそう。なんせ、私が生まれて初めて買ったCDは、本作のオリジナルサウンドトラックだったりしますから。てか、今もそのディスク持ってるしな。先日改めて聴いたとき冊子も読んだけど、上松さんのコメントには、なんか時代の流れを感じましたヨ(笑) ともあれ、かつての据置機・SFCから現在の携帯機・GBAへとリメイクされた本作、ファイナルファンタジーXアドバンスのレビューを開始しましょう。

こんな具合で、基本的には”思い入れありき”で遊んだ部分が強い本作ですが。なんのなんの、06年のいま改めて遊んでみても充分に面白いですよ、FF5。そんな本作の良さを端的に表すと、あらゆる要素が具合良くバランスを取っているんですよねー。難しすぎでも簡単すぎでもない適度なバランス調整をされたバトル、重厚なほどでも単調なほどでもないドラマ性で描かれる冒険物語、過剰なワケでも単純なワケでもない案配で彩る演出効果と、ゲーム内で観て・遊んでいく各部分の作りのバランスがが実に良い。昨今の、重厚長大なストーリーや大がかりな演出でガッツリ作り込まれたRPGを否定する気はありませんが、でも本作の、あくまで”ゲームらしい部分”に着地して構成されたタイトルを遊ぶに改めて、ゲーム(RPG)の面白さの基本を思い出させてくれるってのは、あるとも思うんですよねー。大ボリュームで作り上げられた作品は確かに十二分な満足度で楽しめますが、コレくらいの程度でまとめ上げられた作品もまた充分面白いですよ。モチロン、これを楽しめるのはそれらの内容がシッカリと面白いものとして作られているから、とゆー重要な前提条件があってのコトですがね。

そんでもって、本作の要素でもっとも楽しいのは、やっぱりバトルなんですよねー。上記のとーり、ザコ戦もボス戦もほどよい難度で進みますし、魔法や召喚獣の演出もイイ感じの案配ですし、それよりなにより戦闘のテンポ自体が実に良い。強いボスなんかを相手にするときは支援魔法も駆使してじっくり挑む必要がありますが、ほんとにホントのザコ相手だったらエンカウントして5秒でケリがつくアッサリさですから。もうマジで、エンカウントしたら「たたかう」で殴って即撃破でファンファーレ鳴って戦闘終了、みたいな。これが淀みなくアッサリさっくり進行するのが、ホントに気持ちイイくらいのテンポの良さなワケです。そしてメインのゲームシステムである、ジョブおよびアビリティの組み合わせによるカスタマイズの要素が、本当に自由度が高くて面白いったらない。この部分、ゲームシステム的に『FF3』(DS版のレビューはコチラからの正当進化とも言えるワケですけど。3と比べて、成長システムがABPによる完全なポイント管理制になっているおかげで、いつ・どこで・どんな組み合わせで・どのジョブ(アビリティ)に・好き勝手取っかえ引っかえやろうと全然OKだとゆーのが実に良い。カスタマイズのみならず、成長要素についても自由自在に選んで試せるこのシステムは、私みたいな気まぐれプレイヤーにはメチャクチャ持ってこいです。ナイトでちょっとザコ戦やって、「あーやっぱ戦いにくいな」と思ってすぐさま黒魔導士に変更したとしても、ABPが損することは一切無いですし、主だったリスクも皆無だってのはスゲー楽なんだよなー。各種ジョブにしても、それぞれに一長一短のある能力が実に個性的で面白い。ちなみに、私のお気に入りジョブは青魔導士。敵の技をいちいちラーニングするのこそ手間だけど、数が増えてくると青魔法はホントに強力になっていきますからねー。中盤までのボスを、開幕早々レベル5デスで瞬殺してくのはマジで気分爽快です(大笑) 巧みに調整されたゲーム各要素のバランス、重すぎでも軽すぎてもいないシナリオ、そして個人的にはゲーム史上でもトップクラスにあげたいほど名曲揃いのBGMと、純粋に”楽しめる”RPGであるタイトル、FF5・ADはそんなゲームなんですよねー。

でわ、毎度の欠点をあげましょう。アビリティ変えるたびに「最強装備」するのはすっげぇジャマ。チョット迷ってアビリティ入れ替えるたびにイチイチ「エルフのマント」着けなおすのとか、マジで面倒なんですけど。装備替えるのはジョブチェンジした時だけで充分だっつーの。コンフィグにもうひとつ、「装備を替えない」みたいなのがあれば良かったんですけどねー。もうひとつ、敵の状態変化が見た目ではまったく分からないのはどーなのよ、と。小人状態とかなら一目瞭然なんですけど、スロウだとかバーサクだとかだと、いつまで効果が持続してるのか全然把握できないのは正直不便です。パーティ側みたいに色の変化をつけるとか、怒りマークのアイコンなんかを表示さすとか、そーゆーことしててもイイだろーに。なにもこの要素すら「忠実に移植」せんでもなぁ、と。こーゆートコを改善してこその「リメイク」じゃないんですか?、スクエニさん。あと、コレはただの不満ですが、BGMをオリジナルの音源と若干変えちゃってたのは正直残念だった。自分の予想としては、GBAのスピーカーでも充分鳴ってくれる音色に変えたってコトだと思うんで、あまり文句をつけるべき箇所でもないんですが。でも、オリジナルよりも軽めの音質になっちゃったのは、BGMを何より気に入ってた人間としてはやっぱ寂しく感じたのも事実でして。『バトル1』の吹奏楽音がシンセっぽくなってるのは、なー…(悩)


土・水・火・風、世界に繁栄をもたらす4つのクリスタル、それらの輝きに導かれ、4人はその地に集った。恵みを与える大地の営み、勇気を灯す火の揺らめき、命の源たる水の潤い、そして探究の心を運ぶ風の囁き… クリスタルの欠片に込められた勇者の力を胸に秘め、諦めずに希望を目指す心の強さを武器にして、30年の時を経て蘇る邪悪を倒すため、光の戦士達の長い冒険は幕を開ける――

携帯機に移植されたことでよりお手軽になりつつも、14年の年月を経てもその本来の魅力は色あせることなく、今もなお純粋なゲームの面白さを見せつけてくれるRPG、それがこのタイトルです。いくつかの追加要素も、あくまでオマケ程度に抑えられていることで、オリジナルの楽しさをそのまま味合わせてくれる本作、近年の重厚なFFに慣れた方にも是非いちど楽しんでもらいたい。やっぱ『ビッグブリッジの死闘』はマジ燃えますって!(笑)



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2006/11/28