×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。



感想・小説編。

風来のシレン 黄金郷アムテカに舞う花

著者:大原広行 健部伸明  監修:チュンソフト

出版元:チュンソフトノベルズ

陽の光を充分に受けた草木の匂いを、そよ風が運んできた。このクロンの風さえあれば、自分はどこまででも行くことができる。

ここにはある。風来人たる自分を満たしてくれる夢が。

旅の神クロンは気まぐれだが、いつも期待を裏切らない。

6ページ 序幕より


売り文句は「1000回遊べるRPG」。たしかに私自身、(シリーズトータルで数えれば)ほぼ間違いなく1000回遊んでいるだろう、チュンソフトの名作ゲーム『不思議のダンジョン・風来のシレン』。そのシリーズ第一弾・SFC版の物語が、ノベライズとしてリリースされるという。果たしてこのオレが、コレを読まずにいられようか? さぁシレン・ノベライズのレビューだ、ゴーゴー。(←ノってるようでフツーのテンション)

本作の特徴は、なんと言っても『風来のシレン』そのもののゲーム要素と、単独の物語としてのストーリー性とを、とても上手に融合させている点でしょう。原作ゲームのオリエンタル色の濃いあの独自の雰囲気を活かして、和風テイスト満載で描かれている文章。その中で、和とも洋ともつかない多種多様なモンスターやアイテムなどの『ゲームとしての要素』を、器用とも思えるほど物語に上手くハメ込んで活用してくれている。もう、このへんからすでに原作ゲームファンとしても大安心の内容。もともと私は『シレン』のゲームのみならず世界設定も大好きな方でして。こういう風に、ゲーム要素とストーリー性との両方をキチンと活用していてくれて、ホント嬉しかったぐらいです。同士討ちでオヤジ戦車がレベルアップしたりとか、合成の壷を使って”あの剣”を造り出したりとか、他にもアレコレと。さすがに物語としてオカシくならないよう、あえてゲーム要素から目をそらしたような場面も多少ありますが。ま、ソレは別に気になるようなモンじゃないしな。つっても欲を言えば、「死んだら最初からやり直し」っていうゲームの基本要素も活用してもらいたかったケド…ま、さすがにソコまで使ったらストーリー性と合わなくなるしねぇ。我慢ガマン。

そうそう。最初この小説を読む前に気になっていたのが、「主人公・シレンがどんな風にしゃべるのか」だったんですよ。原作では「もともと寡黙なうえ、シレンがしゃべる前に相棒のコッパが先に言いたいこと全部しゃべる」という設定でシレンの無口を理由づけてるんですが。では本作ではソコをどうしてるのかというと、原作に乗っ取ってシレンを徹底的な無口キャラにすることでイメージの狂いを回避するという手段に出ていました。まぁ私は別に、そういうキャライメージがどうとかって言うのを気にする方じゃないから、シレンがしゃべったとしても構わなかったんですが。読み終えるに、この選択はおおむね成功だったと言えるでしょうね。無口なりに表情などで”語る”ような描写をしているし、それゆえにキャラが立ってる部分も少なからずあるし。なにより、キャライメージを大事にするタイプのシリーズファンには安心できる描き方だったと思います。原作に囚われるでなく無視するでなく、各要素をバランス良く活かしてひとつの物語へと仕立てる。本作、ゲームノベライズとしても及第点以上の作品だと思います。

ところで。実は当方、シレンシリーズでは唯一SFC版だけが、友達から借りて遊んだ一作だったりしまして。だから、ストーリー部分で憶えてる部分があんまし無いんですよねー。スララの話とかラストの黄金郷にいるアレコレとかは記憶にあるけど、ガイバラ先生の登場場面や地下水脈の村の逸話なんかは、まるで憶えが、なぁ。 なかでも特に、座頭ケチの出生の秘密なんて読んでてむしろ驚いたんですけど。アレ、あの人そーゆう設定だったっけか? あーもー、ゲームとしての懐かしさも含めて、そこらへんの再確認のためにも、もっかいSFC版やりたいわ。つーかむしろリメイクしてくれんかチュンソフト様。それも、このノベライズみたく最新シリーズのアイテム・システムでもって。あとがきで「ケータイ版で遊べます」とか宣伝してるけど、オレ持ってんのauだからiアプリ遊べないし。頼みますよチュンソフト様。いやマジで。



▽自薦名場面 ― 113ページ

 「生死は風が決める」

なんと本作で唯一、シレンがハッキリとしゃべったシーン。いやホント、他で発言した場面は笑い声を発したとかを除けば皆無。それゆえに、このたった一言にこもった重み・深みが際だつワケで。生きるも死ぬも、是も非も成否も、なにもかも全ては風が、”旅の神クロンの追い風が”決めること。シレンの風来人としての生き様が、この言葉に集約していると言えましょう。



<<ノベルレビュー



2005/01/06