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感想・漫画編。

武装錬金ブソウレンキン 10巻

著者:和月伸宏

出版元:ジャンプコミックス


「約束…覚えているだろうな」  「…ああ」

「「決着を つけよう」」

56〜57ページより


人知れず、世の裏でのみ伝え・開発された超科学「錬金術」。その技術の結晶である「核鉄」をキッカケとして巡り会った、戦士達少年少女の闘いと成長の物語。この第10巻を持って、全ては完結を迎えます。日常から非日常へと移ることで始まった彼らの物語は、ここで本当の「決着」へと到る――

とゆーワケで、最終章読み切りである『ピリオド』と、別個の読み切り作『エンバーミング』、そして後日談である書き下ろし読み切り『アフター』と、実質的にたった3本のお話でコミックス1冊とゆー、よーく考えたらムチャな構成での最終巻となっております(笑) まぁ雑誌掲載の都合でコレ以外の手段無かったとは言え、こんな構成でもコミックスって出版できるモンなんだなーと、無意味に感心すらしてしまったり。

ソレはさておき本編の感想をば。実際のトコ最終回としては『ファイナル』との組になる後編としてエンディングまでを描かれる『ピリオド』は、全体的な最終回っぽい展開を前回にやっといて、残る伏線をひとしきり回収しながら真のラストへと向かうとゆー、面白いはオモシロいんだけど実は結構めんどくさい流れになってるよーな、そんな感じでしょーかねぇ。まぁそうは言いながら、ボリュームたっぷりの前後編で描かれたからこそ、まるで不足の無い完結を楽しめるのも事実ですが。個人的な見所は、月でのヴィクターとのやりとりと、戦団が一丸となってカズキを救出するその描写、そして今回のレビュー冒頭にも選んだ、最終回に相応しいカズキVSパピヨンの「決着」ですかねー。まずふたりの決着、連載からは増ページで描かれていますが、コレ、2巻での「始めの決着」のときと同様に斗貴子さんの力が雌雄を決する要になるように変更されているトコが、個人的に満足のいく変更点。絵的にはタイマン、だけど実は彼女の力も合わさって戦っているってのが隠れたキモだと思ってるので、そこは実に良かったですな。そしてもうひとつ、カズキ救出のシーン。以前に彼が誰知らず呟いた「オレがみんなを守るから、誰かオレを守ってくれ」、この願いは彼自身が守った”みんな”が彼を守るとゆーカタチで適うこととなった。コレはまた、実に素晴らしい結末だなー、と感じて止みませんねぇ。「誰か」とは、「個人」ではなく「みんな」だった。求めた見返りゆえではなく、相手の意志でそれが成される、これこそ本当の厚意とゆーモノですよ、えぇ。しかもそれが、大勢によって果たされるんだからねー。

んじゃ本編の感想はいったん置いて、『エンバーミング』の方にも触れようかと。や、この読み切りも何気に気に入ってまして。序盤から通して描かれるダーク(というか黒い、てかむしろ真っ黒)な雰囲気、悪へと立ち向かう善とも程遠い”タダの強者”、そしてラストで描かれるわずかな救いの姿etc…。武装錬金とはまるっきり方向性の違う本作ですが、ソレはそれでこの物語はなんか好きですねー。中でも121ページ、秘めたチカラを振るう巨体の男、血をまき散らして千切れ飛ぶ異形の怪物、そして巨漢の腕で泣き濡れる悲哀の美少女とゆーこのカットは、本作の内容をこれ一枚だけで表現しているようで実にイイ感じです。スタイリッシュさ・凄惨さ・悲しみの中の美しさが、実にウマくまとまってるんだよねー。

