感想・電子遊戯編。

ファイナルファンタジーV

発売元:スクウェアエニックス 開発元:マトリックス

対応ハード:DS

もはや改めて説明することさえムダ手間、世界に名だたる2大RPGの一翼とでも言うべきこのシリーズ…なんだけど、私個人のプレイ経歴で言うと、その半分も遊んでいないってのが実態だったりしまして。そーねぇ、ちゃんとエンディングまでプレイしたヤツったら、ちょうど4〜7だけになるのか? そんなワケで、自分にとっては本当に久方ぶりのFFとなった本作、DS版・ファイナルファンタジーVをレビューしてきましょー。

と、そんなんだから、「16年の時を経て待望のリニューアル移植!」とか言われても別になんとも思わずタダの新規プレイヤーとして遊んでいたワケですが。そんな私の視点から見るに本作、まさにそのままの意味でFC時代RPGのリニューアルってな感じですね。グラフィックは(さすがに当然とも言えるが)2Dドット絵からフル3Dポリゴン化、合わせてBGMもより音域を拡げて一新、さらには主人公4名に性格付けを施すなどなど、色々な部分で大なり小なりの手が加えられていますが、その根底に確かに残る原作・FC版のテイストは、”元”を遊んでいない私にさえボンヤリとながら感じられるモノ。なかでも戦闘シーンで、攻撃時に「シュババババッ!」と何度も武器を振って敵を斬りつける演出、コレなんかは見てると「あー、昔のFFってこうだったよなー」と思わずにはいられませんねー。

とまぁ、原作を遊んでないクセして、昔と比べてどーだこーだと言っても説得力皆無…なんですけど、ソコを踏まえてみても本作はやはりFC時代のRPGとゆー感覚が実に強い。ソレはやはり、ゲーム全体のバランスそのものがFC時代的だからだと思います。まずひとつ、レベルがいっこ上がるだけでもパーティが強くなったって実感できる。「ちから」や「ぼうぎょ」、「ちせい」など基本ステータスの構成が単純なおかげか、レベルアップ、あるいはジョブチェンジしてパラメータに変化があると、敵へのダメージなんかも案外目に見えて変わってくるんですよねー。装備にしても、テキトーに選ぶよりは1点でも攻撃力あるいはその他パラメータに変化を与える装備を選ぶ方が断然有利に働きますから。

もうひとつ、MPを消費する魔法が確かに強力。ザコ戦では特に、複数の敵をいちどに討てる魔法の攻撃能力が、ハッキリと武器攻撃よりも上位の攻撃手段として存在しています。また本作、MP回復の道具がエリクサーしかないため魔法の希少性がより高く、MPを温存してダンジョン攻略を進めるとゆー昔ながらのセオリーが、現代にしたらかえって真新しくさえ感じられます。さらに言えば、MPがレベルごとの回数制になってるのも重要でして。階層ごとに使用数が違うから、例えば回復でいけば、フィールドではLV1のケアルだけを使い、LV3のケアルラはボス戦用に温存しておく、とゆーことになる。ゲームが終盤になってもこの取捨選択は攻略の必須要素で、上位の魔法を覚えても低レベルの魔法の価値はあまり下がらないとゆーワケです。MP回復が気楽にできたり、消費ポイントが共通だったりしたら、なかなかこーはいきませんからねー。このレベル毎の回数制、何気に良いシステムだと私は思います。まぁ、終盤になると通常攻撃がダメージ跳ね上がるから、攻撃魔法の利用価値が暴落しちゃうのが難ですが(苦笑)

さらにもうひとつ重要なポイント、戦闘がキビシい。や、キビシいどころか全滅します。それもしょっちゅう。ボス戦はおろか、中盤くらいまでならザコにすらサックリぶち殺されます。ストーリー序盤だと、なんの気無しに船に乗ってネプト竜に噛み殺されるのはもはや基本、中盤・ガルーダ戦などは全滅しない方がオカシイほどですし、ラスボスにしたって戦い方がマズければ殺られて長〜いラストダンジョンに再挑戦するハメに。つーか全部オレの実体験だけどよ。これ、ヘタすりゃ欠点と紙一重の要素でもあるんですが、本作においてはむしろ魅力のひとつにさえ感じますねー。とゆーか、コレがあるからこそFC時代的とも言えるし、ソレを踏まえてもレベル上げや戦法次第で苦難は回避できるバランスに調整されているのがどこか感心するトコロ。全体的な演出強化や追加要素を盛り込みつつ、FC版経験者にも充分応えられるバランス調整をとった理想的とさえ言えるリニューアル移植、それがこのDS版・FF3なのです。

そんじゃー欠点いきましょ。シナリオまで昔ながらのテイストだったのは、正直言って古くさくって宜しくないねー。せっかく主人公4人のキャラ立てまでしたのに、ソレを活かす方向でシナリオを変えていない(や、元をやってないから細かいことは分からんケドさ)のは、チョイとどーなんだろうね、と。てゆーか、各イベントでの描写があまりにもアッサリしすぎなんですよ。そりゃ、あまり饒舌に物語を語りあげるのも演出過剰ってなモンですが、せっかくコレだけ映像も音楽もパワーアップさせたんなら、ソレに合わせて多少は物語も肉付けした方が良かったんじゃないかなぁ。まぁこの意見、シナリオたっぷりな昨今のRPGに慣れすぎた弊害なのかもしれませんが、私にはマズい要素に感じたので。そしてもひとつ、モグネット通信は蛇足すぎ。コレはハッキリ言えちゃうね。そもそもコレ、文章を打ち込むインターフェイスそのものが全然良くないし、友達とのやりとりを繰り返せば隠し要素が楽しめるようになるって特典にしたって、ぶっちゃけその特典以外にコイツの存在意義は無いとゆーのが実のトコロ。なんつーのか、DSのワイヤレス&Wi-Fi通信を使うためにムリヤリ載っけました、ぐらいにしか思えないんですよねー。モグネットをやれば隠しが出る、そのこと自体には別に文句無いんですが、肝心のモグネットにその他の価値がまったく無いのは、根本的に間違ってるとしか言い様がないです。どーせ通信機能を使わせるんなら、もっと考えたアイディアを出せっつーのよ。


こんな感じのリメイクRPG、FF3です。FC版にあった懐かしさ・面白さを存分に残しつつ、その上で現代的な演出をDSの機能をフル活用してつづられた、16年の時を経て蘇った光と闇を巡る冒険物語。クリスタルの加護を受けた光の4戦士が旅立つその時、彼らの冒険を後押しするかのように新たに吹きゆく『悠久の風』の調べを、ぜひとも皆さん体験してみてください。



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2006/09/29