感想・小説編。
二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない
著者:朝田雅康
出版元:集英社スーパーダッシュ文庫
これはなんだと思うだろう? このノートは何かと思うだろう? これは『二年四組 交換日記』だ。 16ページ 第一章より
まず何よりの本作の特徴・売り文句は、背表紙等にも記されているとーりの「パズル」という要素ですね。そう、本作の構成ほぼ全体にパズル的な"仕掛け"が組み込まれているのです、イヤもう正直こんな小説読んだこと無い。そのパズルとゆーのは言ってみれば名前当てゲームなワケでして、本文中でほぼ本名が書かれずあだ名で記されている各生徒・実に35名をそれぞれ誰が誰なのか的中させるとゆー、そういった仕掛けのゲームなのです。この仕込みがなかなかに上手いやり方をしてまして、クラス全員になぜあだ名が付けらていれるのか、というトコロからもうお話の作りが巧みなんですが、本名を特定するための情報のばらまき方が相当以上に巧妙。さり気ないヒントが方々あらゆる箇所に散りばめられており、カンタンにハッキリ特定できるようなキャラもいればチョットした推理が必要になる場合もあったりと、そういう部分でなんとも取り組みがいのあるパズルになっております。生徒全員の実名は途中でちゃんと一覧として示されているので、名前当てにはそのページを以降も利用すればいいんですけど、たぶんですがその実名一覧が出てきた段階でもう全員の名前特定は可能なようになってるかと思います。自分は初読時たしか130ページ過ぎあたりで特定終了しましたが、ちゃんと全力で取りかかればもっと早いウチから解き明かすことは確実に可能ですねー。また本作、レビュー冒頭のように作品全体が交換日記とゆー体裁になっており、各章それぞれ誰かが日記として書いているという"設定"なんですが、その執筆担当者も基本伏せられておりココでもパズルが楽しめます。まぁコチラは名前当てよりはカンタンに特定できますけどねー。チョットだけ難しいのが一章かな?、でもまぁそんくらい。 と、パズル小説の要素にばかり言及していると、小説としては大して面白くないんじゃないかと思われそうですが。なんのなんの、1冊の一般的ライトノベル作品としても充分な魅力のある作品ですコレ。つーかそうでなかったら私たぶんレビュー書いてないヨ。そもそも、パズル要素はあくまで作者からの挑戦状的な要素でしかなくて、パズルが解けなくてもまったく問題無い構成なんですよねー、だからイイんですけど。さてさて本作、いわゆる腐ったリンゴ=問題児ばかりをかき集めて構成された二年四組の面々が、ときに自ら引き起こしたりときに思いもよらず巻き込まれたりして繰り広げられるあれやこれやの騒動を、彼らの交換日記を通して読み進めるとゆーのがその内容なんですが。ソコで描かれているドタバタだったり青春模様だったりがストレートに面白い。序盤のなんてコトもない描写が実は伏線になり、ソレが転がり続けて大事にまで発展したりとゆー作劇構成もまた、パズル要素に負けず劣らず見事で楽しめる部分ですが、二年四組・35名の連中がまたそれぞれの個性をちゃんと描き分けられていて、全員がひとつになって本作のお話を作り上げているようなそんな感覚もまた魅力度の高い部分でしょうか。ってそーか、いま書いて気付いたけど本作って主人公に当たるヤツは明確にはいないんだな。いちおうクラスのまとめ役とゆーかボスとゆーか、そういう人物はいるんですが、その人が物語の中心にも立っているかというと決してそんなこともないですしね。まさに二年四組というクラスそのものが主役の作品と言ってもイイかもしれません、本作。
あと最後にオマケ。公式サイトのpdfファイルも便利ですが、PC上で記録できたらラクチンだろうと思い別途でtxtファイルの一覧表も自作しました(大笑。どんだけ"推し"なんだコイツ) コチラからダウンロードして使っていただくとヨロシイかと思います、zip形式で圧縮しているので解凍してどーぞ。あ、念のために言っときますけど答えは一切記入していないのでご安心を。だってこのレビューでもネタバレになるようなことはひとっつも書いてないでしょ?
「なるほど。久留米から話を聞いて山奥から戻ってきたが、こういうことになったか。珍しく被害としては微細だな。ただ、出来損ないの弟子を襲うのは結構だが、遠藤はなかなかにいい人間だからな。そういう人間を手篭めにしようとする人間は……抹殺するとしよう」 誰のセリフか明かしたら台無しだからねー、ソコは伏せておくとして。つーかこの人ホント怖ろしいわ(笑)、先の展開でも似たような発言するし、そりゃクラスの皆からも恐れられるよなー。序盤から選ぶのめずらしいけど、このセリフ、とゆーか最後部分のインパクトがやはりイチバン凄かったので、コチラを今回はチョイス。 |