感想・漫画編。

金色こんじきのガッシュ!! 16巻

著者:雷句誠

出版元:少年サンデーコミックス


魔物の子供達のバトルマンガ16巻。石版編、ガッシュサイドのラストバトルとなるデモルト戦にとうとう突入。それにしても、この巻の表紙イラストなんかスゴく良いなぁ。シンプルな線に、シッカリとしたメッセージがこもっている感じってのか。それと第2回人気投票も収録してるけど…代理司会役を任されたのに、メインヒロインのハズなのに、トップ15からさえ落ちたスズメに幸有れ。ああもうホント幸せよ有れ。清麿(※第2の主人公)がウマゴン(※マスコットキャラ)に負けたコト以上にかわいそーだヨ(笑) てかガッシュの得票数は群を抜いてるなぁ。このマンガの基本的な人気ってコイツが引っ張ってんだなー。

そんなこんなで初っぱなから端々の部分にネタが豊富な巻ですが(笑)、ストーリー本編はあくまでも一直線、少年マンガの基本であり本作が通して描き続けている、いわゆる王道的熱血シナリオがこれでもかと展開しております。まずは前半、レイラとの対決(とは違うか)からですな。意識の根底にまで刻み込まれた石化の呪縛、ゾフィスの仕掛けた卑劣な暗示に逆らおうとし、それでも強すぎるその幻覚に呑み込まれてしまうレイラ。その暗く冷たい孤独からレイラを救い出したのは、決死の説得を試みた清麿ではなく、彼女の苦しみに心を苦しめたガッシュやフォルゴレでもなく、ゾフィスに操られるまま無言で彼女の傍らに立ち続けた青年、レイラが”パートナー”と呼んだアルベールが彼女のために流した涙だった…! まだ彼の自意識は戻らなくても、まだ自らの言葉を発しなてくれなくても、ただ涙を流し手を握ってくれている、たったソレだけでふたりが築き上げてきた”絆”の深さが伝わってくる、優しくも熱いワンシーンです。

続けてVSデモルトの開始から。一時はデモルトの凶暴さ・圧倒感に呑まれはしたものの、彼のパートナー・ヴァイルの悪しき野望を知った途端、おのれの魂を全力で燃やして邪悪に立ち向かうガッシュ&清麿!! 最初はレイラの孤軍奮闘にようやくでついていった程度だったのに、眼前の敵が悪意を秘めた者だと分かってからは、そのレイラさえも驚愕せしめるほどのパワーをみなぎらせる彼らの姿は、紛うこと無く正義の味方が戦う姿と言えましょう。悪に立ち向かうヒーローの戦い、これぞ少年マンガの基本にして醍醐味です。

そして最後はパティとビョンゴ。これまではゾフィス側のキャラとしてガッシュ達と対立してはいたけれど、その我欲の裏で悲しい思いを重ねる者がいることを知り、おのれの行いが過ちだと知り、いま遂に自分自身の意志で戦う相手を見定めたふたり! 敵対していたキャラが共に戦う仲間として新たに立ちあがる、コレもまた少年マンガの王道。なかでもパティは、ウルルの独白にもあるとーり、彼女が追いかけ続けたガッシュこそが彼女の目の曇りを取り払ったワケで。そー考えると彼女、惚れた相手には確かに間違いがなかったと言えるのかもしれませんな。ま、その一方で追いかけ方は間違ってたんですが(笑) うん、ストーカーは犯罪っすよお嬢さん。もうひとり、ビョンゴについては、アルヴィンとの出会いのエピソードが個人的に気に入ってたりして。短いストーリーの中で深く心に残るお話を作るのがウマい漫画家・雷句さんの本領が再発揮されたひと幕と言いますか。確かになー、そのカッコ悪くて、でも可愛い姿を見たら、コイツを変わらせる事に一肌脱ごうと思っちゃうよなー。

そんなこんなで、石版編もいよいよ佳境、クライマックス直前です。それにしても147話の序盤、長らくハードな展開が続いてたから、ココでのギャグが実に心地良い(笑) てか雷句さん、やっぱギャグ描きたくて仕方無かったんだろーなー、やってるネタはベタなんだけどテンポがイイよ。



▽自薦名場面
 ― 89〜90ページ

 「デモルト!!! どこを見てるの!? あなたの相手は私でしょ!!!
 
それとも…狂戦士バーサーカーとうたわれたデモルトが、尻もちをつかされた女の子にお尻を向ける気かしら?
 
墜ちたものね」

強大な実力を持つ巨体の魔物相手に、酷薄な瞳で挑発を向けるレイラ! いやー、このシーンは最初見た時からハートを鷲掴み。思うにレイラって、ガッシュ達を気づかう時に見せる優しさや石化の呪縛に心を苦しめる弱さなんかも、まぁ彼女の確かな”一面”ではあるんだろーけど、それ以上にこの時見せた非情な姿こそがレイラの”本性”なんじゃないかと思うんだよねー。「優しい女の子」の裏に隠し持つ「冷酷無比な瞳の少女」、それがレイラとゆー魔物の子なのではないか、と。



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2007/10/26