それでは、本編の方に戻りますか。最終回の最大のキモは、錬金術に運命を翻弄されたカズキとヴィクターその両者の違い、「カズキにあってヴィクターに無かったもの」が何なのか、それが明示された月でのやりとりにあると私は思います。カズキにあったもの、それは「希望を絶対に手放さない強さと優しさ」でした。ヴィクターが見出した彼の「光」は、よくよく物語を読めば全編通して描かれていた姿でもあり。シリーズ当初、斗貴子さんがホムンクルスの幼体に蝕まれて諦めていたときも、「誰も犠牲は出さない」と必至で駆けだしたのはカズキでした。致命傷を引き受けて秋水ともども命を諦めていた桜花に、「まだだ、諦めるな!」と手を握ったのも彼。近い未来にバケモノに変わるという未来を受け入れて、それでもなお諦めずにブラボーに立ち向かったときもそう。武藤カズキという少年は、どんなに辛い絶望を前にしても最後の最後まで諦めずにソレに対して足掻く姿勢を曲げない、そんな男でした。その在り方に気付いて、たったそれだけで100年募らせてきたヴィクターの怒りが消えうるのか……それは正直分かりませんが、その姿・自分との大きな違いを思い知って、それでカズキを、未来と錬金術チカラを正しい場所へと向かわせられるだろう少年を、「守るべき者」の居る場所へ返してやろうと思った・思えたんじゃないか、と。

もうひとつ、カズキは「罪を憎んで人を憎まない心の持ち主」でもあるんですよね。怒りの火が消えたヴィクターには「戦う意志がないのなら共に生きよう」と言って改めて手をさしのべたし、再殺編でも敵である犬飼達に核鉄の治癒力を使って死ぬことだけはないようにしたときもそう。ま、火渡戦士長にブチ切れたあの時だけは別ですが(苦笑) そしてパピヨンとの決着。当初は人々の脅威になるのなら再び彼の命を奪うことも仕方無いと思っていたけど、食人衝動が無くなったと知った(気付いた)最後には、「オマエを二度も殺したくない」としてパピヨンを許した。でも「死んだ命をしっかり弔って」ということだけは忘れずに。そんな彼の姿は、パピヨンが言い続けた通り、確かに一種の偽善なのかもしれません。でも、その偽善が誰かを救うのなら、それは偽りを越えて本当の善意になれるんじゃないかとも思うんですよね。

そんなこんなでこの作品は、ザッとまとめると「津村斗貴子という”扉”によって開かれた非日常を、武藤カズキという”カギ”が日常へと還していく物語」だったんだと思います。きっとカズキはあのエンディングのあとでも、核鉄という「特別なチカラ」を失ったあとでも、自らの意志でもって誰かを守り、斗貴子さんの手を握って共に未来を切り開いていくのでしょう。彼という「光」には、そんな希望を見いだせるだけのモノがあったと思います。だからこそ、この『武装錬金』という作品は、紛れもなく「武藤カズキの物語」でした。


とある春の夜に出会ったふたりから始まった物語は、半年に渡る非日常たたかいの日々を経て、互いに手を取り日常へと帰る秋の日に終わりを迎える。長きにわたる錬金術の歴史――それは幾つもの命を奪う悲劇を起こしたのかもしれないけれど。いまはただ、それに関わった全ての者達に、武藤カズキと津村斗貴子に、希望ある光の未来を…!



▽自薦名場面 ― 52〜53ページ

 ――キミが死ぬ時が私が死ぬ時――
 ――いや…キミと一緒に生きていく――
 ――もう離れない――――――
 ――今度こそ、キミと私は一心同体だ――!!

一ヶ月の離別を越えて、今度こそ本当に一緒になろうと宇宙で抱きしめ合うふたり! ここの独白の移り変わりって、単純な見た目以上にイミが深いと思うんだよねー。とゆーのも、以前までの斗貴子さんは、カズキと一緒なら最期を迎えても構わないと思ってたワケだ。だけどこうやって再開できた今は、共に生きていこうと心から思うようになった。これはつまり、カズキをきっかけに斗貴子さんが未来を見いだせれた=未来を見ていなかった彼女を彼が救った瞬間でもあるんだと思うのデスよ。まーなにはともあれ、おふたりさんともお幸せに、ってヤツですな(笑)



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2006/09/07