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感想・小説編。

失踪HOLIDAYしっそう×ホリデイ

著者:乙一

出版元:角川スニーカー文庫

わたしはふと、その部屋の窓から、外を見た。そこは離れの中でも、母屋に面した側にあった。砂利道を挟んでちょうどわたしの部屋が正面に見える。クニコの部屋も二階、わたしの部屋も二階、まったく目と鼻の先で窓が向かい合っていることに、いままで気付かなかった。

名案が浮かんだ。

「クニコさん、お願いがあるの。しばらく、この部屋にいさせてくれないかしら」

80〜82ページ 『失踪HOLIDAY』、潜伏生活(?)開始のシーンより


じつは本作、自分から買い求めたものでも、友達から勧められたといったものでもなく。実家帰った際に、姉の「間違って2冊買ったから」とゆーあまりにもアホらしい理由によってゆずり受けたシロモノでして。んで、さしたる期待も無くタラタラと読んでみたら、コレがなかなかに面白かった、と。そんなこんなで失踪HOLIDAY、かような経緯にてレビューを書くにいたる次第なのデスよ。

収録内容は『しあわせは子猫のかたち』と表題作『失踪HOLIDAY』の2つ。先に総評を述べますと、作品全体…とゆーか良作に共通しているのは、「色々と問題ありげな主人公が、”穏やかな日常”を手にするまでの紆余曲折」を描いている、といったところでしょうかね。それぞれの主人公は、そりゃもうまるっきり正反対の性格なんですが、1冊の小説として見ると「作品のテーマ」がこのように共通しているから、”まとまり”の感じられる読後感があります。なんせ前半がネガティブ野郎で、後半がワガママお嬢様だもんなぁ……コレで作品には共通性があるってんだから、なかなかに巧みな作家さんですねぇ、乙一さんって。

んじゃ別個の感想。まず『しあわせは…』。ぶっちゃけ読中はビミョウにイライラさせられてました(苦笑) なんつーか、こーゆーネガティブ系のウジウジした思考回路の人物の一人称描写って、読んでて正直イヤんなります。言葉を変えれば「うざい」ってなトコでしょーか。でもまぁ、そーゆうイラだち(ぶっちゃけ、同族嫌悪に近いとも思われる)が、爽やかで少し切ないラストシーンで一気に解消されるから、読後感を取るとコレがなかなか悪くなし。まぁなんつーか、作者の企みにまんまとのせられてる気がしなくもないですが、こういうハメられ方はむしろ楽しい面が強いですね。

そいじゃ次、『失踪HOLIDAY』。前半のキャラがアレだったっつー反動もあるかもしれませんが、続くコッチはキャラの性格もあってか良い”ノリ”で読み進められます。ホントなんつーか、まるっきり真逆だもんな主役の性格が(笑) まぁページ分量の関係もあるんだろうけど、やっぱ読み終えるとコッチを後ろに回したのは正解だったとも思いますね。自分のワガママが原因で、無自覚なままに周囲の人間を迷惑に巻き込み、最終的にそんな自分の未熟さ・限界を知って、少しだけ大人になり、そしてラストに彼女が”取り返す”暖かいひととき。そんな「少女の成長」を描いた読み切りとしても、なかなかまとまりの良い一作だと思います。

ところで本著、もう一個の共通点に「ミステリ作のような解決編的場面の挿入」ってのもあるんですが…正直いって、本作においては蛇足以外の何者でもないですよコレ。「普通の物語にも”ミステリ的な要素”を加えることで面白さが増す」という作劇手法は、私も同意するところですが、この作品ではその手法がチョットあからさま過ぎて、なんかジャマにさえ感じてしまいました。つーか、乙一さん自身の作風がそういうタイプなのかね? 本作以外の乙一作品って読んだこと無いから分かんねーんだよな。読破したあとで姉に他の作品もひとつふたつ勧められたけど、そのタイトルとかスッカリ忘れちまったしなぁ(乾笑) つーワケで、どなたかレビューを読んでくれた方、いずれか乙一さんのオススメ作品ありましたら、どーぞお教えくだされば。(←小粋に他力本願)



▽自薦名場面 ― 231ページ

なんとなんとのオキテ破り、今回は挿絵のページを選出。正直な話、「それってアリか?!」というセルフつっこみは絶えんかったし、本来としては前後ページの文章と合わせて選び出すべきなんだろうけど…でも自分に正直になるとどーしてもココなんだよなぁ。『失踪HOLIDAY』のラスト、菅原すがわらナオの、満足げで穏やかで、そしてとても嬉しそうな表情。彼女に訪れたそんな”しあわせな気持ち”があますところ無くイラストで描かれていて、見ていてじんわりイイ気分にさせてくれます。


 

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2005/03/26