感想・漫画編。

 スパイラル 推理の絆 12

原作:城平京 作画:水野英多

出版元:ガンガンコミックス


推理のマンガ12巻。前巻の最後でチラッと顔出しだけした火澄が本格登場。その代わりに、と言うのも難でしょうけれど、浅月らブレチル組がココを機会にメインシナリオから一端フェードアウト。物語の完結に向けた人員整理って感じですかね。

さて、シリーズの終了に向け、そのラス前エピソードとなる火澄編が開始された次第ですが。まぁそー言っても今巻は、全体的に火澄とゆーキャラの紹介的な作劇を筆頭に、完結前の最後の日常を描いたって感じの内容ではありますな。しかしそうか、そーいや第1話も早々から殺人事件の連続で始まったシリーズなんだよなぁ、学園モノらしい展開ってココに至るまでサッパリ無かったんだなぁ。日常的なエピソードだってほとんど無かったし… まー、ナカミがそうなってんだから仕方無いんですけど。

と、平凡な展開ばかりが繰り広げられてるよーに見せかけといて、その実でエピソードの終わり、火澄との"決着"を描くために必要な伏線をそこかしこに散りばめていたりするのが、相変わらずの侮れない作劇でもありまして。56〜57ページにまたぐセリフとか、142ページのもそうですし、最終回までの展開を知ったあと改めてこの巻を読むと、平凡とばかり当初思っていた印象からはずいぶん様変わりする面があります。まぁ上記したものは火澄のセリフに関してばかりですが、主人公たる歩にしてもまた、日常を普通に送っているようで、実は鋭く冷静な観察で火澄という人間の"裏"を見極めようとしていたのが分かるワケでして。そーした推理の他でも、70ページ前後の一連のやり取りなんて、自分が殺される事そのものが自分にとっての勝利だと、「今の俺の死は、きっと皆の希望になる」と語る様、おのれの死さえもこの残酷な運命を変える上での十分条件としてしまう、その凄まじい覚悟ときたら!

物語の最後を前にして、ソコに推理と論理で立ち向かう少年の戦いは、ここで描かれる"日常"の中にさえひとつも緩められることなく繰り広げられているのです。ただそれでも、ひとときの平穏だった日常さえも終わりを告げる。ソレはすぐ目の前、続く巻へと。



▽自薦名場面 ― 87〜88ページ

 「でも大丈夫ですよ。
  鳴海さんはひとりぼっちじゃありません。私がいますっ。
  たとえ世界中が敵に回っても、それなら最強です!!」

そんな日常の中での、ひよのの言葉。コレと対になる(ってーと表現違うか?)カタチの歩のセリフと、どっち取るか迷ったんだけど、まぁ絵的な面を選んでコチラをチョイス。ひょっとしたら彼女としては何気なく言ったコトなのかもしれないけど、でもそう語ったその笑顔がなんとも、…なんてんだろーなぁ、あぁ、かわいいと表現するのがイチバン正しいかな。そう、本当にかわいいんだよね。



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2008/04/15