感想・電子遊戯編。

クロノアヒーローズ 伝説のスターメダル

発売元:ナムコ 開発元:クロノアワークス

対応ハード:GBA

真っ先に欠点を並べあげましょう。

まずそもそも、ゲーム本体の作り込みに弱さが目立ちます。てゆーか、アクションRPGとして、そのアクション部分がチョイとお手軽すぎる。アクション性の”深み”よりも、プレイの”テンポ”を重視させたのは別に悪くは無いけれど、それにしたってボタン連打だけでも終わっちゃうようなお気楽さはどーにかならんかったかなぁ。――と、そんな感じで基本はテンポ良く進むクセ、ストーリーの途中(おおむねで分けて2カ所)で唐突に敵の強さがインフレかますってのは何事か。タダのザコ戦がいきなりキツいバランスになるわ、場合に寄っちゃあステージを立ち戻って経験値稼ぎに走らなきゃならんくなるわで、ガクッとテンポが削がれてしまいます。各キャラの武器も、ソコソコ種類は用意されてるけど、実際に使える装備はホント知れているし。攻・防のバランスを自分で設定できるカスタマイズ要素だって、防御だけ固めると敵に攻撃がまったく通らないなんつー事態が発生しだすから、結局は攻撃力を主体にポイント配分しなくちゃならんし…。つくづく、アクションRPGとしてゲーム本体の部分で作り込みが物足らずである、とゆー印象が本作には強いです。


さーて、レビューの義務終わりー。こっから先は褒めちぎるつもりなのであとヨロシク(真顔)


とまぁ、かようにアレコレ欠点が目立つタイトルではありますが。実はワタクシ、本作に対しては「GBAで最高クラスの隠された名作RPG」という評価を与えていたりします。何故か。理由は単純、ストーリーが素晴らしく良かったから。

本作のストーリー、ひと言でいってしまえば『王道』です。直球です。ヒネリも何もありません。何か考えさせられたりだとか、どこか哲学的だったりだとか、そーいったモノとは、まるっきり無縁のシナリオです。ともすれば、子供向けの単純な物語と一蹴されてしまうかもしれません。だがしかし私は言いたい。何年経っても色あせないゆえに『王道』なのだと。ありふれていながら、それでもなお人の心をつかむからこそ『王道』たり得るのだと。本作のストーリーは、まさにそんな、王道的な「ヒーローの物語」なんです。

「ヒーローズ」とのタイトル通り、本作の主役は3人の、英雄、ではなくヒーローです。一匹狼的で他人を寄せ付けない様子ながらも、その内には誰よりも熱く燃える心と穏やかな優しさを宿した、「ヒーローの兄貴分」としていつもクロノアの一歩前に立ってくれるガンツ。柔らかい雰囲気で皆のムードメーカーとなりつつ、いざという場には真っ正面から悪に立ち向かうパワーを秘めた、「父親的なヒーロー」としてクロノア・ガンツを導きあるいは共に成長するパンゴ。そして、無鉄砲な性格のために危なっかしさばかりが目立つなか、それゆえにひたすら真っ直ぐで過ちさえも恐れない勇気に満ちあふれる、「発展途上のヒーロー」としてヒーローズの原動力になり前へと突き進むクロノア。彼らの紡ぐヒーローの物語が、とにかくひたすらに私のハートを鷲掴み。直球なんです。ありふれてるんです。でもソコが最高なんです。

特にソレが爆発するのが、ストーリー終盤、ガーレンとの対峙シーンでしょう。ネタバレになるため多くは語りませんが…最大の敵ガーレンが見せた信じられない”もの”に対して、ガンツ・パンゴが驚愕するなか、たったひとりクロノアが笑って言い放ったセリフ。正直言って鼻血が出そうなほどカッコいい。もうね、こっからエンディングまでのストーリーは超特急モノですよ。奮闘むなしく、ついに溢れてしまった『悪夢』。そして目覚める『堕ちた英雄』。それでもなお立ち上がるヒーローズ。彼らの背を押そうと、世界中の人々から流れ込む『思いと願い』。そして、真っ直ぐ進む彼らに呼応して光り輝く『ヒーローの証』… テーマソング『SIGN OF HERO』にのって流れる(※なんと本作、カートリッジROMの分際で2分半のボーカル曲があります)エンディングと、ラストに流れるモノローグに至るまで、もうノンストップで繰り広げられる物語がサイコー。このラストまでの流れは、本編クリアー後の回想モードで呆れるほど何度も繰り返して観てますが、何度観ても本当に「素晴らしい」のひと言です。今回レビューのためにまた観てみたけど、やっぱ件の場面は魂が震えましたね。もうね、コレはアレだ、パブロフの犬状態(笑)

シナリオ面ばかりを賛美してきましたが、実のところ本作で本当に”光る”要素とは、そのシナリオを支える演出面にあります。まず感心すべき点は、映像部分での表現方法。簡単に言うと、マンガの『コマ』が動いているような表現手法を本作ではとっているんですが、その表現が秀逸。単純なフェイスグラフィックがころころ入れ替わったり動き回ったりしているだけなのに、何故そこにキャラクターの”確かな演技”を垣間見せてくれるのか。カートリッジROMゆえにできないムービー演出を、拡大・縮小なども使った「動く絵」によってカバーし、場合によってはそれさえ越える演出に仕立て上げたのは、もはや見事なまでの仕事です。そして忘れず評価したい点が、ゲームの雰囲気を盛り上げる各種楽曲。ここイチバンのシーンでは『SIGN OF HERO』のインストゥルメンタルが物語をバシッと決めてくれますし、他の楽曲もこれまでのGBAクロノアシリーズに負けず劣らずのラインナップ。PS1・2も含めた、全シリーズから勢揃いする登場キャラクター(なんと1のカラルやジョーカーも出てきます)に合わせて再登場する曲も多数アリ。GBA用にリメイクされた『THE WINDMILL SONG』などは、クロノアファンならばいちどは聴いてもらいたい一曲だと思っています。最高のシナリオを支える、抜群の映像演出と楽曲演出。これらの要素こそが、私が本作を名作として評価している理由なんですよねー。


――手に入れた夢の数ほど つよくつよく ボクはなる 信じた明日のために奇跡すらおこせるハズだよ―― 伝説の中にのみ語られる、星の輝きを放つヒーローの証SIGN OF HERO。それを胸に抱いて、ただひたすら前へ一歩進んでいく、3人の『ヒーロー』の物語。風渡る地・ブリーガルに宿る花の息吹を手にしたそのときから、世界の夢を護るヒーローズの冒険は幕を開ける……

シリーズ恒例、クリアー後のオマケことエクストラビジョンも、お気楽一直線な後日談的内容で、最後のサイゴまで愉快に遊べます。キャラクターも楽曲も、まさにシリーズ集大成とでもいうべき充実した内容の本作。クロノアシリーズのファンにもぜひいちど、嫌煙せずに体験していただきたく思います。



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2005/05/14