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感想・漫画編。

ARIAアリア 12巻

著者:天野こずえ

出版元:ブレイドコミックス


「って聞いたわよ灯里!」

「あっ うん、私一人前プリマになれたんだよ♡」

97ページより

西暦2301年、近くて遠い未来の時代の、アナクロで緩やかな雰囲気が包む、「アクア」とその名を大地を変えた、そんな火星に住まう少女たち、水先案内人ウンディーネの"毎日"を描いてきたオムニバスストーリー。その最終・第12巻。変わらない日々の、変わっていくそのときへと遂に到達です。

ま、とりあえずは既刊レビューに習って、軽い各話感想からやってきましょーかね。56話、不変の存在である人形、でも通常のそれとはおもむきの違う"彼女ら"を通して変化を描き示す、ってトコですか。本作が最終的に示すテーマを、そのラスト前にまた改めて提示した回ですね。

57話。なにくれと相手のことを心配していろいろ気遣いをする・しようとする、けれどその相手本人はそんな心配なんて平気で乗り越えて力強い姿を見せてくれる…ってトコロが藍華と晃さん、両人ともホントにそっくりなタチだよなーと思わされるワケでして。生まれも育ちも異なるふたりですが、言ってみれば精神的な似たもの姉妹とでも言うよーな感じを覚えます。

合間の特別編。現状、業界的に最年少一人前プリマであるアリス、突然のプロ現場投入に何かととまどうのは当然、そんな状況に先の不安を覚えるのはなお当然。そしてまた、そんな不安も大切な友達の顔を一目見ればすぐ吹っ飛んでくれるのだってまた当たり前であり。まぁがんばれ、でっかいガンバレ後輩ちゃん(笑) にしても50ページの"画"はシュールだ…

58話。藍華の昇格決定、とゆーか発表と今後の去就が話され、そしてしんがりのカタチで我らがもみ子・水無灯里もとうとう一人前プリマへ…。物語のラストが本格的に姿を覗かせ始めるエピソードでゴザイマス。この回は、先に走り出したふたりをクラウチングスタートの体勢で追いかけようとするとゆー、実に象徴的な扉絵が強く目を惹きます。象徴的といえば、灯里のプリマネームが「遙かなる蒼アクアマリン」というのもまた、本作の作品設定を踏まえると、とても深い意味合いを感じてやみませんねー。

59話。アリシアさんの寿引退発表は連載当時のサイト界隈でかなり話題、ってか騒動になってたなー、などとビミョーに遠い目で昔を振り返りつつ、今回のサブタイトルは「未来」。変わってしまう日々に不安を感じて、このままの現在が続いていくことに居心地良さを覚え。それでも待ちかまえる先の時間に素敵な物事がきっと待っているんだからと、恐れも不安も乗り越えて未来へと確かな足を踏み出していく… 変わらない現在ではなく、変わっていく未来へ。本作の中で、幾度と無く繰り返してきたテーマです。

そして最終・第60話「水の妖精」。原点回帰でAQUA第1話と同様、郵便屋のおじさんとアリア社長とでネオ・ヴェネツィアを遊覧しながら変わっていった日々をゆっくり振り返り、各レギュラーキャラのその後にも軽く触れて、差出人不明のままだった灯里のメール相手もとうとう判明しつつ、お話は本当のラストシーンへ……。灯里のメール相手、自分の中では勝手に地球住まいの老婦人ってなイメージが、なんとなくあったんだよねー。他の小さい部分では、160ページでの藍華の意気込み(?)がスゴく彼女らしいなぁ、と思ったりで。


そんなこんなで遂に締めでございます。本作の魅力を改めて振り返るに、ソレはやはり作画から・作劇から常に毎回伝えられてくる空気感なんだろうと、今また思い直す次第です。違う言葉にして雰囲気かな? 水無灯里という女の子の、フィルターというか感性というか、そういうものを通して紡がれていく、火星アクアの、ネオ・ヴェネツィアの町並みや人々とその生活、繰り広げられる色とりどりな日々…… それらを美麗で確かな画力を持って2+12巻使って描き続けてきた、未来なのにどこか懐かしくさえある素敵な物語。それがこの火星の物語だったんでしょう。そして何より、作者自身がこの作品をとても楽しく描いていた、そんな様子も読んでてシッカリ感じ取れていたところに、このマンガの良さがあったのでしょうね。だから本当に、こうしてラストまでを読んで、カバー折り込みの天野さんのコメントの通り、この物語は確かな"ゴール"へ到達できたのだろうと思います。明確な大団円へとたどり着いた、着かせることができた、だからこそまた本作は素敵だったんじゃないかなー、と。

この物語の舞台は、"我々"の現代から300年近くも未来のお話。宇宙進出への進出は発展途上で、ワープ航法なんてまだまだSFの中だけの絵空事、火星のテラフォーミングだって姿形も全然見えていやしない。いつかどこかの火星がこんな日々を紡ぐ星へと変わるものか、それこそ作りモノマンガの中だけのハナシです。でも。未来の姿がどうなるかなんて誰にも分からないから。人の手が触れる火星にどんな街が築かれるかなんて見えないのだから。続く毎日の先の先、遠い明日には素敵な何かが待っているかもしれないのだから。果てしない時間の向こう側で、水先案内人ウンディーネの漕ぎ出すゴンドラに揺られて水の街並みを眺めていく、そんな夢物語を想像するのも…時には良いんじゃないかな?(笑)



▽自薦名場面 ― 92ページ

 「やりましたよアリア社長          「にゅ!
  ずっとずっと憧れていたんです            にゅ! にゅ!
  やっと一人前プリマになれましたあー!」       ぷいにゅ――!

水無灯里、念願悲願のプリマ水先案内人ウンディーネへ…! 実はこのシーン、レビュー本文頭の最終巻を象徴する候補のもうひとつでもあったりして。だからあるイミ、冒頭のとコレと、抜粋を入れ替えたとしても別によかったりはするんだよねー。何はともあれ、夢を叶えた新しい水先案内人ウンディーネへ、「遙かなる蒼アクアマリン」の名を受け取った彼女へ、今また最大級の賛辞をっ!



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2008/12/23