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感想・漫画編。

フルメタル・パニック! SURPLUS

作画:永井朋裕 原作:賀東招二

出版元:角川コミックス ドラゴンJr.

「石が落ちて拡がってしまった波紋は止めようがないけど――その『石』が水面に落ちる前に受け止めることなら、私たちにも出来るはず。最悪の事態を未然に阻止する。これは『我々』にしか出来ない仕事だわ!
――さあ、『チームウルズ』行動開始よ!!」

22〜23ページ 作戦開始前のマオのセリフより


普段なら、原作付きのコミカライズは 原作→作画 の表記順にするんですが。本作はあくまで、キャラと設定だけ原作からの借り物で、物語自体は作画のオリジナルストーリーなので、こーしてみたり。てなワケで、”流れ”としてはいちおう、ギャグシリーズの『いきなり!フルメタルパニック』から続く最後のコミックスであり、同時に唯一のシリアス路線である本作。いっちょ単品で出張って、ココはレビューさせてもらいましょー。

フルメタシリーズのコミカライズはすでに、別の作画で数種類刊行されてるワケでして。私が買って読んだのって、実は本作の『いきなり』シリーズのみで、その”流れ”でもって特に考えること無く惰性的に読んだ、ってのがもとの経緯なんですけど。本作についてはホントに、買って読んで良かったと思いましたねー。『いきなり』自体が、「オリジナルストーリーでいくコミカライズ作」として存分に面白かった(てか、ただのギャグマンガとしてでもかなり面白いです。欄外で急にオススメしてみたり。いちおうこの本にも短編ギャグ載ってるけどな)ところに更に、シリアスストーリーにうって変わった本作も十二分に楽しめる作品だった、と。てことで、そんな本作のポイントをひとつずつ押さえていこうと思います。

まず最初に高ポイントなのが、各メインキャラの描写。描写といっても作画面のハナシではなく、人物表現の意味ですケド。宗介・クルツ・マオら『チームウルズ』の、それぞれの言動あるいはお互いの掛け合いなんかが、原作に実に忠実な描かれ方をされてるんですよねー。今回のレビュー冒頭に選び出した、締まりが利いて知性的な面を感じさせるマオのセリフはもとより、宗介とクルツとの”戦場での相棒同士”としてのやりとりなどなど、原作者が直接監修してんじゃねーかと思ってしまうほど、キャラ描写に原作小説との”ズレ”が見当たりません。ギャグシリーズのときから、作画の永井さんは原作をシッカリ読み込んでマンガ描いてるとは感じてましたが、今回のシリアス路線でその感想が核心に変わったほどですから。原作の通りにキャラが描かれているとゆー点で、コミカライズとしてはもう合格点じゃーないか、と思います。

続いてのポイントは、シナリオのネタでしょーかね。事件の核に、謎の新型アームスレイブとオペレーションソフト・・・・・・・・・・を持ち出したトコなんて、その最たる部分だと思います。そこらの漫画家にオリジナルやらせたら、新型ASをネタに出すのがせいぜいだろうトコを、ASの機体ではなくそのOSに目を向けるなんて。原作の世界設定を良く読み込んでシナリオ練らないと、こんなんフツー出ないネタだろ。また話の舞台に、政治的な側面で「東」と「西」に挟まれて戦争状態に陥りかねない、という香港にした所は、宗介らの『独自の傭兵組織』とゆー設定を活かせる舞台を考えてるなぁ、と。まぁ、香港が舞台ってトコが原作小説の『デイバイデイ』と被り倒してるのは、ご愛敬ってコトでひとつ(笑)  ともあれ、キャラのみならず世界設定の面でも、原作を充分把握してシナリオを構成してる点は、また評価に値するポイントでしょう。

そしてもうひとつ、ストーリーの内容も、本作の評価では高いポイントです。オリジナルキャラのキース・ファングを通して宗介を描いて見せる本作のストーリーは、そのままでも普通に面白いし、『戦い』のなかに生きてきた傭兵・相良宗介の物語としても読み応えのある内容です。宗介にとって、キースという『闇の扉』、すなわち「そうなるかもしれないもうひとりの自分」に対して、どのように対峙し、どのようにその闇を越えていくのか。このアプローチや、キースというオリキャラの描き方などは、原作のサイドストーリーとしても充分に通用する内容だとさえ思いますねー。

といった感じで本作、キャラの描写・話のネタ・物語の内容と、コミカライズ作品として十二分な面白さを誇った内容だと思います。つーか、単に自分が本作が好きだってだけのことなんですがねー(笑) でもやはり、本作の内容は原作小説の短編エピソードとしても通じる完成度ではないか、と。つくづく原作ファンに、本作は強く薦めたくなる外伝的コミックスです。



▽自薦名場面 ― 38〜43ページ

 「何やってんだ、安定させろよ狙えねぇだろうが」

 「道が混んでいる 上手くやれ!」

 「ケチを言うな! 2秒でいい なんとかしろ!!」 「了解!」

 ―――― !!! ――――

 「うひょっ、まさに一撃必殺! やっぱ俺って天才?」

 「狙撃はお前の得意分野だろう。決めて当然だ」

 「へっ、相変わらずあいそのない野郎だ。俺はほめられて伸びるタイプなんだぜ」

敵の襲撃をやり過ごす、宗介とクルツの抜群のコンビネーション。…う〜ん、やっぱ字面だけだと、このシーンのスピード感が殺されちゃうなー(悩) わずか2秒のチャンスを”なんとかする”ために、大胆なドライブテクニックと最高の狙撃という技能を披露しておいて、「それぐらいは当然だ」と宗介が言い放ち、「愛想がねぇな」とクルツが返す。驚異的なアクションと、それに続く軽妙なまでのふたりの会話、これはまさに原作の”ノリ”そのもの。話の序盤から選ぶのってかなり珍しいけど、でもココのやりとりが、巻中でイチバン気に入ってんですよねー。




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2006/03/04